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資料6
 
調査報告書
Bro Axel号とNoordhinder号とのニアミス事故
及びその結果として発生したBro Axel号のミルフォード・ヘイブンでの座礁
 
2002年12月5日
 
海難調査局(MAIB)
 
レポート番号:22/2003
2003年9月
 
結論
 
1 安全問題
ニアミスについて
 
1. ミルフォード・ヘイブンの東西水路でNoordhinder号の船長と航海士がBro Axel号の接近を検知しなかった。
 
2. Noordhinder号の船長が旋回して東西水路に入った。
 
3. 水路における旋回後のNoordhinder号の位置。
 
4. Noordhinder号による航路計画の欠如。
 
5. Bro Axel号の船長がVHF無線でNoordhinder号が自船の北を通過すると聞き間違えた。
 
6. ミルフォード・ヘイブンのポートコントロールの介入がなかった。
 
7. ポートコントロール室に担当官がいなかった。
 
座礁について
 
8. Bro Axel号の船長が港方向に進路を変えた。
 
9. Bro Axel号の船長が右に急旋回をする代わりに、主機で後進操作を行った。
 
10. 船長が自船の緊急対応操作に精通していなかった。
 
11. ミルフォード・ヘイブンの強制水先免除証(PEC)保持者を対象とした緊急対応措置では、シミュレーションを用いた訓練が行われていなかった。
 
2 その他安全問題
 
12. MHPA(ミルフォード・ヘイブン港湾当局)はリスク評価を行い文書によって、ほとんどの安全に関わる問題点を確認している。
 
13. MHPAによる規制措置にもかかわらず、漁船とタンカーのニアミスは後を絶たない。
 
14. 漁船に関する現行の航行許可システムが、ミルフォード・ヘイブン港における運航の安全につながる。
 
15. エスコートタグを必要とする船の制限基準について、リスクを大きく左右する状況を具体的に検討しながら関係者とリスク評価を行うことで、安全な船舶運航が実現する。
 
16. 英国の港においてPEC保持者に緊急対応措置の訓練を施すことが、前向きな安全対策となる。
 
17. Noordhinder号をはじめとする自営船にも何らかの安全管理システムが有効である。
 
18. 水先法(Pilotage Act)の調整を図り、安全のために必要であるとみなされた場合は、一律20m以上の船舶に水先を義務付けることが賢明なアプローチといえる。
 
3 措置
 
1. 事故以来、ミルフォード・ヘイブン港湾当局は、漁船を対象に航行許可システムを導入し(付録8)、全ての漁船に航行許可の取得を義務付けている。許可の取得に先立ち、現在ミルフォード・ヘイブン港湾当局所属の元漁業関係者とブリーフィングを行い、続いて水先人を同乗させて、または護衛船(エスコートタグ)をつけて出港と入港を行い、船長の操船能力を評価する。
 船長の能力が基準を満たせば、固有番号を記した許可証が発行される。固有番号を持つ船長は、夜間に水先人や護衛船の援助なしで出入港を許可される。
 
2. 主席検査官(Chief Inspector of Marine Accidents)は、ミルフォード・ヘイブン港湾当局に書簡を送り、以下の点を勧告した。
 
1. 明確な手順に基づく操船指揮を重点に、具体的なポートコントロール方針を導入する。
・IMOの基準V103に基づくオペレーターの訓練
・介入記録とフィードバックシステム
 
2. エスコートタグが必要な船の制限基準について、リスクを大きく左右する状況を具体的に検討しながら関係者とのリスク評価を行う。
 
3. PEC保持者を対象とした緊急対応措置の訓練にシミュレーションを導入し、水先人の緊急訓練を正式に義務付ける。
 
4. 主席検査官はNoordhinder号の船主ならびに船長に書簡を送り、以下を勧告した。
・Noordhinder号と自ら所有・運航する他の船に何らかの安全管理システムを導入する。
 
5. 主席検査官はBro Axel号の管理者に書簡を送り、以下を勧告した。
・船長と船員に対する緊急対応措置の訓練にシミュレーションを導入する。
 
4 勧告
 
 主席検査官の書簡による勧告に加え、国際海運会議所(The International Chamber of Shipping: ICS)には以下の点を勧告する。
 
1. 船長と船員の操船能力を含む緊急対応訓練に、シミュレーションを導入するよう推進する。
 
 運輸省港湾局(Ports Division of the Department for Transport)には以下を勧告する。
 
2. 強制水先免除証(PEC)を発行する全ての所轄港湾官庁に対し、以下の点について注意喚起を行う。
・緊急対応訓練にシミュレーションを導入する意義を検討し、PEC保持者と水先人に必要な訓練のレベルを特定すること
・PEC保持者と水先人を対象とした緊急対応シミュレーション訓練の修了を1987年の水先法第8条の条件とすること
 
3. PEC保持者と水先人を対象とした緊急対応訓練について、港湾海上保安法(Port Marine Safety Code)を基にガイドラインを発行する。
 
2003年9月 海難調査局







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