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(4)爺爺岳北東地域
 この地域では、これまで専門家による鳥類調査の実施が少なく、国後島の中でも鳥類に関する情報がやや乏しい地域でもある。この地域においても、滞在中頻繁にオジロワシの姿を見ることが出来た。成鳥だけでなく、若鳥の姿も確認している。しかし、東沸湖やチクニ川などの古釜布周辺域や温根別川やセオイ川などと比べると、生息環境には差異が見られた。
 
《オンコツ、ソコボイ付近》(図表6)
 爺爺岳の山裾が海岸まで達しており、一見良好な生息環境に思える。しかし、河川の規模は比較的小さく、魚影も少ない印象。また、太平洋側の遠浅の海域とは違い、浜からいきなり水深のある海域であり、カモメなどの海鳥の姿も少なく、古釜布周辺域や温根別川などの爺爺岳南西域と比較して、餌環境がやや劣っている印象を受けた。
 オタベツ川周辺域で、つがいと思われる成鳥2羽と若鳥の姿を確認した。ソコボイの滝付近でも、つがいの確認こそできなかったが、成鳥と若鳥をそれぞれ目撃している。河口部にある滝つぼには、サケ科魚類が多数回遊しており、季節によっては良好な餌場となっているようである。今回確認したオジロワシも、この滝つぼの上空を行き来し、付近の樹に止まって様子を伺っていた。1987年の報告によれば、オンコツ周辺域はオジロワシの推定営巣地とされている(ロシア国立クリリスキー自然保護区1984-1999)。
 
オンコツ周辺域の海岸とソコボイの
滝付近の樹に止まるオジロワシの成鳥
 
 
《西ビロク湖東岸》(図表7)
 国後島の森林地帯の北端とも言える地域で、海岸から内陸部の森林地帯までは、数キロの距離がある。オンコツ周辺域と同様、浜からいきなり水深のある海域であり、餌環境はやや劣る印象を受けたが、河川河口部の砂浜には、打ち寄せられた倒木を止まり木にし、頻繁に訪れていることを裏付ける糞や羽などの痕跡が多数残されていた。また、海岸と森林地帯を行き来するオジロワシの姿を数回確認している。従って、この地域のオジロワシの餌場は、海岸域が主となっていると思われた。
 
西ビロク湖東側の森林域と海岸に
残されていたオジロワシの止まり場と糞
 







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