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NPO等の協力事例
 「おやじの会」を立ち上げて子ども達の交流をやっていきたいが、きっかけには何がよいか。冬の餅つき大会とか、夏の校庭でのキャンプ等が考えられるが、自分達にはそれ以上の知恵がない。何か他にできないかということで、NPO等の協力を得ることが考えられる。ここでは2つの事例を紹介いたします。
 
<父親サポート関西>
 「父親サポート関西」、科学実験を通して親子がふれあう場を提供するNPO法人です。代表の中原氏は長く企業に勤めておられ、いまコンサルタントをなさっていますが、この方は「社会人の先輩として父親が子どもに伝えることはたくさんある」という考えでやっておられる。親子のコミュニケーションに役立ててほしい、更にはお父さん達に子育ての楽しさを知ってもらう『気づき』の場になってほしいという願いが込められています。
 実際、週末には地域に適当な受け皿が欲しいというニーズから土曜日の科学実験教室は引っ張りだこであると。
 科学実験教室といっても、むずかしい機材を作ったり、使ったりするのではなくて、例えば、紙コップとストローだけでサイフォンの原理を応用した実験を行う。水を一定量入れると、下から水が抜けていく。子ども達にとっては手品みたいなんですね。これだと別にむずかしい機材を使わなくても、お父さん達も少し勉強すればすぐできます。
 中原氏は、お父さん達に「見るだけじゃなく自分たちでやってみて下さい。一緒にやりましょう」と声掛けされます。企業に勤めているお父さん達には科学の好きな方が多いので、自分たちの思いを科学実験教室を通じて子ども達に伝えてほしいと言っておられます。
 
夢を描くひと 第16回
 
プロフィール(なかはらかずふみ)
熊本市生まれ。西宮市在住。ビジネスコンサルタント。主催する異業種ビジネス交流会「楽しい商売研究会」でも、仮説実験とビジネスに役立つ仮説検証の実践を繰り広げている。趣昧は読書。妻と娘2人の4人家族。53歳。
 
 
 
お父さんたちの子育てをサポート
 異業種ビジネス交流会「楽しい商売研究会」の有志たちが、「もっと父親を楽しもう」と始めた、父親たちによる子育て支援団体「父親サポート関西」。
 現在は、大阪や神戸のあちこちで「科学実験とおもちゃ作り教室」を主催。お父さんと子どもが実験を通し、楽しく学びながらふれあう場として大好評です。
 先日「クレオ大阪東」で開かれた「科学実験&おもちゃづくり」講座は、約20組の親子で大にぎわい。講師は、かつては小学校で教鞭をとっていた、仮説実験授業研究会会員の渡辺慶二さん。
 この日のメニューは「ばくはつ・ものづくり」。実験内容をプリントで読んで予測、その後、爆破実験を行いながら、自分の目で確認していきます。フィルムケースにアルコール液を少し入れ、火を近づけると、ふたがポーンと勢いよく飛び、「わーっ」と一斉に歓声があがりました。
 この「科学実験&おもちゃづくり」講座にプランナーとして参画する代表の中原和文さん。子育て支援活動について話します。「学びの楽しさだけでなく、親子参加が基本です。お父さんと子どものコミュニケーションに役立ててほしいですね」。
 
「父親サポート関西」結成までの道のり
 
1981年 長女が小学校低学年のころ、算数につまづいたのをきっかけに、教育に関心を持つ。遠山啓 水道方式、板倉聖宣「仮説実験授業」という本と出会い、わかりやすい教え方があることを知る。「勉強は強いて勉めるもの!」から脱皮し、「本来、勉強は楽しくて仕方がないもの、楽しくない勉強は本物でない!」と実感。
 
1985年 「科学のおっちゃん」になる。「仮説実験授業」の実験授業を実行。神戸の学童保育所で「科学実験・玩具づくり教室」を毎月1回開催。以降、約10年間の継続活動となる。
 
1995年 (株)商売科学研究所所長伊吹卓の「ヒット塾」を受講し、ビジネスにおいても仮説・実験の大切さを学ぶ。このときの修了生メンバーと共に「楽しい商売研究会」を設立。
 
2000年 「楽しい商売研究会」メンバーと教育問題で議論。「父親も仕事ばかりでなく、もっと子育てに参加しよう」という声をきっかけに、有志で「神戸おやじの会」を設立。
 
2002年 会員が増え、活動の場が広がったため「父親サポート関西」と名称を変更。
 
シャボン玉の中にすっぽりと入ってしまった女の子。
きっと一生の思い出に残るほどの体験です。
 
科学実験は子どもの好奇心を広げるきっかけに。
しかも、お父さんと一緒だから感動もひとしおです。
 
 講座では親子が知恵を寄せ合い、正解の数を競い合う場面もあります。普段は忙しくてなかなか交流する時間のない父子が、力を合わせてひとつのことに取り組む貴重な体験。お父さんにも子育ての楽しさを知ってもらう「気づき」の場になります。
 子育てに深く関わるようになったきっかけは、長女・万紀子さんの小学生時代にさかのぼります。算数が苦手だった万紀子さんのために、何とか楽しく学ぶ方法がないかと考えた和文さん。遠山啓さんの『水道方式』、板倉聖宣さんの『仮説実験授業』と出会い、早速、万紀子さんに算数や科学を実証実験。みるみる理解を広めていく万紀子さんに気をよくし、さらに学童保育所にも出向いて、科学実験やおもちゃづくりを楽しむ活動を始めたのです。
 「子どものころから勉強ぎらいでしたが、なぜかぼく自身が面白くてハマっちゃったんですね」と、中原さん。
 メンバーそれぞれが仕事を持っているため、主な活動は週末に限定。学校完全週5日制で求められる「地域の受け皿」というニーズから、土曜日の「科学実験教室」はひっぱりだこ。児童館や学校、公共施設、フリースクールなど、活動の場はどんどん広がっています。
 「子育てにもっと父親が関わることが求められています。社会人の先輩として、得意分野を伸ばし、社会で生かせるように助言する。いろいろな選択肢があることを伝えるのも父親の大切な役目でしょう」。
 
「『いまどきこんなに仲の良い家族はいないよ』なんて、 周りから驚かれてますね」(長女の万紀子さん/左)。 「好きな仕事をして楽しんでいる両親を見て、 私も好きな道に進みました。時間があるときは、 父の実験教室を手伝っています」(次女の由衣さん/右)。
 
 最後に夢を伺いました。「親子実験教室を広げることはもちろん、親子での職場体験や仕事人とのふれあいの場づくりなど、さまざまな企画を考案中。夢は父親自身が、子どもの社会的自立をサポートできるような社会の実現。ぼくはその支援にあたりたいですね。ゆくゆくは、父親による父親の子育て相談などができたらいいですね」。
 科学実験を題材にさまざまな活動を展開し、止まることなく新しいことにチャレンジし続ける中原さん。その飽くなき情熱に感化され、たくさんの親子が元気になるといいですね。
(取材/石井多恵子)
 
お父さんといっしょ







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