表2.1.1-2 従来方式の機関診断用センサー類
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※印は従来の出力なしのセンサーを出力付センサーに変更したものを表す。
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(2)新規開発センサーによるデータの採取・解析(陸上試験)
陸上試験機関において実施した試験は、長期的な経年変化により発生すると推定される、ライナ、リング摩耗再現試験(2種類の摩耗状態)、プランジャ摩耗再現試験(2種類の摩耗状態)と、突発的に発生すると推定されるノズルチップ噴口閉塞再現試験、を実施した。
試験機関の主要目を表2.1.1-3に、計測負荷点を表2.1.1-4に、実施試験の概要を表2.1.1-5に示す。
表2.1.1-3 試験機関の主要目
機関名称 |
3EL30 |
定格出力 |
661kW |
定格回転速度 |
300min-1 |
シリンダ径 |
300mm |
ストローク |
600mm |
シリンダ数 |
3気筒 |
使用燃料油 |
A重油 |
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表2.1.1-4 陸上試験 計測負荷点
計測点番号 |
負荷率
(%) |
機関出力
(kW) |
回転速度
(min-1) |
1 |
50 |
331 |
238 |
2 |
70 |
463 |
266 |
3 |
75 |
496 |
273 |
4 |
80 |
529 |
278 |
5 |
85 |
562 |
284 |
6 |
60 |
397 |
266 |
7 |
65 |
430 |
273 |
8 |
70 |
463 |
278 |
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図2.1.1-3 陸上試験 計測負荷点
試験負荷
表2.1.1-5 陸上試験の実施内容
試験項目 |
試験内容 |
計測点 |
備考 |
正常時試験 |
全て正常な部品での基本データ採取試験 |
(1)〜(8)点 |
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ライナ・リング
摩耗再現試験 |
ライナ摩耗限界
再現試験 |
(1)〜(8)点 |
リングのT寸法で再現 |
リング摩耗限界
再現試験 |
(3)点 |
リングのT寸法で再現 |
プランジャ摩耗
再現試験 |
プランジャ・バレル隙
(標準隙+5μm) |
(1)〜(8)点 |
プランジャ、バレル
交換基準までの中間隙 |
プランジャ・バレル隙
(標準隙+10μm) |
(3)点 |
プランジャ、バレル
交換基準 |
ノズルチップ
噴口閉塞試験 |
噴口1穴閉塞 |
(3)点 |
ノズルチップ交換基準 |
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(3)新規開発センサーの有効性などの評価
(1)シリンダ内圧力センサー
本センサーは昨年度開発したセンサーをさらに性能の安定性の向上、コストダウンを目的に改良・開発したセンサーで、センサー性能は安定しており、診断に有効なデータが得られた。
しかし、各気筒に装備するため、センサー間の感度、時定数を揃えることが非常に重要である。
時定数は波形の形を決める重要なファクターであり、波形が異なれば、その解析結果である平均有効圧、シリンダ内ガス温度、受熱率などの値に影響し、診断結果にも影響する。
昨年度の1気筒での試験では同じセンサーでの波形の相違で判断したため問題はなかったが、多気筒を同時に計測するために各センサーの感度、時定数を揃える調整に手間取った。
気筒間の差、正常と異常との差が、センサー間のバラツキと同程度であり、センサー個体間のバラツキを抑える改良と簡便な調整手法が必要と思われる。
また、時間経過にともなって時定数、感度が変化し、波形が乱れる現象があり、短時間での調整が必要であったが、この不具合については数回のセンサーの交換、調整で対処した。なお、その測定値の比較を図2.1.1-4、-5および表2.1.1-6、-7に示す。
図2.1.1-5は、センサー取り付け後約2.5ヶ月後のシリンダ内圧の波形であり、現時点では際立った異常は認められない。時定数の遅れが認められ交換したセンサーを陸揚げ後に分解し、センサーの機構部品の接合面をラッピングし再組み立てを行ったところ時定数の遅れは解消された。したがって、時定数の遅れは部品の品質の問題であった。
センサー感度のバラツキについては、同調整ボリュームを多回転式に交換し、微調整が容易に行なえるようにすることで対応した。
本センサーについては、感度、時定数の問題はあったが、原因はセンサー内部部品の品質の不十分さにあり、加工精度、製造上の品質管理を十分行なうことで対応できる。
図2.1.1-4 N丸シリンダ内圧力(調整直後)
シリンダ内圧力 2003年12月2日測定
表2.1.1-6 N丸シリンダ内圧力(調整直後)
Cyl No. |
最高圧力
Pmax MPa |
圧縮圧力
Pcomp MPa |
1 |
11.60 |
6.93 |
2 |
11.70 |
6.93 |
3 |
11.48 |
6.88 |
4 |
11.31 |
6.88 |
5 |
11.50 |
6.85 |
6 |
11.30 |
6.83 |
平均値 |
11.48 |
6.88 |
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図2.1.1-5 N丸シリンダ内圧力(約2ヵ月後)
シリンダ内圧力 2004年2月17日測定
表2.1.1-7 丸シリンダ内圧力(約2ヵ月後)
Cyl No. |
最高圧力
Pmax MPa |
圧縮圧力
Pcomp MPa |
1 |
10.61 |
7.42 |
2 |
10.43 |
7.48 |
3 |
10.38 |
6.97 |
4 |
10.38 |
6.96 |
5 |
11.02 |
7.20 |
6 |
10.97 |
7.15 |
平均値 |
10.63 |
7.20 |
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(2)噴射管内圧力センサー
本センサーは昨年度開発したセンサーで、ひずみゲージ式のため、センサー間の感度調整も問題なく同一化でき、陸上試験においては安定した波形計測ができた。最高圧力値、残圧値も安定しており、診断には問題なく使用できた。
しかし、海上試験において、6個が約600時間(積算回転数で約36万回)程度の使用で破損した。原因調査の結果、高周波の振動加速度による疲労破壊で、センサー内部の配線が断線したためと判明した。予備のセンサーで対応したが、後半は2気筒のみの計測となった。この対策として、内部配線部品の固定方法を改良する必要があった。
本センサーについては不具合原因は特定できており、その対策により実用上問題がないことを確認した。
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