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1998/10/24 産経新聞朝刊
【主張】オウム事件初死刑 裁判所の判断を支持する
 
 坂本堤弁護士一家三人の殺害と信者殺害の二事件で起訴されたオウム真理教元幹部、岡崎一明被告に東京地裁が二十三日、求刑通り死刑判決を言い渡した。一連のオウム真理教事件で初めての死刑判決である。
 被告の自供で坂本弁護士事件の全容が明らかになったことを自首と認めるかどうか、認めた場合は減刑の対象になるか否か。先に地下鉄サリン事件で無期懲役だった林郁夫被告とのバランスはどうかなど、岡崎被告の量刑をめぐって論議が起きていたが、われわれは今回の死刑判決は妥当と考える。
 判決によると、岡崎被告はオウム真理教に敵対する坂本弁護士を抹殺しようとする教祖に積極的に協力、坂本弁護士のみならず、妻、都子さんまで手にかけ、さらに都子さんが亡くなる間際に発した「子供だけは助けて」との叫びまで無視して夫婦の長男、龍彦ちゃん(一つ)をも殺害、三人別々に山中に埋めたとされている。
 死刑制度があるわが国では、この犯行だけでも死刑は免れないが、さらに教団を脱退しようとした信者一人も殺害している。もっとも論議の的になった「自首」については裁判所も成立を認めたが、同時に「自供の動機は真摯(しんし)な反省からではなく、教団から殺害されることから身を守るという自己保身だった」と認定し減刑対象にはならないとされた。「自分の役割は小さかった」と弁明するなど確かに心からの反省はくみ取れない。
 五月に地下鉄サリン事件の実行行為者でありながら、求刑通り無期懲役の判決を受けた林郁夫受刑者との違いは、オウムの存在の反社会性に気付いてオウム犯罪の全容を自供、それが麻原彰晃被告の逮捕につながり被害の拡大を防いだことがあげられる。
 だが、決定的な差は殺された被害者の遺族の一部があえて死刑を望まない、と証言したのに対し、坂本弁護士の遺族は「死刑のない社会であってほしいが、大切な命を奪った犯人の命だけが法律で守られるのはどうか」と死刑廃止論に疑問を呈し、「極刑を望む」との意思表示をしたことだろう。
 今後の最大の疑問は、国選弁護団の“法廷戦術”もあって裁判が遅々として進まない麻原被告も、いつの日か判決を迎えることだ。その場合、実際には手を下さないが、すべての犯行を指示したとの起訴事実が認定されれば死刑判決しか考えられない。だが、素直に認めれば死刑が確定して執行され、裁判の引き延ばしを図って判決を遅らせればそれだけ確定も遅くなる、というおかしなことだけは科刑の公平性を守るためにも避けねばならない。
 
 
 
 
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