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●先行学校から見てのコメント
 
 これまで6校について報告してきましたが、金沢小学校で豊富な経験もお持ちの羽田さん、いまお聞きになったことを踏まえ、いろいろと知恵の部分でぜひアドバイスをお願いします。
 
羽田
 お話聞かせていただいて幾つか良い点があったので、コメントさせていただきたいと思います。最初の小平第八小学校のお話のなかで、土屋先生から青少対と「おやじの会」は違うというご指摘が有りましたが、本当にそのとおりだと思います。これらが同じようなものだと考えてしまうと、方向性が全く違ってしまうかと思います。青少対は青少年健全育成協議会と同じかと思いますが、この会は地域や町会が中心となり、地域内の子供を健全に育てていくことを目指す会であり、主に保護者の父親がかかわることで、学校に通う全ての子供達、および学校自体を良くしていこうとする「おやじの会」とは根本的に違うものだと思います。
 それと、話のなかで主体性を持って芋煮会を開いたという所がありましたが、この主体性というのはとても大切なことですね。何かやるときに人を集めて、ただ「お手伝いだけお願いします」では、参加する人に義務意識が出てきてしまい、楽しさが半減してしまいます。参加する人が主体性を持ってやると、積極性が出てきますし、楽しみもそれだけ増え、「自分たちは、これだけできた」ということを本当に実感できるものです。
 先ほどの砂場の整理に関して、もし可能ならばどなたかに整理の世話人さんという名前で、校長先生と一緒に名前を出していただいて参加者を募り、お父さん達何名かがこの作業の計画等にも一緒に加わっていただき、主体性を持ってある程度やっていただけると、もうそれで「おやじの会」がスタートできるのではないかと思います。
 イベントを行う時、参加する人に主体性を与えたとえ失敗しても、そのようなことは二次的なことで、主体性を持って何かやるということ自体がとても有意義なことだと思います。
 主体性を持ってやったことでもし成功すれば、それが1つの自信にもなって、次は何をやろうかというように積極性が出てきます。もし仮に失敗したとしても、それを少しフォローしてあげたら、次はこうやればうまくいくなと考えて新しい計画がまたどんどん出てくると思います。いずれにしても、お父さん達が主体性を持って自主的に何かやることはとても良いことだと思います。
 
 さて、この事業には、いまいちばん忙しいお父さん達にいかにすれば動いてもえるかという命題があります。このためには、お父さん達が所属している組織、多くは会社だと思いますが、その経営者に十分にこの事業の意義等を理解してもらうことが実はとても大事じゃないかということで、今、財団では「勤労者マルチライフ支援事業」に取り組んでおります。その一環として、ここでは2つの事例をご紹介いたします。
 
<姫路経営者協会>
 ひとつ目は、兵庫県の姫路市にある姫路経営者協会が地元の連合の協力を得、昨年の8月に「親子のふれあいキックオフイベント」と銘打って行ったイベントです。
 姫路にある古い名刹の、圓教寺というお寺でお父さん達と子ども達が一緒になって山のぼりと座禅・写経・雑巾がけ等を体験するという内容でした。
 必ず親子で来て下さいということで、43組の親子が来ておりました。それに企業および労働組合の方がボランティアで参加、全体で130人強が参加した面白いイベントです。
 お父さん達の社会参加には、ストレートには繋がりませんが、お父さん達が忙しいなか、子ども達と非日常の体験を通してふれあうことで、家庭に戻ってそれが話題になり、ひいては子ども達が学校でいろいろな活動をするのをお父さん達に理解をしてもらい、更には「おやじの会」のような活動があれば、そこに参加する、その雰囲気づくり・きっかけづくりに繋がるのではないかと思います。
 実はその背景に、姫路経営者協会自体が子どもの教育を、その本来事業のひとつとして取り組んでいるという事情があります。
 10年、15年後に、この子ども達が地元の企業で就労する場合、挨拶ひとつできない若者が企業に入ってきては困る、そういう意味ではかなり経営者的な色彩が色濃く出ているイベントですが、これも考えようで、そういうなかで、お父さん達が子ども達の問題を通じて社会参加ができる雰囲気づくり・きっかけづくりに繋がるのではないかと思います。
 
 
 
 
 
 圓教寺内の常行堂で座禅体験。阿弥陀様の前で瞑想、戸の締め切られた薄暗い堂内に、時折、僧侶の持つ禅定の音が響く。低学年で30分、高学年で1時間の修行。
 僧侶より、経文の説明を受け、経文をなぞり書き、経文の題目は低学年、高学年で違う。







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