「北の国から」などのテレビドラマで知られる脚本家の倉本聰さんは、北海道・富良野で私塾「富良野塾」を開いている。その倉本さんを北海道の職員が訪ね、公共事業のあり方について話し合っていた際に、「時のアセスメント」という言葉が生まれたという。北海道が導入した「時のアセスメント」(時代の変化に即した施策の再評価)は、いったん予算がついたら止まることを知らない公共事業に、「時間」という物差しを当てて事業を継続するかどうかを考え直す制度だ。
民間なら当然の発想も、行政にとっては画期的なことである。北海道では当面、長期間停滞しているダム建設や道路整備など六事業を対象に、一年以内に中止を含めて結論を出すことにしているが、この六事業だけで総額約八百億円の経費節減が可能という。全国の自治体に波及すれば、行財政改革の大きな成果につながるはずだ。
何よりも、時代のニーズに合わなくなった公共事業を計画途中でも中止できるルールづくりが、自治体で始まったことを評価したい。北海道に続いて札幌市が「時のアセス」の導入を決めたほか、埼玉県では中期計画策定の中で、事業の目的に応じて五年を最長とした事業終期を設定するとともに、新規事業についても投資効果を客観的に評価する「事業アセスメント」の導入を検討している。三重県もすべての事業をゼロベースで見直す「事業評価システム」の導入で四百十件に及ぶ事業の廃止を決めた。こうした自主改革の機運の広がりを期待したい。
しかし、公共事業見直しのルールづくりは、国、自治体一体となって取り組むことが必要だ。戦後の食糧難時代に計画された大規模干拓事業や、住民の反対で着工の見通しもないまま多額の調査費を食い続けるダム建設計画など、全国で増殖を続ける“壮大なムダ”はとりわけ、国営事業に多い。
国、地方を合わせた借金総額が五百兆円に迫る中で、政府・与党の財政構造改革会議は、公共事業を来年度予算で七%削減することを決めたが、長期計画の総額は変えず、計画期間を延長することで単年度支出を縮減するというまやかしの改革案では、財政再建は不可能である。
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