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2. 学校長がリーダーシップを発揮して「おやじの会」を立ち上げた事例
 
校長 土屋隆之
[事例報告]
 
「子どもの居場所」
1 目指す学校 「今日が楽しく明日が待たれる学校」
『はじめに子どもありき』
 学校におけるあらゆる活動の第一義は子どもである。子どもあっての教育であり、学校であり、教職員である。子どもたちが楽しく学ぶことができる学校をつくる。
 楽しい学校をつくることが、いじめ・不登校根絶の第一歩である。
 
『楽しい学校』とは、自分が伸びつづけていることを子ども自身が自覚できる学校である。
 
 
(1)家庭・地域との連携
 学校教育だけでは、子どもは健やかに育たない。
 教育の原点は、家庭にある。家庭が、子どもにとって本当の居場所になっていないと、子どもは安心して生き、安心して学ぶことはできない。
 子どもたちが、健全な大人からしっかり見守られているという安心感をもてることは、子どもが健全に育つ上で非常に大事なことだと考える。
 学校が終わると、子どもたちは、本来最も自分にとって居心地のよい居場所であるべき家庭に戻っていく。しかし、そうでない子どもたちも中にはいる。
 そこで、学校が、そういう子どもたちにとっての心地よい居場所になればいいなあと考えている。放課後だけでなく、土曜日や日曜日も居場所としていくには、学校だけでは無理がある。家庭や地域の支えが必要である。
 例えば、放課後、学校の空き教室を利用して、囲碁や将棋、お茶や生け花、琴などの文化的活動を行う。また、校庭や体育館では、テニスやソフトボール、バレーボールやバスケットボール、また、ゲートボールやペタンクなど高齢者とともにできるスポーツプログラムを用意する。勉強でわからなかった部分について教えてもらうとか、図書室で読書をしたり、読み聞かせをしてもらったりするのもいい。
 このような居場所づくりを進めていくには、どうしても家庭や地域の皆さんの力が必要である。
 学校は、地域の中で育まれてこそよい教育活動ができる。家庭や地域のサポートを受け、地域・社会の未来をになう子どもたちを育てている。家庭・地域とオープンに連携し、「心のふるさと八小」を目指したい。
(2)具体的な取り組み
(1)「はっちールーム」(月2回、第1・3金曜日の中休み)
■オープンスペース(元は昇降口部分)と、ランチルーム、交流室の3ケ所を使って、主に、折り紙・指編み・ぬり絵・けんだま・お手玉・こま・囲碁・将棋・オセロなどの遊びを行っている。民生委員・青少年対策委員会・地域・PTAの方々と交流している。
(2)「みんなでつくるスペース 土ようひろばin八小」(月2回、第2・4土曜日)
■昨年度より開催。子どもの居場所づくり第1弾。さわやか福祉財団、学校勝手連講座の支援をいただき地域の方々を対象にパネルディスカッションを開催。その後、スタッフを募り、平成14年10月より活動開始。年間10数回に渡って、バラエティーに富んだ活動を実施している。本年度の活動内容は別紙参照。
(3)「青少年対策八小地区委員会の活動」(以下、青少対)
■わいわい祭り、夏祭り、クリーン作戦、みんなの音楽会、防災体験、ウォークラリーと豚汁の会、地域交流会というように、年間を通して地域の連携を図る充実した活動を行っている。青少対の活動は、八小の子どもたちの健全育成はもちろんのこと、家庭と家庭を結び、地域の絆を強くするという非常に重要な役割を担っている。地域の教育力の向上に大きく貢献している。
(4)「PTA活動」
■学校と家庭を結ぶ大切なパイプ役である。常任委員を中心に、各種委員会が精力的に活動している。学年PTA活動、広報活動、子どもの安全を見守る地域活動など、母親が中心となって活動を推進している。
(5)「スポーツ少年団」
■土曜日・日曜日を中心に、野球、サッカー、バレーボールに全力投球している子どもたちがいる。その子どもたちを指導してくださっているのは、地域・保護者の方々である。大会でよい成績を取ると、ニコニコしながら校長室に報告に来る子どもたち。その笑顔は輝いている。
■子どもたちは、自分の居場所を求めて、上記のような活動に参加している。この他にも、個人的な取り組みを入れたら、さまざまな居場所を発見していることだろう。(2)の活動立ち上げの原点は、「土曜日の午前中、何もすることがなくて、家でのんびり、ダラダラしている子どもたちの為に、何か居場所をつくってあげられないだろうか。」と、地域の方々と話をしたことだった。その思いは、すぐに地域の方々に通じ、さわやか福祉財団・有馬さんのサポートもあって、思いのほか早く実現することができた。
■今、何故「おやじの会」なのか?これだけ子どもたちの周りに居場所があればいいではないかとも考えられるが、子どもたちは、地域の方々が中心になって行っているものとは、またひと味違う「おやじたち」手づくりの心温まる企画を楽しみにしている。普段見たことのない自分の父親の姿を子どもたちは見たがっている。PTA活動では、母親に背中を押されて出てくる父親。自分の父親が参加しているということのうれしさを子どもは噛み締めている。しかし、そういう子どもたちばかりではない。今度は、1家庭の父親から「地域のおやじ」になって、おやじにしか考えられないような「アイ(愛)ディア」を出し合い、子どもたちの健全育成にあたってもらいたいと考えている。
■11月30日に「校庭の土砂流出防止大作戦」を実施する。「竜のひげ」という植物を植えるという企画をもとに、ボランティアを募っている。そのあとの反省会の席上で、参加してくださった父親に「おやじの会」について提案をする予定である。現在父親の申し込みが26名、母親16名、子どもたち40名。総勢82名プラス職員数名で作業を行うことにしている。
 
