(3)QIAamp Viral RNA MiniキットによるRNAの抽出(本研究でもこの方法を採用した)
RNAの抽出には多くの方法があり、また抽出キットも多数市販されている。それぞれが良いと判断した方法を用いて良い。ここではQIAamp Viral RNA Miniキットを用いる方法を紹介する。本研究でもこのキットを用いた。
QIAamp Viral RNA MiniキットはCarrier RNAが含まれており、RNA抽出効率が高いが、上述のようなサンプルの調製が必要となる。またこのキットにはDNase処理が含まれていないので、各自が行わなければならない。
1)使用前に行う試薬の調製
サンプルを室温(15〜20℃)に戻す。
Buffer AW1(Kit Cat.No.51104)に96〜100%エタノールを25ml加える。BufferAW2(Kit Cat.No.51104)に96〜100%エタノールを30ml加える。
Carrier RNA(凍結乾燥品)のチューブにBuffer AVL 1ml添加しCarrier RNAを完全に溶解させ、Buffer AVLに全量を添加する。添加したBuffer AVL/Carrier RNAは室温で2週間、2〜8℃で6カ月間安定である。Buffer AVL/Carrier RNA中に沈殿物がある場合には、加熱(80℃)により溶解する。ただし、加熱は5分間以内とし、6回以上の加熱は行わないこと。Buffer AVL/Carrier RNAは使用前に室温に戻す。
2)操作法
以下の操作は室温で行う。
(1)1.5mlチューブにBuffer AVL/Carrier RNA 560μlを入れる。
(2)マガキ抽出上清(10,000rpm,10分間)を140μl(増量することも可能である。詳細はキットの添付マニュアルを参照)を入れ、サンプルとBufferを充分混合するため15秒間Vortexにかけ、室温(15〜25℃)に10分間置く。チューブをスピンダウンする。
エタノール(96〜100%)560μlをチューブに加え、15秒間Vortexをかけた後、チューブをスピンダウンする。液が混濁した時には9,000×g(10,000rpm)で5分間遠心する(リアルタイムPCRを行うときにはこの遠心を行ったほうが良い)。
(3)(2)の液630μlをQIAampスピンカラム(2mlコレクションチューブに注入し、蓋を閉め、6,000×g(8,100rpm)で1分間遠心する。QIAampスピンカラムを新しい2mlのチューブに移し、残りの(2)の液630μlを入れ、同様に遠心し、全ての液が無くなるまで行う(サンプル量が140μlのときには、この操作が2回で終わる)。
(4)QIAampスピンカラムを開け、Buffer AW1 500μlを入れる。
(5)蓋を閉め、6,000×g(8,100rpm)で1分間遠心する。QIAampスピンカラムを新しい2mlのチューブに移し、ろ液の入っているチューブは捨てる。
(6)QIAampスピンカラムにBuffer AW2 500μlを加え、20,000×g(14,000rpm)で3分間遠心する。Buffer AW2とろ液等が接触した時には(7)を行う(このような事は通常起きない)。
(7)QIAampスピンカラムを新しい2mlのチューブに移し、ろ液の入っているチューブは捨てる。フルスピードで1分間遠心する。
(8)QIAampスピンカラムを新しい蓋つき1.5mlのチューブに移し、ろ液の入っているチューブは捨てる。QIAampスピンカラムの蓋を開け、室温に戻したBuffer AVE 60μlを加え、蓋を閉めて1分間置いた後、6,000×g(8,100rpm)で1分間遠心する。
(9)このろ液が抽出RNAであり、抽出RNAは-80℃での保存が望ましいが、-20℃以下で1年間は安定である。
(4)DNase処理
二枚貝抽出液中には様々なDNAが含まれており、しばしばPCRで非持異バンドが出現するので、それらを抑制するため、DNase処理を行う。またそうすることで、この時点までにDNAの混入が起きた時でも、それらを消化することができる。したがって、キットにDNase処理が含まれていない時にはこの操作を行うことが望ましい。
注意としてDNase Iを使用するマイクロピペットは専用のものを用い、可能であればオートクレーブができるものが良い。検査終了後、使用したDNaseの含まれている液、チューブは高圧滅菌にかける。
(1)次に示したようにDNase処理混合液の調製を行う。
DNase処理混合液
試薬 |
15μl系 |
30μl系 |
抽出RNA |
12.0μl |
24.0μl |
5×First-Strand Buffer 注1) |
1.5μl |
