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(3)燃料弁ノズルチップ噴口閉塞再現試験
 ノズルチップ噴口の1穴塞いだノズルチップをNo.2cylに組込み正常状態(No.1cyl)との比較試験を行った。
 本試験は、突発的に発生する故障を再現する試験である。
 一般データによる診断結果では、3番目にノズルチップ噴口閉塞を表示した。一般+燃焼データによる診断結果は、2番目にノズルチップ噴口閉塞を表示した。
 噴射管内圧力の波形を図2.1.2-9に示す。
 
図2.1.2-9 噴射圧力比較(噴口閉塞)
 
 噴射管内最高圧力は設計基準値を超えており、このまま使用するとカム、ローラの損傷を引き起こす可能性が大である。
 通常、ノズル噴口閉塞は急に閉塞する場合と徐々に閉塞していく場合がある。すなわち、噴口径と比較して同程度のサイズのゴミが噴口を閉塞する場合は徐々に噴口内部に押し込まれ、噴口を閉塞していく。
 噴口径より大きなゴミの場合は噴射圧力により一気に噴口を閉塞する。の2種類が考えられる。しかし、カムとローラの接触面圧が噴射圧力の上昇により許容値を超えると一気に転送面に損傷が発生するわけでなく、徐々に進行していく。この時間内に異常を発見すれば、カムの損傷には至らず、ノズルチップの整備あるいは交換で大事故は回避できる。
 
 図2.1.3-1に保全管理システムの概念を示す。
 本船において得られるデータは主として次のシステムから自動および手動で入力される。
 
(1)データロガーシステムと燃焼解析システムにより自動計測される機関性能に関するデータ
 
(2)ハンディターミナルシステムにより手動入力される五感情報データと主要部品・重要部位の計測データおよび航海情報データの一部
 
(3)航海システムにより自動で入力される航海情報データ
 
(4)機歴管理システムにより手動入力される不具合データベースと予備品管理データ
 
 それぞれのシステムで得られたデータは、船陸間通信システムにより陸上支援システムに送信される。
 受信した各データを陸上支援システムは機関の遠隔診断および保全管理に使用するため、機歴管理データベースとして整理し、管理・保存する。
 機関の保守管理を支援するために開発された保全管理システムは機関診断システム用のコンピュータを兼用し、重複するデータは共用データとした。
 
 保全管理システムは下記の機歴管理及び予備品管理の機能を持つ。
 
機歴管理としては;
(1)短期的(毎日)損傷発生診断管理(突発的故障)
 定期的(毎日)に陸上で機関監視と機関診断を行ない、その診断結果による処置・対応を指示する。
 装置あるいは部品が損傷し、本船で何らかの処置・対応を行なった場合も、損傷の部位、状態、処置・対応を入力し、本船より陸上支援システムにデータとして送信する。
 機歴管理システムでは、受診したデータを機関の診断結果と共に蓄積し、記録と管理の支援を行なう。
 
(2)長期的損耗進行状況管理(経年変化に対応した損耗)
 主要部品と重要部位は、時間と損耗状況から損耗進行速度を算出推定して、今後の修理時期を予測することで合理的な(部品手配、修理日時等)メンテナンスを行なう。シリンダライナやピストンリング、燃料噴射ポンプなどのメンテナンスは時間管理と状態管理を併用する。主要部品と重要部位の計測データは決められた様式に整理、蓄積・管理し、機関診断および保全管理に活用する。
 
(3)整備・点検用項目管理
 乗組員が定期的に行なう定められた運転時間毎の整備・点検項目毎の結果を入力し、陸側支援システムが整備点検記録として管理と保存することで機関診断および保全管理に活用する。
 
(4)汚れ等の進行度管理
 潤滑油、冷却清水、燃料油の管理状況および性状をハンディターミナルから入力し、管理と保存することで機関診断および保全管理の支援に活用する。
 
(5)不具合データベース
 整備・点検および長期的損耗進行状況管理の中で機関および周辺機器を含めた多発した故障(破損、異常摩耗等)を蓄積し、今後の設計改善・対策および使用条件の改善に供用する。
 
予備品管理としては;
(6)予備品管理
 船舶に搭載された予備品(法定予備品と船側で追加した予備品)と現状の在庫予備品の数量管理を行なう。発生した不足予備品を必要に応じて効果的に手配することで整備の支援をする。
 
図2.1.3-1 保全管理システムの概念
 
(1)システムの概要
 本システムは、機関部乗組員が携帯型入力端末(以下 ハンディターミナル)の画面に表示される管理・点検内容や管理・点検上有効な諸情報を照合しながら計測結果を入力することにより、機関部乗組員のヒューマンエラー防止と利便性向上が図られることを支援するものである。更に、本システムは、入力された計測結果を自動的にコンピュータ処理し、管理上有効な検索・帳票出力を可能とするとともに、船陸間通信を介して、陸上の診断システムやデータベースにおいてデータを統合処理するなどのデータの再利用を可能にするものである。
(2)システムの機器構成
 本システムの機器構成は、パソコン・ディスプレイ・プリンタの一般的な構成に加えて、ハンディターミナルが構成要素となり、パソコン間での双方向のデータ通信が設定されるものである。図2.1.4-1にシステム機器構成を示す。
 
図2.1.4-1 システムの機器構成
 
(3)システムの機能構成
 ハンディターミナルの入力機能によってインプットされたデータは、データ取り込み機能によって、パソコンヘのデータの取り込みが行われる。取り込まれたデータはパソコンで情報処理され、各種のデータ検索機能と帳票出力・データファイル出力からなる出力機能へ展開される。またパソコンの設定機能によって、ハンディターミナルによる入力内容が任意に設定される。以上のシステムの機能構成図を図2.1.4-2に示す。各機能の具体的な内容は以下の項に示す。
 
図2.1.4-2 システムの機能構成







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