日本財団 図書館


2.3 実船での実用化試験
2.3.1 実船試験結果
 実船試験に供した船舶の概要を表2.3.1-1に示す。
 
表2.3.1-1 試験対象船の概要
船舶の所属 N社
船舶の名称 N丸
総トン数 2999G/T
積載量 5000k・
船種 黒積タンカー
航路 日本国内
搭載主機関 阪神6LF50A CPP付
主機関定格出力 3,309kW(4,500PS)
定格回転速度 240min-1
平均航海出力 約2,200kW(3,000PS)
回転速度 約220min-1
就航年月 1992年11月
 
 9月6日〜9月11日の6日間、本船のドック期間に合わせて試験部品、計測器類、システムの各装置類の設置配線工事などを行った。
 センサーを取付ける部品の内、新部品は部品製作時にセンサー取付用の加工まで行ない、使用中の部品(以下旧部品)は分解後、センサー取付用の再加工を行ない、それぞれにセンサーを取付け、機関に組付けた。
 ライナは分解後No.1、2、4cylに新ライナを、No.3、5、6cylはセンサー用穴を再加工した旧ライナを組込んだ。
 ピストン冠はNo.1、2、4cylに新冠、新リングを組込み、No.3、5、6cylには旧冠に、寸法計測結果により磨耗量の少なかったNo.3、1、2cylのリングをそれぞれ組込んだ。
 燃料ポンプはNo.1、2、4cylに新ポンプを完備で組込み、No.3、5、6cylは本体にセンサー用穴を再加工し、プランジャとバレルは旧品を、トップフランジ吐出弁のみ新替し組込んだ。
 各部品の交換状況、新旧部品の使用別けを表2.3.1-2に示す。
 
表2.3.1-2 N丸新部品、旧部品使用リスト
部品名称 組込状態 センサー名称
シリンダライナ No.1,2,4cylは新ライナを組込
No.3,5,6cylはセンサー用再加工し組込
リング間圧力
ライナ温度
ピストン冠
ピストンリング
オイルリング
No.1,2,4cylは新冠、新リングを組込
No.3cylは旧冠にNo.3cylのリングを組込
No.5cylは旧冠にNo.1cylのリングを組込
No.6cylは旧冠にNo.2cylのリングを組込
 
燃料ポンプ本体
及びプランジャ
No.1,2,4cylは新ポンプ完備で組込
No.3,5,6cylはセンサー用再加工し、トップフランジ、吐出弁新替し組込
プランジャ温度
噴射管内圧力
燃料弁本体
及びノズルチップ
No.1,2,4cylは新燃料弁・新ノズルチップで組込
No.3,5,6cylは新燃料弁に旧ノズルチップで組込
針弁リフト
吸・排気弁、弁座 No.1,2,4cylは新吸・排気弁・弁座で組込
No.3,5,6cylは整備し旧品を組込
 
吸気枝管 全筒共センサー座付に新替し組込 給気温度
指圧図採取弁 全筒共センサー座付に新替、
安全弁は流用し組込
筒内圧
クランク軸・端
盲蓋、踏板
クランク軸・端に新規に取付 クランク角度
 
 燃料弁は、センサー埋込済の新燃料弁本体に、No.1、2、4cylには新ノズルチップを、No.3、5、6cylには旧ノズルチップを組込んだ。
 吸排気弁・弁座はNo.1、2、4cylに新部品を組込み、No.3、5、6cylに整備後旧部品を組込んだ。
 吸気枝管は全筒共、温度センサー用座付に新替し、組込んだ。
 指圧図採取弁は全筒共、筒内圧採取用センサーの座付に新替、シリンダ安全弁は旧品を流用し組込む予定であったが、取付部の不具合により、計画とは異なる場所に暫定的に取付け、本船機関部員に依頼して、手動で計測することとした。後日、正規品と取り替えた。
 各センサーからの出力は2ヶ所に分けて設置した接続箱内のアンプを経由し、監視室の燃焼解析システム用のA/D変換ユニット、データロガーに接続した。
 9月12日、無事にドックを終了し、海上試運転後、営業運転へ入った。
 約6日間の短期間で全システムの装備を終了することができた。
 約1800時間運転後の平成16年2月に、損耗の進行状況を把握するためにNo.1cylとNo.6cylの分解・点検を行った。
 交換した各部品は組替え時および分解・点検時に寸法計測および写真撮影を行った。なお、リングT寸法、ライナ内径、プランジャ径、バレル内径などの計測結果を表2.3.1-3、表2.3.1-4に示す。
 ライナ寸法はピストンが上死点における第1リング相当位置の値で、各数値は熱膨張の影響を排除するために温度換算を行なった。
 また、プランジャ、バレルの各数値はプランジャ頭部、およびバレルの相当位置で、温度換算後の値で示している。
 
表2.3.1-3
海上試験 ピストンリングT寸法
基準寸法:リングT寸法15.0mm、ライナ内径φ500mm、単位:1/100mm
 
 No.1cylの摩耗がNo.6cylより若干大きいのは、No.1cylは平成15年9月にライナ、リングともに新替したため、ナジミのための初期摩耗が発生したものと推定される。また、No.6cylにおけるライナの摩耗量がマイナスの値を示したが、これは計測上の誤差(温度補正による)と考えられ、ほとんど摩耗していないと推定される。
 
表2.3.1-4
海上試験 燃料ポンププランジャ隙
基準寸法:φ40mm
単位:1/1000mm
 
 プランジャおよびバレルの寸法は温度換算による誤差と推定される非常に少ない摩耗量を示した。これは本船の燃料管理が非常に良好であることを示している。また、噴射管内圧力波形でもほとんど差は現れていない。
 ピストン頭部の初期組付け時、平成16年2月分解時の各写真を図2.3.1-1および図2.3.1-2に示す。
 
図2.3.1-1 ピストン頭部写真(組付時)
 
 
図2.3.1-2 ピストン頭部写真(分解時)
 
 ピストン冠頭部に少量のカーボンが付着しているが、リングの状態は良好であった。
 その他の部品も特に異常を示すものはなかった。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION