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行政からの支援事例
 最後に行政の取り組みですが、文部科学省では平成16年度から3ヶ年事業として70億円の予算で「子どもの居場所づくりプラン」をやろうとしています。詳細は省きますが、東京都としての対応を矢内さんからご説明願います。
 
矢内
 この事業は国の委託事業という形で始める予定ですが、いままでの方式とは少し異なっています。いままではいったん都が受託し、それをまた区市町村に再委託するという流れでやってきましたが、今回は国は都道府県レベルに運営協議会という、これは学校とか行政とかPTAとか青少年関係団体とかそういったものから組織する協議会ですが、これを設置してそこにお金を流す。
 区市町村がやる場合はそこからまた、実行委員会という組織にお金を下ろすという形になります。行政とは別個の民間に近い組織にお金を流すような仕組みで動くようです。その調整をいま、都と国でも行っています。
 そのなかでの大きな特徴は、単に行政だけでなくて、NPOとか民間の関係団体、子どもを育成しようという関係の団体もこの事業に関わっていけるという仕組みができたということで、ある意味で画期的ではないかと思っております。
 
子どもの居場所づくり新プラン地域子ども教室推進事業
(新規)
16年度予定額 7,000百万円
 
1. 事業の要旨
 子どもたちに関わる重大事件の続発など、青少年の問題行動の深刻化や地域や家庭の教育力の低下等の緊急的課題に対応し、未来の日本を創る心豊かでたくましい子どもを社会全体で育むため、学校等を活用して、緊急かつ計画的(3ヵ年計画、平成16年度4,000校)に子どもたちの居場所(活動拠点)を整備し、地域の大人の教育力を結集して、安全管理員・活動アドバイザーとして配置し、子どもたちの放課後や週末におけるスポーツや文化活動などの様々な体験活動や地域住民との交流活動等を支援する。
 
2. 事業の内容
(1)都道府県レベルの運営協議会の設置
 行政関係者、学校教育関係者、PTA関係者、青少年・スポーツ、文化団体関係者、NPO、ボランティア団体関係者などで構成される運営協議会を設置し、都道府県内の居場所づくりの在り方の検討、コーディネーター等の研修会の開催、子どもの居場所づくりに向けた広報活動の推進、事業実施後の検証・評価等を行う。
(2)地域子ども教室の実施
 学校の校庭や教室等に安全・安心して活動できる子どもの居場所(活動拠点)を設け、地域の大人、退職教員、大学生、青少年・社会教育団体関係者等を、安全管理員・活動アドバイザーとして配置し、小・中学生を対象とした、放課後や週末におけるスポーツや文化活動などの様々な体験活動や地域住民との交流活動等を実施する。
(3)子ども居場所づくりコーディネーター等の配置
 市町村レベルにコーディネーター等を配置し、親に対する参加の呼びかけや学校や関係機関・団体との連携協力による人材の確保・登録を行うほか、登録された人材を子どもの居場所へ配置する。
 
3. 所要経費
地域子ども教室推進事業の委託 7,000,150千円
 (1)都道府県レベルの運営協議会の設置  
  47都道府県 × @3,091 145,270千円
 (2)地域子ども教室の実施  
  4,000校 × @1,462 5,848,480千円
 (3)子どもの居場所づくりコーディネーター等の配置  
  3,200市町村 × @315 1,006,400千円
 
子どもの居場所づくり新プラン(仮称)
〜地域の大人たちの力を結集し、
子どもの活動提点を整備〜
(拡大画面:237KB)
 