 
2 完全学校週5日制と保護者・子どもの意識
 平成14年4月に完全学校週5日制が始まり、1年8ヶ月が経過した。
 文部科学省は、この間、子どもを中心とする地域の新たな教育課題に対応するため、保護者や子どもに対し、完全学校週五日制実施後の日常生活や体験活動等に関する意識や実態を把握し、地域で子どもを育てるための環境の充実に向けた指針を得ることを目的として調査を実施した。
 15年3月、本調査のまとめとして『完全学校週5日制の下での地域の教育力の充実に向けた実態・意識調査』報告が出された。
 この調査結果において興味深いものをいくつか拾い出してみた。
 
【調査対象と回収率】
○全国の公立小学校2年生の保護者 18,393人。回収率78.4%。
○全国の公立小学校3年生・5年生・6年生55,609人とその保護者。回収率、子ども78.0%、保護者78%。
○全国公立中学校2年生・3年生13,986人。回収率82.1%。
○全国の公立全日制高等学校2年生5,625人。回収率88.6%。
 
(1)保護者の意識
(1)図表10、11『子どもの休日の充実度に対する評価』(子どもの休日が充実していると回答した保護者)
○完全学校週5日制の実施前は、6割前後が『そう思う』『どちらかといえばそう思う』と回答しているのに対して、実施後は、5割前後に減っている。また、休日が充実していると考えている保護者は、学年が上がるほど少なくなる傾向がある。(図表10)
○充実度の変化を見てみると、6割前後の保護者が『変わらない』と回答しており、『実施後の方が充実』とした保護者は1割で、『実施前の方が充実』とした保護者は2割程度であった。(図表11)
(2)図表12『休日の充実度に対する評価と完全学校週5日制実施に伴った変化』(%:上位5つ)
○『実施後の方が充実』していると考える保護者群は、「親子で一緒に過ごす時間が増えた」「親子の間の会話が増えた」「生活に時間的なゆとり増えた」「家族そろって食事をすることが増えた」といった変化があったと見ている。
○『実施前の方が充実』していたと考える保護者群は、「テレビやビデオを見る時間が増えたた」「テレビゲームやコンピュータゲームをする時間が増えた」「親子で一緒に過ごす時間が増えた」「夜更かしをしたり朝遅くまで寝ているなど生活習慣が乱れるようになった」といった変化があったと考えている。
(3)図表13『完全学校週5日制に関連した心配や悩み』
○「子どもが何もせずに休日を過ごすことが多い」ことや「有意義な休日の過ごさせ方がわからず悩んでいる」人が、3割強いる反面、「勉強時間が減った」ことや「お金がかかるようになった」ことを心配や悩みとしている人も同数以上いるということが分かった。
 
※このように見ると、保護者にとって完全学校週5日制は充実した効果を表しているとは言えないようである。しかし、子どもの休日の過ごし方に配慮している保護者は、完全学校週5日制実施後の方が、子どもたちは充実した休日を過ごしていると評価していることも分かった。今後は、完全学校週五日制の趣旨について、さらに理解を深めていくとともに、土・日曜日の充実した活動の場を設定していくことが求められていると言えるのではないだろうか。
 
(2)子どもの意識
(1)図表5『ある士曜日の過ごし方』(%:上位5つ)
○土曜日の過ごし方を見ると、共通のパターンがあることが分かる。小学生の場合は、上位3位までが、「テレビやヒデオを見る」「家族や友だちとおしゃべりをする。」「テレビゲームやコンピュータゲームをする」ことが共通しており、家の中で閉じこもって生活している傾向が見られる。
○中・高校生についても同様の傾向が見られる。
(2)図表9-1、9-2『土曜日・日曜日に思うこと(1)(2)』
○「自分の好きなことができて楽しい」「家でゆっくりできてうれしい」の回答が、「よくある」「時々ある」を含めると、およそ75%〜90%となる。
○一方では32%〜37%が「することがなくてつまらない」と答えている。つまり3人に1人は「することがなくてつまらない」思っているわけである。
○また、「学校や家ではできない体験をもっとしてみたい」と思っているのは、小学生では、50%を超え、中・高校生でも40%を超えている。
 
※このように見ると、完全学校週五日制のねらいの一つである「子どもたちに自然体験や社会体験をする機会を増やしたい。」ということについては、現段階では十分に達成できているとは言いがたい。しかし「学校や家ではできない体験をもっとしてみたいと願っている小・中・高校生が、約半数いるということは、今後の活動内容の充実に期待がかかっていると言えるのではないだろうか。
 
平成16年2月21日
各保護者・地域の皆様
小平市立小平第八小学校
校長 土屋隆之
 
「おやじの会」立ち上げに向けて!
 本校でも、裏面にあるような趣旨で「おやじの会」を立ち上げたいと考えております。
 これまでも多くの父親(おやじ)の皆様にご協力をいただいておりますが、今後は、このような形で「地域のおやじ(父親)」として子どもたちとかかわっていただければありがたいと考えております。
 このフォーラムでは、実際に「おやじの会」としてどのような活動をしているのか、取り組んでいる学校の「おやじの会」の代表の方々が実践報告をしてくださいます。
 今後、地域や学校等において、少しでも子どもたちとのかかわりをもってくださることを考えていただける方(父親・おやじ)は、ぜひ時間をおつくりいただきこのフォーラムに参加してみていただきたいと思います。
 そして、ここで学んだことを、ぜひ本校の「おやじの会」立ち上げの時に発揮していただきたいと考えております。
 子どもたちにとっての「心地よい居場所づくり」をしていきたいと思います。どうかご協力くださいますようよろしくお願いいたします。







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