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2. フルカマップ北部
F-A: ドマーセワ川Domaseva(地形図川名表記なし)。
7月12日調査。2000年に日本野鳥の会の共同調査でシマフクロウが目視されている。河口から100-200mで落差10mの滝があり、回遊魚類は遡上できない。川幅は2-3m。滝の上は台地状になり放棄された農地がある。台地上の森林はトドマツ林や針広混交林で混交林は二次林化している。広葉樹大木は見られないが、針葉樹はDBH60cm超のものが散見された。
F-B: チクニ川(イリューシナ川Ilyushina)。7月12日調査。河口から約4km地点周辺の河畔林を探索。チクニ川はこの周辺では最も大きな河川である。環境と周辺の生息状況から考えてシマフクロウは生息している可能性はあるが痕跡などは見られなかった。川幅は3-5mで、河畔林はケヤマハンノキやヤナギを主体とする。大木は見られない。
 
フルカマップ北部調査地点
 
3. チャチャ岳南麓オンネベツ川周辺
C-A: セオイ川(サラトフカ川Saratovskaya)。7月17、18日現地調査。河口近くには保護区管理小屋がありレンジャーが常駐している。2000年の道新合同調査では1980年代に現地で管理官をしていたZdorikov氏、および現在の保護区長Grigoriev氏に現地の案内を得て、極めて高密度のシマフクロウと営巣木を確認している。セオイ川には本支流域にあわせて最低3つがいのシマフクロウがいると推定されている。また、同調査で河口から約1.5kmの河畔林に人工巣箱を設置した。セオイ川の河畔林はオオバヤナギに優占され、DBH1m以上の大木になる。大木の多くは樹洞を有しておりシマフクロウの営巣にはきわめて良好な条件である。川幅は5mで蛇行を繰り返し魚類は豊富である。
 道新調査で設置した下流地帯の巣箱には2003年春にメスがいたのをレンジャーが確認したらしい。本調査で巣箱内を確認したが、巣箱内にはあまり羽毛が無かったため繁殖には失敗したかもしれない。7月17日夕方に近くで鳴き声を待ったが成果なし。7月18日に明瞭ではないがシマフクロウのものと思われる足跡を巣箱下流の中洲に確認した。
 7月18日の調査では河川沿いに痕跡を探して遡行し、河口から約2km地点の古い営巣木近くで植生調査を実施したが、近傍のトドマツ林内で古い羽毛を採取した。
 
セオイ川景観
 
 
セオイ川 過去に使用された営巣木
 
 
セオイ川 落下羽毛
 
 
セオイ川 タイガ林内
 
 さらに河口から約3km地点でシマフクロウの落下して間もないと思われる羽毛を採取した。周辺には足跡もあり。調査の前週にはかなりの降雨があり増水で最近の痕跡は全て流れていたため、落下したのは数日以内だと思われる。同日夕方採取地点近くで鳴き交わしを待つと、19時08分(日本時間)に上流約500m以上遠方からシマフクロウ・オスの鳴き声が始まり、約30分間断続的に聞こえた。メスや幼鳥の声は聞こえなかった。鳴き声地点は2000年の現地調査で上流個体の営巣木が確認されている方向から聞こえた。
 セオイ川本流には下流と上流に最低2つがいが生息していることがわかっているが、今回新しい羽毛を採取した地点は両者の中間付近であるため、下流側個体か上流側個体どちらの個体であるかは判定が難しいが、鳴き声の状況から考えると上流個体のものと思われる。いっぽう、河口から2kmの古い営巣木が下流個体のものかどうかは判定が難しい。今回の調査では明らかにならなかったが、2000年の調査では下流個体と上流個体の間に別のつがいがいる可能性が指摘されている。個体の行動圏や個体密度に関する今後の精査を待ちたい。







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