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平成15年10月
 
〜緊急提言〜
子どもを犯罪に巻き込まないための方策
子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会
座長  前田 雅英
 
◎「居場所」作りについて
○中高校生をも対象とする児童館を
 児童館では様々な活動を行うことができ、「居場所」の一つとなり得る。しかし、現在では、児童館は閉館時刻も比較的早く、基本的に小学生等の低年齢児が対象であるし、活動内容からしても中高校生が集う場所とはなっていない。
 現在でも中高校生が運営に参加している児童館があるが、今後、さらに広く中高校生の参加を求め、例えば、開放時間を延長したり、中高校生自身に活動を任せるなどして、中高校生の居場所機能の充実を図ることが必要である。
○学校は「居場所」作りへ積極的な参画を
 子どもが異年齢集団において活動することは、コミュニケーション能力向上のためには不可欠である。放課後、学校を子どもたちの「居場所」として積極的に開放している世田谷区の「新BOP(ボップ=遊びの基地)」、「STEP(ステップ=放課後という空間で様々な挑戦に取り組み、楽しみながら、可能性をみつける)」のような例もあり、このような取組が全都的に広がる必要がある。
○学校の部活動や地域のスポーツクラブの活動強化を
 学校が「居場所」となるために、学校、教育委員会、教員、保護者、PTAは協力して、学校の部活動の一層の強化を図るべきである。また、地域の子ども会や少年野球、サッカー等のスポーツクラプの活動にも、保護者、PTAは協力し、多くの子どもたちの参加を促し、活動を活発化させるべきである。
○「居場所」作りを行っているボランティア団体は協働、連携を
 現在、例えば、渋谷区において、公的施設等を活用して子どもたちが気軽に立ち寄れる場所を用意し、魅力的な活動プログラムを提供するボランティア団体がネットワークを作っており、年間で約100人の大人が延べ1万人以上の子どもの相手をしている。また、子どもと一緒にトイレ掃除を行うことで荒れた学校や問題を抱える子どもを立ち直らせるような活動を日本全国で行っているボランティア団体がある。そのような、地域において「居場所」作り等の活動を行っているボランティア団体は、大きなものから小さなものまで数多くあるが、それぞれの団体は互いのことをあまり知らないし、それぞれが目指しているものが微妙に異なっているために、実際には協働することは少ない。これらの団体が可能な限りにおいて力を合わせれば、大きな動きを生み出すことができる。
○行政はボランティア団体への一層の物理的・経済的支援を
 多くのボランティア団体は任意団体であり、活動の資金や場所を確保するのに大きな苦労をしており、多くの団体では参加者が手弁当で活動を行っている。
 しかしそのようなボランティア団体は地域に密着して、行政や学校ではできない活動を行いながら、小さいものでも実に多くの子どもを対象にした活動を行っている。都や区市町村は、例えば、それら団体の活動を住民に広く紹介し、小中学校や児童館を活動場所として提供し、広報誌代や運営責任者の活動実費について援助し、広く寄付を募るよう働きかけるなどして、団体を支援する必要がある。
○もっと世代間交流の促進を
 子どもと大人が一緒に活動を行う、世代間交流を促進している団体があるが、そのような場には、例えば子ども時代には問題を抱えながらその活動に参加していた者が親となって戻ってくるということもある。そこでは、様々な世代、立場の人たちが一緒に行動することにより、年長者は子どもに経験を伝え、また、年長者も子どもからパソコンの使い方など新しいことを習ったり、子どもの姿を見て自分の子ども時代を振り返ったりすることによって、お互い助け合わなければならないということを学び、規範意識が次第に育っていくことがある。そのような団体がもっと増え、ネットワークが作られるように、学校や都、区市町村は支援すべきである。
 
◎いわゆる「親父の会」について
○都内の父親は「親父の会」をたくさん結成しよう
 問題を抱える子どもを見ると、父親は仕事等に忙しく子どものこと知らず、子どもは父親のことを全く信用していないという父親不在の例や、父親又は母親が子どもの抱える問題に正面から向き合うことのない「親不在」の例が見られる。これは、父親の存在の有無ではなく、例えば、悪いものは悪いと明言する毅然たる態度をとる、いわゆる「父性」の欠如の問題であり、もちろん母子家庭の問題ではない。そうした問題を見た地域の父親が、名称は様々であるがいわゆる「親父の会」を立ち上げ、例えば、学校の校庭でキャンプや花火やバーベキューをやったり、学校で子どもを集めてスポーツ大会をやるなどの活動を行っている例がある。そのような活動を継続的に行っていくうちに、子どもは近所の父親の顔を覚え、近所の大人と子どもが挨拶をし、気を付けあうようになり、同時に親も子どもも、問題のある子どもを皆で支えたり、地域で見知らぬ大人に注意を払うようになる。
○「親父の会」同士でネットワークを作ることに行政は支援を
 既に都内各地でそのような「親父の会」がいくつも発足しているが、それらの会がネットワークを作り、さらに発展していくように、学校や都、区市町村は、それらの会の活動を互いに紹介する場を設け、学校や児童館を活動場所として提供するなどして支援すべきである。
○企業経営者は従業員を地域活動へ参加させよう
 父親が地域の活動に参加しようとしても仕事が忙しくなかなか参加できないという状況がある。企業は社会的存在であり、従業員が子どもに関わる活動に参加できるよう配慮することは企業の社会への貢献の一つであり、経営者の責務であろう。
○職場ごとの「親父の会」を作り、そのネットワーク作りを
 現実的には、多くの父親は地域での活動に参加できておらず、地域に知り合いがいないこともある。それならば普段から見知っている職場の同僚で地域の「親父の会」を作り、それらのネットワークを作ることも一つの方策である。
 
