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2.5.2.3 ピストン摩耗
 ピストンが摩耗した場合を想定して、市場の実機(15ヵ月運転)のピストンを回収し、擬似故障試験を実施した。摩耗量は3〜5μm程度(下図内d1,d2におけるピストン外径寸法の運転前寸法との差の平均値)であり、標準のピストン表面のデフリックコートの厚さが20〜30μm程度あることを考えると、今回供試品として用いたピストンの摩耗量はかなり小さいといえる。
 
図2.5.2.3-1 ピストン外径寸法計測図
 
 
表2.5.2.3-1 ピストンの摩耗調査結果
室温:22℃ 測定器名:マイクロメーター
(型式番号:OMA042)
部品の物体温度
(表面温度):23℃
シリンダNo. 測定位置 ピストン頂面よりの寸法
mm
摩耗量(単位1/1000mm)
Y-Y M-M N-N
1 d1 81 -5 -3 -3
d2 148 -3 -3 -3
2 d1 81 -3 -2 -2
d2 148 -3 -3 -3
3 d1 81 -5 -5 -3
d2 148 -3 -3 -3
4 d1 81 -5 -5 -5
d2 148 -5 -5 -3
5 d1 81 -5 -2 -5
d2 148 -5 -5 -5
6 d1 81 -5 -5 -3
d2 148 -3 -5 -3
 
 振動計測位置は、(1)第2気筒横ブロック、(2)第2気筒シリンダライナの2箇所である。
 各々の計測位置について、ピストンとライナ間でのスラップにより発生する振動を計測することで摩耗による影響が検知できると想定した。
 
 第2気筒の弁摩耗に対しては、以上の3箇所で計測、解析した結果、下表のとおりの結果となった。
 
表2.5.2.3-2 ピストン摩耗の異常検知結果
計測位置 時間ゲート 異常検知の可否
○/×
図番号
ライナ 第2気筒 無し × 2.5.2.3-5
有り 2.5.2.3-6
2.5.2.3-7
2.5.2.3-8
各気筒横ブロック 第2気筒 無し × 2.5.2.3-11
2.5.2.3-12
有り 2.5.2.3-13
2.5.2.3-14
 
1)第2気筒シリンダライナ
 第2気筒シリンダライナの信号で直接スラップによる影響を調査した。
 1サイクルを通しての時間軸データでは、顕著な差はなかった(図2.5.2.3-3,-4参照)。
 さらにRMS値で比較するために、時間ゲート無しで周波数分析したが有意な差はなかった(図2.5.2.3-5参照)。
 
 第2気筒シリンダライナでは、燃焼1サイクルに以下のとおり、ピストンとの間でスラップが3回発生する。
 
a)第2気筒爆発上死点 (No2 FTDC)
b)第2気筒オーバーラップ上死点前60°(No2OTDC 前 60°)
c)第2気筒オーバーラップ上死点後110°(No2OTDC 後 110°)
 
 1サイクル中に3回発生するスラップのタイミングで時間ゲートをかけて周波数分析をした結果、a),b),c)の各々のタイミングでは変化が見られたが、周波数軸上での共通した顕著な傾向は見られなかった(図2.5.2.3-6-7-8参照)。
 ライナの振動はピストンの摩耗に対して、スラップ現象そのものを計測していると考えられるが、同時に表面振動にどのような影響があるかを第2気筒横ブロック振動で確認した。
 
図2.5.2.3-3 第2気筒シリンダライナ(負荷300kW)正常時
 
 
図2.5.2.3-4 第2気筒シリンダライナ(負荷300kW)摩耗時







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