日本財団 図書館


2002年11月23日(土/祝)10:00〜12:00
子どもがけがや病気をした時の対処法
講師/よしだ小児科 吉田 雄司氏
 
参加者:大人8名 子ども同室4名 別室託児1名
 
タイムスケジュール:
時間 進行 備考
9:30 受付開始(託児受入) 講師到着
10:00 PIKO・POKO活動紹介 (レジュメ用意)
10:10 講師 吉田 雄司氏ご紹介  
10:15 医療講習  
11:15 休憩(PIKO・POKOビデオ紹介)  
11:20 質疑応答(会場の皆さんと座談会形式)  
11:50 終了  
 
[1. 発熱]
 発熱は小児科の外来あるいは救急外来で最も多い主訴のひとつ
 一般的に小児科の発熱の原因としてウイルス感染症が80〜90%
 5〜20%は発熱の原因を推測する明確な局所症状がない。5歳以下、特に6ヶ月〜2歳児にその傾向がある
不明熱=明らかな原因が確定できないまま2週間以上続く発熱。個人差があるが、通常37・5℃以上を発熱という。微熱は37.5℃〜38℃台の軽い熱が7から10日以上続く場合で、高熱は一般に39℃以上をさす。
[発熱の評価]
(1)いつからどの程度の発熱か、熱型はどうか?地域で流行中の疾患は?(学校・家庭・保育所・幼稚園)
 既往歴は?(突発性発疹症・尿路感染症・中耳炎・麻疹等)予防接種歴は?(麻疹・三種混合・BCG等)
(2)一般状態(機嫌・食欲・顔色・表情等)高熱でも元気で食欲もあればあまり心配なし。熱はそれほどでも高くなくてもぐったりして目がくぼみ、ボーとしているとか、熱はあるのに顔色が青白く手足もかえって冷たいというような場合は重篤な疾患であることが多いので夜間でも救急外来へ
(3)生後3ヶ月未満で発熱の原因が細菌感染の可能性が高いため原則として入院。
[発熱に対する処置]
・一般状態が悪ければ急いで診察を受ける。
・寒がるような時は軽い掛け布団・毛布等を一枚増やし、保温し寒気の時期が過ぎて暑がるようになれば、氷枕をする。(氷枕や熱さまシートは気分をよくするためで体温を下げる効果はない。嫌がる場合は無理に当てる必要はない)
・食べ物は無理をせず、子どもの食欲に任せて好きなものを与える。冷たく冷やした果汁・ヨーグルト・牛乳・ミルク等を欲しがる。高熱が出ている時は食欲不振で脱水症状を起こしやすいので、これらの食品によって水分・ビタミン・ミネラルをとるようにする。
・高い熱が出ると体力の消耗が激しいのであまり動かさないほうが良い場合がある。体温が少し落ち着いて安定するまで安静第一に。そして少し落ち着いてから、医師の診断を受ける。できるだけかかりつけ医に受診する。
[解熱剤の使い方]
 発熱する原因は、ウイルスや細菌の体内での生存状況を悪くするため、生体の防衛反応として、熱が出ると考えられている。熱があっても児の機嫌が悪ければ解熱剤を使う必要はない。解熱剤は熱を下げる作用は持っていても病気そのものを治す薬ではない。かぜによる高熱が脳に害を及ぼすということはない(但し41.5〜42℃以上になると高熱そのものが傷害をおこす)また脳炎や細菌性髄膜炎も初期症状に高熱があるが、その他に機嫌が悪く嘔吐を伴い、意識障害がみられる。38.5〜39℃以上の熱があり夜間不機嫌で眠れない、きつがる、食欲がない等があれば解熱剤を与えてよい。
[解熱剤の種類]
 小児で頻用するのはアセトアメノフェン。(剤形としてシロップ・散剤、錠剤・坐薬)
 
[2. 熱性けいれん]
 かぜ等にかかった時に、38℃以上の発熱といっしょにけいれん発作がある。かぜ等に見られる熱性けいれんはそれ自体あまり心配はない。けいれんは5分以内に止まるのがほとんどで、90%の児は15分以内に止まる。熱性けいれんは、けいれんと同時に発熱にはじめて気がつくことが多く、同じ病気で2.3日以内にけいれんを繰り返すことはほとんどない。特別な治療法はない
[原因]
 かぜ等の上気道炎・胃腸炎・突発性発疹等ウイルス感染症が主な原因
 家族や兄弟で熱性けいれんを経験したことがある場合は熱性けいれんをおこしやすい
[好発年齢]
 熱性けいれんをおこしやすい年齢は10ヶ月から3歳
[家庭での対処]
・衣服はゆるめて、特に首の周りをゆるくして、呼吸をらくにする。
・意識が完全に回復するまで、口からくすり、飲み物を与えない。
・5〜10分くらい様子をみる。食べ物を吐きそうな時は、吐物が気管に吸い込まれないように顔を横に向ける。
・頭を身体より少し低くして、仰向けに寝かせて顔を横に向け、頭部をすこしそりぎみにする。
・吐物や分泌物が口周囲、鼻にたまっていたらガーゼで拭き取り外に出す。
・舌をかむ心配はほとんどないので、歯を食いしばっている時でも、強引に物を口にかませない。人工呼吸もしない。
・体をゆすったり、大きな声で呼んだりしてはいけない。安静第一。周囲の人は落ち着くこと
 以下のようなけいれんが続くようならば、かかりつけ医、救急病院、救急車へ
(1)けいれんが10分以上続く時
(2)短い間隔で繰り返しけいれん発作が起こり、その間ずーっと意識が回復しない時。
(3)手・足等身体の一部のピクピクけいれん発作があるとき
(4)全身のけいれんもあるが、どちらかといえば体の一部がピクピクするけいれんが多い時
(5)一歳未満で初めてけいれん発作があったとき。
(6)発熱とけいれん発作に加え、意識障害やマヒ等他の神経症状をともなう時
 
