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(3)水位変動
 十和田湖の湖水は、周辺地域の灌漑用水や水力発電等に利用されている。灌漑用水は、奥入瀬川流域6市町(十和田市・三沢市・十和田湖町・六戸町・下田町・百石町)の地域で利用されており、水力発電も4つの発電所(十和田・立石・法量・蔦)が稼動している。
 湖水の利用に関しては、1937年(昭和12年)に、当時の内務省・農林省・青森県・秋田県及び東北振興電力株式会社の間で「奥入瀬川河水統制計画」のもと、灌漑、発電、景観保護のために十和田湖水を有効利用することが話し合われている。これに基づき1938年(昭和13年)に、東北振興電力株式会社は、両県の許可のもと自然流入する水のほか、湖域外の11渓流からの水を十和田湖に逆送水し、貯水している。これによって、三本木原などの灌漑用水や十和田湖・奥入瀬の景観維持に利用するとともに、これに支障のない範囲で発電にも利用できるようになった10)
 
放流期間 4月10日〜11月10日
放流量 昼間:約5.5m3/s
夜間:約0.3m3/s
(出典:「十和田湖の水利用及び水力発電所の役割−東北電力株式会社 青森支店」平成15年9月)
 
(出典:「十和田湖の水利用及び水力発電所の役割−東北電力株式会社 青森支店」平成15年9月)
 
 図2-3-7は、1970年、1980年、1990年、2000年及び2002年の十和田湖の水位実績を表したものである。これをみると、1970年を除く1980年から2002年までは、年間を通しての水位変動は1m前後の変動幅に保たれている。しかし、約1m前後の水位変動が、浅瀬に生息する生物に対し影響する可能性が考えられるので、今後検討する必要がある。
 
図2-3-7  1970年、1980年、1990年、2000年、2002年の十和田湖の水位実績
(出典:青森県河川砂防課提供資料 平成15年)
 

(文献)
1)小島圭二, 田村俊和, 菊池多賀夫, 境田清隆編. 日本の自然地域編2東北. 岩波書店, 1997; 58-60.
2)財団法人自然環境研究センター編. 新・美しい自然公園5十和田湖. 財団法人自然公園財団, 1992.
3)財団法人青森県下水道公杜(現財団法人青森県建設技術センター). 平成12年度維持管理年報, 2000.
4)青森県土木部下水道課(現青森県県土整備部都市計画課). 青森県の下水道, 2000.
5)青森県土木部道路維持課(現青森県県土整備部道路課). 十和田湖への道(八甲田除雪のあゆみ).
6)成田健. 文人たちの十和田湖. 無明舎出版, 2001.
7)青森県・秋田県. 十和田湖水質・生態系改善行動指針〜恵み豊かで澄んだ水, 十和田湖を未来の子供たちへ〜, 2001
8)高村典子(1999)国立環境研究所研究報告 第146号 十和田湖の生態系管理に向けて
9)昭和53年度十和田湖資源対策事業調査報告書. 十和田湖ふ化場協議会, 1979.
10)東北電力株式会社青森支店資料. 十和田湖の水利用及び水力発電所の役割, 2002.







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