地域子ども教室推進事業
 
矢内
 次に、都独自の動きということで、少し状況なども含めて報告させていただきます。
 先ほど配りましたが、「子どもが犯罪に巻き込まれないための緊急提言」という報告冊子が、昨年の10月に出されました。
 ご承知のように、渋谷で起きた稲城の小学生の監禁事件をはじめ、子どもに関わるさまざまな問題が起きている現状がありまして、昨年の8月に広島県警の本部長が東京都の第3の副知事に就任し、「安心して暮らせるまちづくり」を目指したさまざまな取り組みを始めております。
 その一環として子どもを犯罪に巻き込まないとか、被害に遭わせないとか、そういったことを中心に、教育委員会だけではなくて、都庁全体として取り組んでいるところです。
 冊子では「子どもの居場所をつくりましょう」ということや、父親が「おやじの会」といった形で子どもの育成に積極的に関わることの提言がなされております。
 特に防犯とか安全の部分でいいますと、平成16年度以降、3カ年計画で、最終的には小学校、中学校、高校全校で「セーフティ教室」と銘打って、退職の警察官等を活用しながら、学校において防犯とか安全とか非行防止等のスクールを、子どもや保護者を対象にしながらやって、その後、地域で子どもをどう見守っていくのかという取り組みを進めていく予定です。
 それからもうひとつ、私どもが事務局をやっております東京都生涯学習審議会が、現在、第5期ですが、次代を担う子どもたちを育成するために教育行政はどうあったらいいかということを審議しているところです。
 そこのなかには、柱が3つありまして、1つは地域とか家庭のほうから学校を支援していくような仕組みづくり、次に学校支援のあり方を、もうひとつはいままでの居場所づくりも含めて、学校外地域での子どもたちの育成をどうすればいいのかというテーマです。
 児童の虐待とか、子育てがうまくいかないとか、さまざまな家庭の問題が出ております。特に家庭教育のあり方については、いままでも学校とか社会教育施設で、家庭教育振興事業他さまざまな取り組みは進めているわけですが、そういうところに来られる保護者とか関係者の方はそれなりの意識があって来ているわけですが、そういうことに参加したほうがいいと思われる家庭には情報がなかなか届きにくいという問題があります。
 こういった問題は、家庭の秘事性ということで、行政が介入する問題ではないわけでして、岸和田の事件でも判るように児童福祉施設とか、児童相談所がなかなか入れないという問題もありますので、教育委員会としてそこに踏み込むことはできないわけです。ただし、例えば「おやじの会」のような取り組み、学校と地域が一緒に関わりながら、少し家庭に対しても働きかけていくような仕組みを何かつくれないかということで、その事業化に向け、来年度からやっていくことを考えております。
 子どもについてはいままでどちらかというと、躾も含めて学校におまかせという雰囲気があって、小学校1年に上がってくる子どもには生活習慣も含めてそういう社会スキルがほとんどできていないのが結構いるそうです。学校の先生はその対応に追われ、そこからもう学級崩壊が生まれてくるような事例もあるということです。
 子どもの成長については、当然、家庭は第1の責任者でありますが、地域もそれを支えて、学校とともに教育活動をしていくような仕組みをぜひつくっていきたいということで進めているところです。そういう意味でも「おやじの会」とか「子どもの居場所をつくる」ということはとても重要なことだと考えております。
 最後に、今日お話を伺っていろいろと感じたことを述べさせていただきます。「学校、あるいは学校が置かれている地域の特性、例えば、社宅が多いため保護者の流動性が高いとか、旧来から住んでいる住民の方が数多くいる地域であるとか、それぞれ事情が違うということで、「おやじの会」を立ち上げていくにも、地域の実情に沿った形でどんな形ならできるのかを良く考えるということ。
 それから、私の同僚が小学校のPTA会長をやっていて「おやじの会」を立ち上げたいと言っていますが、「運営はどうするんだ」「経費はどうするんだ」「何の事業をやるんだ」といったことが先に立って、なかなか前へ進まないといっております。
 やはりこういうことをやるには、キーパーソンがいて、ちょっと背中を押しながら、それには学校の協力も当然なければいけないと思いますが、とりあえず始めてみる。それも本来の目的は子どもたちのためにあるわけですが、まず、お父さん達自身が楽しめることをやろうよということで始めていけばいいと思いました。
 まあ、赤提灯は別にして、お父さん達も地域には居場所がないわけでして、まず自分たちの居場所を、学校を拠点につくっていくことでよい。それから、子ども達と一緒に楽しめる場をつくっていくことを考えながら、最終的には、子ども達のためにみんな協力する。子ども達の楽しむ顔を見れば、お父さん達もとてもやり甲斐を感じるのではないかと思います。







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