[3. インフルエンザ]
 急激な高熱、咽頭痛等で発症するインフルエンザウイルスによる感染症。流行規模の大小があるものの毎年必ず流行し、国民の5〜10%が罹患する。
[原因]
 変異の多いRNAウイルス・Aソ連型・A香港型・Bの3種
[感染経路と経過]
 飛沫感染が主 潜伏期間は1〜3日 急に高熱が出てのどの痛みやだるさを訴える。せきや筋肉痛・嘔吐・下痢も見られる。乳児では哺乳不良や無呼吸に注意。経過は5〜10日で、二峰生の発熱(再発熱)もある。
[合併症]
筋炎:筋肉痛や歩行障害を来たす。 けいれん:小児では急激な体温上昇時にけいれんをおこしやすい。
 けいれん重積や意識障害では脳炎・脳症をうたがい集中管理が必要。高齢者では肺炎を合併することが多い。
[診断]
 鼻腔液を使った迅速診断キットが有用。
[治療]
 対症療法 解熱剤に注意 特異的抗ウイルス剤 アマンタジン・ザナミビル・オセルタミビル等
[予防]
 インフルエンザワクチン接種 毎年秋以降に13歳未満は2回接種する。4週間間隔が望ましい。低年齢特に乳児では抗体の獲得が悪い
 
[4. 腸重積]
 腸管の一部が肛門側の腸管の中に入り込んで、腸が二重に重なった状態になる病気で主に生後3ヶ月頃から2歳に多く発症する。約90%は原因不明 乳幼児はウイルスに対する免疫力が弱く、ウイルス感染が起こるとリンパ組織がはれやすい特徴がある。はれた組織が、内腔に突出し腸の動きによってその先の腸管の中に送り込まれるために腸重積がおこると考えられている。
[症状]
 突然の腹痛。急に機嫌が悪くなったり、火のつくような泣き方をした、時には顔色が蒼白になったりぐったりすることもある。気をつけていると痛みは一時的におさまり、また痛みだしたりを繰り返す。多くの場合に嘔吐を伴う。発症後12時間くらいたつとイチゴジェリーのような血便がでる。
[診断]
 症状と経過、理学所見で腸重積を疑う。最近は超音波検査が可能
 診断を確定するためと腸重積ならば治療をかねて造影検査を行う。
 
[嘔吐下痢症]
 多くは細菌やウイルスで起こる感染性胃腸炎で冬場は圧倒的にウイルス性胃腸炎が多い。胃腸炎を起こすウイルスはロタウイルスが約50%と最も多く、二歳未満の乳幼児に好発する。2〜3日の潜伏期の後、嘔吐や発熱で始まり同時あるいは少し遅れて発酵性の臭みのある白い粕状の水様下痢を来たす。下痢は一日十数回に及ぶけれど血便は出ない。3日から一週間ほどつづくウイルス性胃腸炎は感染者の便が手について口に入る糞口感染で集団生活では流行しやすい。普段からていねいな手洗いの心がけが必要。治療は電解質を含んだ水分の補給・整腸剤や吐き気止め・下痢止めの内服・食事療法等症状にあわせて行う。乳児では母乳やミルクの主成分である乳糖の吸収不全のため下痢が長引くこともあり、一時的に乳糖を含まない特殊ミルクに変えることもある。
 
感想:今の季節に流行しそうな病気を説明していただきながら、けがや病気の時の対処法について勉強した。質疑応答での皆さんの活発な意見交換。小児科医からみた貴重なご意見。不安な点を気軽に聞ける関わり方が必要なんだと実感した。ありがとうございました。
 
 吉田先生は、院長の奥様と一緒に小児科を経営されています。夜間急患センターや区役所で行われる「わいわい子育て相談」の担当医でもあります。
 
 
 身近な病気やけがのことや、小児科医とのつきあいかた 日頃、聞けないことを丁寧に教えていただきました。
 
 
 みなさんも熱心に質問をされていました。
 







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