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(2)固体地球統合フロンティア
 日本列島周辺は、地球上で最も地震活動の活発な地域です。1993年1月に発生した釧路沖地震や1994年10月に発生した北海道東方沖地震、それに1994年12月に発生した三陸はるか沖地震などの巨大地震は、ともに海洋プレートの沈み込みに起因して起きたものです。
 固体地球統合フロンティアでは、こうした巨大地震の発生する海溝域等で、上部マントルまでの精密な地下深部構造の探査を、「マルチチャンネル反射法探査システム」や「自己浮上型海底地震計」等の先端的な探査機器を活用して行っています。
 また、当センターが開発して設置した「海底地震総合観測システム」から得られるデータおよび海上からの地球物理的手法により得られるデータなどを総合的に組み合わせることにより、プレート衝突域の地殻変動の状況を明らかにしていきます。さらに、これらの知見を基に、海溝域深部の地殻変形モデルを構築し、地震発生や地殻破壊の進行過程のメカニズムの解明を行います。
 
 
 
1. マルチチャンネル反射法探査システムによる解析
 本システムは、海面付近から海底に向けて音波を発生させ、海底下の物質(地層)境界面からの反射波を、海水面付近を曳航するストリーマケーブル(多数のマイクロホンを取り付けたケーブル)で受振し、連続的に記録したデータを解析することにより、海底下20km程度までの地下構造を詳細に把握できるシステムです。
 
2. 海底地震計のデータ等を併せた総合解析
 海底地震計を用いた屈折法*1・反射法探査によって得られた結果と震源分布を併せて総合的に解析することにより、より詳細な地下構造を把握することができます。
 

*1 人工震源から地下を通って地表まで戻ってくる屈折波や反射波を地震計でとらえて、地下の構造を求める探査方法です。屈折波や反射波が地下のどこをどのような速度で伝わってきたのかを解析することによって、地下の地震波速度構造が求められます。
 
(3)地球フロンテイア
 地球フロンティア研究システムは、地球規模で発生する異常気象や地球温暖化などさまざまな地球変動のメカニズムを明らかにし、そこから得た知見をもとに変動の予測を可能にすることと、それを通して社会に貢献することを目的としています。しかし、どの問題をとってもさまざまなプロセスが絡み合っており、それらを解明することは決して容易なことではありません。そこで、基礎に立ち返って個々のプロセスの理解を深めることと、その結果を総合して、地球変動現象全体の機構を明らかにし、モデル化すること、の双方のバランスを保ちながら研究を進めることが肝要です。
 なお、本研究システム研究は、宇宙開発事業団(NASDA: National Space Development Agency of Japan)との共同で、気候変動予測研究、水循環予測研究、地球温暖化予測研究、大気組成変動予測研究、生態系変動予測研究およびモデル総合化の6つの領域に分けて実施されています。
 
 
1. 気候変動予測研究領域
 アジアの社会と人々の生活は、エル・ニーニョに代表されるような短期の気候変動とアジア・モンスーン*1に代表される著しい季節変動に大きく左右されてきました。日本南岸を洗う黒潮の流路変動もこうした大規模な大気海洋変動の一環で、これら一連の気候変動を予測し、対策を講じることは極めて重要なことです。
 
 
 そこで本研究領域では、太平洋、インド洋に展開される観測システムからのデータを活用すると共に幅広い大気・海洋モデルを駆使して、短期気候変動のメカニズムの解明と予測を行うための基礎研究に取り組んでいきます。さらに今後は、超高解像の海洋モデルを開発して、我が国の周辺海域の海流変動の予測の可能性や北太平洋の気候さえも変えるといわれる大気海洋現象の発生のメカニズムの解明についての研究にも取り組む予定です。
 
2. 水循環予測研究領域
 人間活動により温室効果をもたらすガスは、年々確実に増加しています。このガスの増加に伴う地球規模での温暖化が現在、全人類にとって大きな課題となっています
 しかしながら、モンスーン気候下に住む私たちアジア人にとって、非常に重要な問題は、温暖化もさることながら、私たちの生活基盤となる水資源と、その源としての降水量がどのように変化するかということです。また、アジアモンスーン自身も、エル・ニーニョと密接に関連して、年々大きな変動を示しています。
 本研究領域では、アジアモンスーンとそれに伴う水循環、水資源がどのようなメカニズムで変動しているのか、また、人間活動の影響で、今後どのように変化するのかという予測をするための研究に取り組んでいます。
 
 

*1 空気は暖かいと膨張し、冷えると縮みます。冷えて密度が濃くなった空気は、密度の薄い暖かい空気の方へ移動します。このように冷たい空気が暖かい空気の方へと移動するのが風です。夏は陸地の方が暖まりやすく、海の方が冷えているため、空気は冷たい海のほうから暖かい陸地の方へと移動し、海から陸地へ向かって風が吹きます。冬にはこの逆の現象が起こります。このように季節によって変化する風を季節風(モンスーン)と呼びますが、特にアジアで起きるモンスーンは地球上で最大のものといわれ、これをアジアモンスーンと呼びます。







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