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2.2 機関遠隔診断システムの船陸間情報処理・通信システムの開発
2.2.1 モニタリングユニット他データ処理・通信装置の開発
(1)船上通信インターフェースの構築
 船上実証実験にあたり、本船の機器配置図や電源系統図等により既存設備、船体構造に併せたネットワークの設計を行った。
 尚、各システムの構成にあたっては以下の点を考慮した。
‐現状の設備に影響を及ぼさないこと
‐乗組員に負担とならないこと
‐機器や端末等を可能な限りコンパクトにまとめること
 検討の結果、ブリッジに船陸間通信装置及び航海情報収集装置を、機関制御室内に燃焼解析装置及びハンディターミナルシステムを配置することとした。但し、設置の都合上燃焼解析装置とハンディターミナルシステムのソフトウェアは同一PC上にインストールすることとした。
 
 診断を行なうための一般的な主機関センサーの収集は、試験船が既存設備としてデータロガーを有しているため、図2.2.1-1に示すように機関モニタリングユニットを既存データロガーに専用線で接続し、そのセンサーデータを利用すると共に、他システムに対する船内LANインターフェースとして機能させることとした。
 
図2.2.1-1 データロガー周辺構成
 
機関制御室
 
 船陸間通信システムは図2.2.1-2に示すように本体及び携帯通信端末を含め周辺各装置を一つの収容箱に納めてブリッジ階段室に設置し、コンパスデッキに端末用のアンテナを設置した。携帯通信端末とアンテナはDoPa用とCPA用の2種類の端末を使用するため、それぞれ2組用意した。LCD、K/B、MOUSEは実験中の各種設定及び確認のために用い、将来的には装備しない。
 
図2.2.1-2 船陸間通信システム構成図
 
 各システム配置に従って、同一区域内のシステム間はEthernet専用ケーブルにより接続を行ない、ブリッジ内ネットワークと機関制御室内ネットワークの間は既存予備線によりネットワーク接続を行なうこととした。図2.2.1-3の情報ネットワーク概略ブロック図に示すように、舵機室内ジャンクションボックス内で予備線(MPYC線)同士の中継接続を行ない既存線モデムによりネットワークを構成することとした。本予備線については事前訪船調査時に通信テストを行ない、実際に利用できることを確認しておいた。
 
図2.2.1-3 情報ネットワーク 概略ブロック図
 
 実証実験における船陸間通信データの一覧を表2.2.2-1に示す。一般計測データ及び燃焼解析用データに関しては、備考欄に記載する各システムが自動収集したデータであり、帳票データは乗組員が随時作成する帳票の電子化データである。また船陸間情報リンクの解析のため、これらの主機関の診断用データ以外に通信状況を記録したログを送信している。
 
表2.2.2-1 陸上送信データ項目一覧表
  項目 内容 詳細 備考
1 位置情報      
2 一般計測データ 主機関運転データ 主機出力
主機負荷率
主機回転数
シリンダ排気ガス温度

機関モニタリングユニット
  航海情報データ 大気圧
船速
緯度・経度
気象

航海情報収集装置
  五感情報データ 機関回転数変動
排気色
機関異常音
機関振動

ハンディターミナルシステム
3 燃焼解析用データ 高機能センサーデータ 筒内圧力
噴射圧力
ライナ温度
給気温度

燃焼解析装置
4 帳票データ 船内記録データ MOチェックリスト
出航前点検
月例点検結果
月例点検チェックリスト

ハンディターミナルPDF形式
5 通信ログ情報 通信状況解析用データ 船内LAN通信記録
船陸間通信記録
テキスト形式
 
 これらの船内データは船陸間通信装置に集約され、陸上処理サーバーを経由して陸上診断システムに随時送信されることになる。図2.2.2-1に船陸間におけるデータフローの概略を示す。陸上診断システムでは定期的に受信データの自動確認を行ない、データ内容に従って船舶管理データベースに随時格納される。以下に、データフローの概略を記載する。
(1)診断用データは4時間毎、帳票データは任意の時刻に収集・圧縮した後、陸上処理サーバーとの情報リンクを確立し電子メール形式にてメールサーバーに送信する。
(2)陸上処理サーバーでは送信先アドレスに従って、電子メールを仕分けして最終の送信先メールサーバーに送信する。
(3)陸上診断システムは、メール・クライアントとしてメールサーバーにストックされた診断用データを取得し、診断アプリケーションにて機関診断を行なう。
(4)帳票・船内記録データも同様に最終の送信先メールサーバーに送信され、陸上支援サイトのクライアントにより取得される。
(5)位置情報は陸上処理サーバー内にて処理を行った後、自動的にHTML形式の位置情報表示HPを作成し、Webサーバーによりインターネット上に公開される。インターネット上のクライアントはユーザー名・パスワードの認証を行ったあと閲覧を許される。
 
図2.2.2-1 船陸間データフロー







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