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(5)FTA(欠陥樹法)フォールト・ツリー・アナリシス Fault Tree Analysis
 FTAは1961年米国において、宇宙ロケットの安全性解析のため開発された手法であり、その後産業界において機械装置、設備の危険性評価の手法として広く用いられるようになった。
 FTAはシステムの望ましくない事象を頂上事象として、分析作業の出発点にする。この出発点から分析作業を行い、その事象をもたらす可能性のある原因や事象をそれ以上分解できない基本事象まで遡って分析していく。作業は、事象等の状態をすべて「Yes」か「No」か、というように二つの状態のいずれかとして分析を進める。
 頂上事象から基本事象に至る間の論理的関係を事象記号と論理記号を用いてダイアグラム化していく。システムの故障あるいは事故といったシステムにとって望ましくない頂上事象その事象を招く原因となる事象などを事象記号で、また、そうした事象間に存在する因果関係を論理記号を用いて図式化していく。
 
 ETAは、システムの事故を招く原因となる望ましくない初期事象を分析作業の出発点とし、その初期事象が最終的にもたらす結果に至るまでの各段階の問題点を分析する手法である。
 作業は、初期事象を図の左側に置いて出発点とし、論理の展開結果を右側に向かって記載していく。また、図の上部に事象などの関連事項を時系列にしたがって記載する。装置の作動、操作者の行動などについての論理を展開する場合は、正常な作動あるいは適切な行動は図の上部に、誤作動や不適切な対応は図の下部に記載していく。
 
 VTAは従来、主としてハードウエアを対象としていたFault Tree Analysis: FTAなどの分析手法の欠点を補い、事故・事件発生におけるヒューマンファクターを解明するために考案された手法である。
 VTAは時間軸に沿って人間の行動や判断を中心に分析する。通常から逸脱した行動や判断の流れを描き出して、人間行動の背後に潜む問題を追及する簡易性が重視された手法である。即ち、責任所在の追及ではなく、対策指向型の分析手法である。
[具体的な調査の手法]
(1)事故に関与した当事者、関係者、関連事象などの「軸」として設定する。
(2)左端に時間軸をとる。時間の経過は下から上に進む。
(3)変動要因や通常作業(ノード:それぞれの発話や行動や判断など)を四角枠で囲って示す。(変動要因は太い枠にする。)
(4)全般に影響していたと見られる要素は「前提条件」として、図の最下部に記述する。
(5)ノードは簡潔な言葉で表現し、説明が必要な場合には図の右脇に説明欄を設け、ノードに付けた番号の補足説明を記す。
(6)各ノードの関連(連鎖)を直線矢印で結ぶ。
(7)事故の直接的あるいは間接的な要因と考えられるものを「排除ノード」として右肩に○をつける。(通常は変動要因)
(8)ノードの連鎖を断ち切ることによって事故に至らずにすんだと判断される個所(ブレーク)に水平線破線を引く。(通常は通常作業の連鎖)このようにして作成されたVTAを用いて排除ノードの裏側にあるヒューマンファクターを解析し、それに対する多重の再発防止策を検討する。
 
VTAの基本型
 
 CREAMとは、認知システム工学のホルナゲル教授(スウェーデン)による人間の誤りの分析手法(Cognitive Reliability and Error Analysis Method)で、「認知信頼性とエラー分析の方法」と訳されている。
 人が何か過ちを犯してしまった場合に、その周りとのかかわりがどのようなものであったかということを考えていくことが、この手法のメインになっている。
 CREAMでは、「人(一般的な機能、特定の機能)」「テクノロジー(装備、手順、インターフェース)」「組織(組織、コミュニケーション、訓練、周辺環境、労働環境)」を「エラーモード」の生起要因として考える。
 CPC(Common performance conditions)については、9項目((1)組織の適切さ(2)労働環境(3)マンマシーンインターフェース(4)操作手順、プラン(5)同時並行的に行われている作業(6)使える時間(7)1日の時間帯(概日リズム)(8)訓練と経験の適切さ(9)メンバー間の協調作業の質)から洗い出す。
 エラーモードの特定は、次図の基本的な考え方から正しくない行為がどのように顕在化するかについて抽出する。
 
エラーモードの次元
 
CREAMによる分析の手順は、次のとおりである。
 
手順1. 実際に発生した事柄を推論を挟まずに詳細に記述する
手順2. CPC(Common performance conditions)の作成
(作業を行うべき状況がどのような状況であったかということを整理)
手順3. 大きなできごとの時間関係を記述する
(図表形式でイベントを整理)
手順4. 問題と考えられる興味ある行動を全て選出
手順5. 各行動に関してエラーモードを特定
手順6. 各エラーモードについて、関連する結果−原因リンクを見つける
手順7. その事故のヒューマンファクターのモデルとしての結論を出す







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