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2003/04/25 産経新聞朝刊
【主張】麻原裁判 死刑以外には考えられぬ
 
 オウム真理教の元代表、麻原彰晃被告(四八)=本名、松本智津夫=の論告求刑公判が二十四日、東京地裁で開かれ、検察側は一連の事件の首謀者は麻原被告と断定、まったく落ち度もない人たちに対する残虐非道な無差別大量殺人は人間性のかけらもなく、その責任は首謀者である麻原被告が最も重い−と論告し、死刑を求刑した。
 麻原被告は平成七年三月の東京地下鉄サリン事件や、松本サリン事件、坂本堤弁護士一家惨殺事件など十三の事件で二十七人の命を奪い(三人は元信者へのリンチ殺人)、五千人以上の人に意識不明や重い後遺症を与えた首謀者として殺人、同未遂罪などで起訴されている。
 麻原被告は公判が始まった早い段階の罪状認否で、殺人未遂事件一件のみ関与を認めただけで、地下鉄サリンなど他の事件は自分は指示しておらず関係がない。また弁護団も、弟子だった教団幹部が勝手に暴走した事件だ、と主張した。
 しかし、すでに一審判決で死刑を言い渡されているかつて“弟子”だった幹部信者の大半が一様に「教団は麻原被告の命令がなければなにもできなかった」と証言しているように、いわゆる麻原被告に対する“外堀”は埋まっている。だとすれば、麻原被告が首謀者だという検察側の論告での認定が覆る可能性は考えられず、求刑は死刑以外には考えられなかった。
 最近、与野党の政治家を含めた「死刑制度の廃止」を求める団体が法相に申し入れを行っているが、法廷にもまともに向き合おうとしない麻原被告に対して死刑以外の求刑をすべきだと考えているのだろうか。平成十二年の刑事訴訟法の改正で被害者・遺族が法廷で意見を述べられるようになり、麻原裁判に出廷した遺族がすべて「極刑」を望んでいる心情は十分知っているはずだ。
 またこの裁判は初公判以来ちょうど七年、二百五十四回目の公判でようやく論告にこぎつけた。十二人の国選弁護人には、これまでに約四億円以上の国費が弁護料として注ぎこまれている。この問題は今後も尾をひくだろう。今国会で審議中の裁判迅速化法案ではどうすれば実効があるかが焦点である。検討すべき課題だろう。
 
 
 
 
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