◎「心の東京革命」について
○「心の東京革命」に基づく施策の拡充を
 
「子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会」委員名簿
(敬称略・順不同)
 
○ 東京都立大学法学部教授(刑事法)(座長) 前田雅英
○ 文化女子大学文学部教授(心理学) 野口京子
○ 東海大学教育研究所教授(児童青年精神医学) 山崎晃資
東海大学付属相模中学校高等学校校長
○ 社団法人 東京都小学校PTA協議会顧問 小山洋子
○ 特定非営利活動法人 小田啓二
日本ガーディアン・エンジェルス理事長
○ 弁護士 鈴木政俊
○ 渋谷区長 桑原敏武
○ 東京都福祉局子ども家庭部長 白石 弥生子
○ 東京都生活文化局参事 八木沼 今朝蔵
○ 東京都教育庁指導部長 近藤精一
○ 新宿区立戸塚第一中学校主幹 佐藤一清
○ 警視庁生活安全部生活安全総務課長 小田部 耕治
○ 警視庁生活安全部少年育成課長(第1回) 原 哲也
現・警視庁生活安全部保安課長(第2回オブザーバー)
○ 警視庁生活安全部少年育成課長(第2・第3回) 藤田博之
○ 警視庁生活安全部少年育成課(少年相談担当)石橋昭良
○ 保護司・少年補導員 丸山陽子
○ 中央大学大学院生 隅田勝彦
 
 学校教育に携わっておられる土屋先生のお立場から、いまの矢内さんのお話に対して何かコメントがあれば、お願いします。
 
土屋校長先生
 「おやじの会」、それから「子どもの居場所づくり」ということで国や都が非常に学校を応援してくれるというふうに私は受け止め、非常に心強く思っています。
 学校としては、保護者に「子どもの居場所づくりを」ということでプリントを配ったりして呼びかけをしてきていますが、いま、もう1つ考えていることにつきご説明します。ちょうどいま学校は学校評価といいまして、年度末で1年間の教育計画を振り返って、新年度の計画を立てる時期にあるんです。16年度の計画を立てていく上で、子どもの意識調査を行いました。かなりな項目数を起こして、本校の児童の実態を探りました。
 子ども達は家に帰ってから、あるいは1日のなかでどれぐらい遊んでいるかを調べましたら、大体30分から1時間しか遊んでいないことがわかりました。これは本校の中休みが30分ありますので、そこで目一杯遊んで、30分。あと、家に帰って30分ぐらいしか遊んでいないという実態ですね。
 それから寝る時間が非常に遅いという実態があります。子ども達はそういう遅い時間まで何をして起きているのかというと、大体がテレビゲーム、またはパソコンですね。テレビを見ている時間もそうですが。ということは、子ども達は家のなかにいて外遊びをしない、家庭のなかでテレビやテレビゲームをして過ごしているという結果が出てきました。
 これでは子どもの健全育成はとうていはかれない、「子どもの居場所づくり」ということで私が先生方に提案していこう、また地域や保護者の方に応援をお願いしようと考えているのは、子ども達の「放課後クラブ」というアイデアです。
 「学童クラブ」ではありません。地域にいらっしゃる方々は色々な専門性を持っておられるので、子ども達との関わりで、いまも「土曜広場」というのをやったり、金曜日の中休みには「ハッチールーム」といって子ども達が楽しめるようなことを民生児童委員の方々が中心になって取り組んで下さっていますが、こういうものを放課後の1時間だけでもいいから学校施設を開放して、そこで実施できないかと考えています。
 学校は地域の施設ですので、どんどん地域に開放していくという考えを基本線として持っています。和室というか、畳の部屋みたいなものが1つできましたし、もともとあるランチルームとか家庭科室とか音楽室とか図書室とか、そういうところでいろいろな取り組みができるのではないかと思います。
 あとは地域の方たちで例えば「月1回、こういうことだったらやれますよ」という方がいて下さったら、「何曜日の何時から何時までこういうのがあるから、そこでやってみたい子はいないか」という募集をしていく。囲碁・将棋の講座とか、折り紙だとか、科学実験とかいろいろなことを教えていただける機会を増やしていくと、子どもの居場所も増えるのかなと思います。
 そこにお父さん達、平日が休みのお父さん達は少数かも知れませんが、やって下さる方がいれば、お願いしたい。もちろん土曜日・日曜日でもいいと思いますし、「国や都からこういうのが出ているよ」ということを保護者にも流し、協力依頼のアピールをしていきたいと思っています。







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