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2003/05/22 読売新聞夕刊
池田小事件論告求刑 検察側「死刑廃止論は空疎」(解説)
◆無差別殺人に強い姿勢
 付属池田小事件で宅間守被告(39)に死刑を求めた検察側の論告は、死刑廃止論にまで言及し、それを「空疎なもの」と痛烈に批判した。死刑制度の存置か廃止かを巡る論議が長年続く中、法務・検察当局が、これほどの直接的な表現で、死刑が必要だとの考えを法廷で表明するのは異例だ。
 この背景には、被害児童八人の遺族全員が極刑を求めていることに加え、無差別大量殺人事件に対する検察側の強い姿勢が見える。
 先月、麻原彰晃こと松本智津夫被告に死刑を求刑した「地下鉄サリン事件」などと同様、この日の論告でも「早急かつ厳重な処罰が、同種犯行を抑止するためには必要不可欠」と強調した。
 こうしたスタンスを踏まえ、「どうしても負けられない裁判」(大阪地検幹部)と位置づけてきた検察側は、唯一の争点である刑事責任能力について、被告は精神病ではなく人格障害で刑事責任を問えると主張、確実に極刑に持ち込む構えを取ってきた。被告人質問では、被告の反発の態度がその無反省ぶりや過去の数々の反社会的行動を浮き彫りにし、逆に検察側の主張を補強する形になった。
 刑事裁判で、人格障害は刑の減免事由である心神喪失、耗弱に当たらないとする解釈が一般的だ。この事件では、二度の精神鑑定の結論からも、公判はほぼ検察側のもくろみ通りに推移してきたといえる。
 これに対し弁護側は「犯行当時、被告は心神喪失か耗弱状態」との主張を崩していない。多角的な論告の内容に、六月の最終弁論で、どれだけ説得力のある言葉で反論を加えることができるのか。これまでの審理からみて、弁護側が苦しい立場にあることは間違いなさそうだ。
(正岡明)
 
 
 
 
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