2.3.5 船陸間情報通信システムの実用性評価
2.3.5.1 実証実験の経過状況
(1)試験システムの搭載と動作確認
ドック時に各搭載システムの設置・通電動作確認を行ない、機関モニタリングユニットによる主機関データの収集及び船陸間通信装置による陸上送信の試験確認乗船を行った。
・主機関データの収集に関しては、主にモニターによる追加センサーの表示データ確認と船陸間通信装置とのネットワーク通信の確認を行ない良好であった。
・船陸間通信装置については定時(4時間毎)及び手動操作によるネットワーク通信及び陸上への送信が良好であることを確認した。
・燃焼解析用データについては、主機関運転中に自動的に行われるデータ計測により、船陸間通信装置を介した陸上送信が行われていることを確認した。
・帳票データについても模擬データではあるが、ハンディターミナルシステムより送信動作を行ない、同様に陸上送信が行われていることを確認した。
以下に、船上試験における各システムの写真を示す。
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機関モニタリングユニット
配置:機関制御室 機関監視盤内
上部:機関モニタリングユニット本体 下部:HUB、既存線モデム、端子台等 |
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船陸間通信装置 収容箱
設置:ブリッジ階段室 |
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携帯端末用アンテナ
配置:コンパスデッキ |
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(2)システム動作状況
(9月下旬の訪船調査)
陸上送信が不安定になったためソフトウェアを確認したところ、船陸間通信装置のソフト上に、通信エラー回避処理部分に不備が見つかり、本船のソフトの修正を行った。以後は正常に陸上送信されている。
また、同時期に燃焼解析装置からのデータのみ陸上送信されなくなり原因を調査したところ、主機関に取付けられたエンコーダーに不具合があり燃焼解析装置側で計測できない状況であることが分かったため予備品と交換し、12月以後は順調にデータの収集が可能となった。
(12月上旬の訪船調査)
機関モニタリングユニットの組立上の問題により誤動作していたため、ユニット基板を交換した。また、LO/FOの差圧発信器が誤動作するため、同製品と交換し、メーカに不具合品の検証を依頼した。その際の訪船時に船陸間通信の通信経路をこれまでDoPa網からCPA網に切り替え、以後、同様の通信テストを行なうこととした。
差圧計に関しては後日、メーカにて不具合箇所の修理及び再調整後交換をした。
2.3.5.2 各要素システムの評価
(1)船内ネットワーク
船陸間通信装置内にネットワーク監視ソフトをインストールし、実証実験中のデータ送受信における通信状態(データ量、エラーの発生等)の確認を行った。同一デッキ上のシステム間では、広く利用実績のあるEthernetにより接続しているため、今回はブリッジ〜機関制御室間の予備線を利用したネットワークラインの検証を行った。
結果として、各システムの応答スループットにおいては、ロガーデータの送受信が0.2sec程度、また、燃焼解析用データ等の150kbyte程度のファイル送信においても1〜2sec程度で終了しており、障害の発生もなく各システム間のデータ交換を行なうことが可能であった。
今回の予備線の利用については、実際の構築作業においては予備線の端末処理を行ないモデムと接続するだけの簡易作業で可能であり、市販の電話線モデム等も安価であることから、専用線敷設を行なう工事と比較しても経済的に大きなメリットがあるといえる。
(2)機関モニタリングユニット
船上実証実験において表2.1.1-2に示すデータロガー船上試験用センサー計測項目をサンプリングし、船陸間通信装置を介して陸上に送信される。この間は完全に自動化されており、定期的に送信された計測項目を陸上にて蓄積しモニタリング状態の検証を行った。
代表的なもののトレンド・グラフを図2.3.5.2-1〜図2.3.5.2-2に示す。トレンド・データの取得期間は平成15年9月の試験装置搭載より平成16年1月末までのデータである。グラフの作成にあたっては、一定の運転条件下での比較を行なうため、負荷率60%以上のデータのみを記載している。上記条件下でのプロット有効数は288ポイントであり、これらの陸上送信データを時系列的に表示することにより各主機関データの状態推移が容易に確認できることが分かる。
図2.3.5.2-1 排気ガス温度トレンド
図2.3.5.2-2 冷却水温度トレンド
また、船内システムに関してのヒアリング調査を行った。
i) データロガーによるモニタリング状況
・航海中においては主に主機関計測項目の監視を重点的に行ない、補機その他の項目も適時監視している。下表に重要視している監視項目を示す。
表2.3.5.2-1 N丸における重要モニタリング項目例
主機 |
F0/L0入口温度・圧力、CFW入口圧力・出入口温度、シリンダ排ガス温度、T/C排気ガス温度、空気冷却器空気出口温度等 |
熱媒ヒーター |
熱媒油出入口温度、F0流量 |
F0/L0清浄機 |
運転状態、加熱器出口温度 |
発電補機 |
L0入口温度、CFW出口温度、空気冷却器空気出口温度等 |
カーゴ補機 |
L0入口温度・圧力、CFW入口温度・圧力等 |
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・トレンド画面、バーグラフ(排ガス、冷却清水温度のシリンダ間比較)は特に状態を把握する上での利便性を感じている。
ii) 通信の自動化について
・データロガーの自動送信や、ハンディターミナルシステム等からの送信に関しても各システム連携による自動送信のため、通常の陸上送信に関しては手間、負担を感じることは無かった。499t等の小型貨物船等の人員の少ない船では特に有効だろうとの意見。
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