3.0μl |
Distilled water |
0.5μl |
1.0μl |
DNase I(1U/μl) |
1.0μl |
2.0μl |
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(2)混合液調製後、37℃に30分間置く。
(3)次いで75℃に5分間置く。
(4)直ちにon ice(または4℃)する。これがDNase処理済み抽出RNAである。
(5)RT反応(Super Script II RT (Invitrogen) を用いる時)
(1)次のRT反応調整液を作製する。
RT反応液調製液(Super Script II RTを用いる時)
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15μl系 |
20μl系 |
30μl系 |
50μl系 |
DNase 処理RNA |
7.5μl |
10.0μl |
15.0μl |
30.0μl |
5X SSII Buffer |
2.25μl |
3.0μl |
4.5μl |
7.0μl |
10mM dNTPs |
0.75μl |
1.0μl |
1.5μl |
2.5μl |
Random Primer(1.0μg)注2) |
0.375μl |
0.5μl |
0.75μl |
1.25μl |
Ribonuclease Inhibitor(33unit/μl) |
0.5μl |
0.67μl |
1.0μl |
1.67μl |
100mM DTT |
0.75μl |
1.0μl |
1.5μl |
2.5μl |
Super Script II RT(200u/μl) |
0.75μl |
1.0μl |
1.5μl |
2.5μl |
Distilled water |
2.125μl |
2.83μl |
4.25μl |
2.58μl |
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(2)反応は42℃で30分から2時間行う(通常1時間)。
(3)次いで99℃で5分間加熱し、on ice(または4℃)する。
(6)1st PCR
1)1st PCRは、ノロウイルスについては次の混合液を作製する(G1とG2を別々に作製する)
ノロウイルス
1. Distilled water 33.75μl
2. 10×Ex TaqTM buffer 5.0μl
3. dNTP(2.5mM)4.0μl
4. NV プライマーF(25μM)1.0μl
5. NV プライマーR(25μM)1.0μl
6. cDNA (Templete) 5.0μl
7. EX Taq (5unit/μl) 0.25μl
Total 50.0μl
1st PCRに用いるプライマーは、食品のときには、G1ではCOGlF/G1-SKR、G2ではCOG2F/G2-SKRおよびALPF/G2AL-SKR(アルファトロン型を検出するプライマー、この2組のプライマーは混合して用いても良い)を、ふん便材料の時にはG1ではG1-SKF/G1-SKR、COG1F/COG1Rを、G2では
G2-SKF/G2-SKR、G2-SKF/G2AL-SKR、COG2F/COG2R、ALPF/COG2Rを用いることが望ましい。
ただし、このほかのプライマーを用いてもよい。例えばポリメラーゼ領域のプライマーなど。
2)PCR反応
増幅は94℃、3分を1サイクル、94℃、1分、50℃、1分、72℃、2分を40サイクル、72℃、15分を1サイクルで行う。増幅条件はプライマー、サーマルサイクラーによって若干異なることもあるので、それぞれ最適な条件で行うと良い。
3)電気泳動
PCR産物8μlと5× Loading buffer 2μlを混合し、1.5%アガロースゲルを用いて泳動する。泳動bufferはTAEを使用する。
4)アガロースゲル染色
泳動後ゲルをエチジウムブロマイド染色液(TAE溶液100mlにエチジウムブロマイド10mg/mlのものを10μl加えた溶液)に20分間入れておく。この時に緩やかに揺すると良い。
5)写真撮影、バンドの確認
染色したゲルはUV照射で写真撮影し、バンドの確認を行う。食品(二枚貝抽出液のこと)では1stPCRでバンドが見られなかった時には(多くの例では見られない)、次にNested PCRを行う。
注1):使用するReverse Transcriptaseのbufferを用いる。
注2):Random Primerの代わりにNV プライマー、ポリオ2プライマーを用いても良い。
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