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2004/04/11 読売新聞朝刊
[社説]ダム建設 事業費倍増で高まる不信感
 
 大規模な公共事業では、当初計画より事業費が大幅に膨らむケースが多いが、これはその典型的な事例だろう。
 国土交通省が建設中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)と湯西川ダム(栃木県栗山村)のことだ。総事業費が、当初に比べ二倍以上に増えることが、国交省から自治体に示された。
 完成後に水の供給を受ける関東一帯の自治体は、国とダムの建設費用を分け合う契約をしているが、強い不満を示している。事前にほとんど相談もないまま、いきなり負担増を強いられれば、怒るのは当然だ。
 ダムの建設自体については、自治体側は必要だと判断している。管内で水の需要拡大が見込まれるためだ。
 だが、少子高齢化の進展で需要はさほど増えない、という指摘もある。自治体側はもう一度、需要見通しを再検討してはどうか。結果次第で、ダム新設が不要と判断されるケースも出るだろう。
 全国のほかの地域では、自治体が事業費負担を断ったことで、建設が中止されたダムもある。
 ダム建設が不可欠との結論が出た場合でも、国交省が一層のコスト削減に努めるべきなのは、言うまでもない。
 二つのダムの事業費は当初、八ッ場ダムで2110億円、湯西川ダムで880億円とされていた。それが4600億円と1840億円にそれぞれ増える。
 これに応じて、自治体の負担も急増する。八ッ場ダムでは、埼玉県の負担は440億円から950億円に、東京都は400億円から870億円にもなる。
 国交省は、当初の事業費を算定したのは約二十年前で、資材などが値上がりしたうえに消費税も上乗せされ、住民への補償費もかさんだ、と説明している。
 自治体側は、独自に算定基準などを洗い直したが、当初見込みの三倍を超える補償費について疑問視する声が出た。
 実際、八ッ場ダムの場合、補償費は350億円から1240億円に増える。土地の買収交渉などが難航したためと言うが、札束を積んで解決しようとする安易な姿勢が見て取れる。
 国交省に対し、自治体側は現在、コスト削減に加えて工期の厳守、情報公開の徹底を要求している。国交省はこれを真剣に受け止める必要がある。
 中部国際空港の建設工事では、ターミナルビルの設計変更などで、事業費を大幅に減らすことに成功した。
 ダムの場合も、コスト削減の余地は多いはずだ。国交省は工法の改善や入札制度の見直しなど、建設費用の抑制に向けたあらゆる手段を講ずるべきだ。
 
 
 
 
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