日本財団 図書館


II. 沖合海洋情報流通システムの試作品
1. 目的
 日本南岸沖を流れる黒潮は,時間変動と空間変動に富んだ特性を有している。しかしながら,沖合黒潮域の海洋情報は継続的に入手し難いものであり,沿岸漁業者にとってはその挙動を把握することは非常に難しい。
 本業務では,社団法人 漁業情報サービスセンター(以下,JAFIC)が近年継続的に商船フェリーから収集している水温情報を用いて,広範囲にわたる日本南岸黒潮域の海洋変動を把握するための海洋情報流通システムを構築することを目的としている。
 
2. システムの基本設計方針
 本システムは,海洋情報データベースに登録された定期商船フェリーの航走水温データを迅速に情報流通させるために,インターネット上のホームページで一般的なハイパーテキストを利用してメニュー・対話形式で容易に図示,閲覧できるシステムとすることを目指している。
 
 本システムは,データベースの内容をグラフ化するとともに,これをハイパーテキスト(HTML: Hyper Text Mark-up Language)化し,初期メニューから対話形式で対象海域のデータ値や時系列グラフ等が検索・表示できるシステムとして設計した。システム開発に際しては,以下の内容を満足するものとした。ハイパーテキストの仕様は,HTML 2.0に準拠するものとした。また,インターネットに接続できる携帯電話でも閲覧できる機能も付加している。
 
 基本設計方針を整理すると,
1)初期メニューから「航路図」,「航走水温図」,「時系列解析図」等,解析別に閲覧規模を選択できること。
2)閲覧規模選択後は,選択空間規模内の区域もしくは閲覧したい図のリストが表示され,対話形式で閲覧内容を選択できること。
3)グラフはそれぞれ個々に独立したファイルとし,メイン/サブ・フレーム内にグラフを表示しないこと。
4)すべての表示は,Webブラウザ本来の表示機能のみで可能なものとし,他のアプリケーション等をリンクして使用する必要がないこと。
5)研究者の調査現場や漁業者等の漁場探索でも利用可能にするため,モバイル・パソコンを想定して画面の大きさを“800ピクセル×600ピクセル”の範囲で表示可能なこと。
6)インターネット接続ができる携帯電話で表示可能な範囲に編集して表示すること。なお,対応機種は古いタイプを想定した。
 
 作成したハイパーテキスト,図等については,磁気媒体のボリューム内で階層化して整理し,パーソナル・コンピュータ上のWebブラウザ等既存の閲覧ソフト(Internet Explorer 4.0以上を想定)で閲覧できるシステムとした。
 
 システムは,初期画面から分かれる3種のメイン・メニューと携帯電話用のサブ・メニューで構成されている。メイン/サブ・メニュー毎のハイパーテキスト末端フレームおよび画像ファイルは次に示すように配置した(図1)。
・  主にパソコンで閲覧する利用者向けの末端フレーム等は,画像とともにその数が膨大になるため,「PC」フォルダ内に最新情報に関する末端フレームおよび表示される画像を配置した。
・ 携帯電話で閲覧する利用者向けの末端フレーム等は,通信会社別にフォルダを配置した。(株)NTTドコモのインターネット接続サービス名称“iモード”の携帯電話に関しては「i」フォルダ内に,J-フォン(株)のインターネット接続サービス名称“J-Sky”の携帯電話に関しては「j」フォルダ内にそれぞれ最新情報の末端フレームおよび画像を配置した。
・ 過去の情報に関しては,パソコン向け,携帯電話向けともに各フォルダ内の「old」フォルダ内に末端フレームおよび画像を配置した。
・ 表示する図のファイルについては,一般的にはHTMLの通例に従い,gif形式もしくはjpeg形式とし,表示の高速化を図った。なお,携帯電話向けに関しては,できるだけ古い機種でも閲覧できるように,iモード対応機がgif形式,J-Sky対応機がpng形式とした。
 
 以上の基本設計方針に基づき,1往復の航路単位,解析項目毎にHTML版グラフを作成し,海域毎にまとめるとともに,これを対話形式で検索・表示が可能なハイパーテキストのメイン/サブ・フレームを作成して磁気媒体(CD-ROM)に格納した。
 いくつかの海域および解析項目の検索・表示例について,その段階毎に図2〜図11に示す。また,これらの図の解説について,閲覧ソフトウェアの機能とともに次項に記す。
 
図1 沖合海洋情報流通システムのファイル構成
 
※iモード:(株)NTTドコモのインターネット接続サービス名称
※J-Sky:J-フォン(株)のインターネット接続サービス名称
 2003年10月より「ボーダフォン株式会社」に社名変更
 インターネット接続サービス名称もボーダフォンライブ!に名称変更(本報告書では,旧名称を利用する)
 
3. パソコンを利用した沖合海洋情報流通システムの機能
 図1の「ferry」フォルダ内の初期メニュー(ファイル名:index.htm)をWebブラウザ(Internet Explorer 4.0等)で開くと,初期メニュー画面が表示されるので,任意のメイン/サブ・メニュー項目を選択する(図2)。ここでは,左側の幅広い部分がパソコンで閲覧する利用者向けに「航路図と航走水温図」,「時系列解析図」等を選択するメニューをメイン・メニュー,右側の幅狭い部分が携帯電話で閲覧する利用者向けをイメージに「灘・湾別の航走水温値」,「前航海と比較した航走水温図」等を選択するメニューをサブ・メニューと呼称する。
 
図2 初期画面(左:メイン・メニュー,右:携帯電話用情報内容)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION