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(3)温根別川(チャチナ川)、セオイ川(サラトフスカヤ川)周辺部(図表5)
 今回の調査で、最も多くオジロワシを確認した地域である。出現頻度は非常に高く、成鳥だけでなく若鳥の姿も頻繁に目撃した。成鳥が給餌用と思われる魚類をつかみ内陸方向へ飛んでいく姿も目撃した。また、河川の上流域でも、岸辺にオジロワシのものと思われる足跡が数箇所にわたって残されており、河口部やその周辺域の海岸だけでなく、河川の上流域まで餌場として利用されているようである。この辺りの河川は、上流域に渡って、周囲が比較的開かれており、魚類の生息数も非常に多いことから、広範囲にわたって良好な餌場が確保できているようである。また、冬季の渡りの時期には、サケ科魚類の産卵河川でもある温根別川やセオイ川(サラトフスカヤ川)流域に数多くのオオワシ、オジロワシが集結するとの報告もあり(Nechaev 1969、ロシア国立クリリスキー自然保護区1984-1999)、一年中良好な餌場となっているようだ。
 温根別川流域では、レンジャーの案内の元、営巣木を観察し、巣の測定も行った。測定値は下記の通りである。尚、レンジャーによれば、今期この巣では2羽のヒナが確認されている。今回の調査でも、この河川流域の個体と思われる若鳥を確認している。また、1987年には、河口から2キロの地点においてダケカンバの上部に造られた巣が発見されており(ロシア国立クリリスキー自然保護区1984-1999)、長期にわたって営巣地としての利用が継続されているようである。
 
《温根別川流域オジロワシの巣測定値》
樹種:エゾマツ(樹冠に造巣)
胸高直径:20cm
巣外周:長径195cm×短径170cm
巣内周:長径70cm×短径50cm
産座の深さ:10cm
巣の厚さ:約1m
樹高:約22m
巣材:マツの枝、・ヨシの葉など
巣内残留物:初列風切1枚(ペリット等無し)
 
オジロワシの営巣木
 
オジロワシの営巣木の巣内
 
川辺に残されていたオジロワシの足跡







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