日本財団 図書館


8月16日(土)
本日のスケジュール・内容
1)総括ミーティング
2)セブ島観光
3)Farewell Party
 
1)総括ミーティング
 前日、流れとして以下のようにすることを決めた。
 1: 大グループ(全員)で、全体テーマを決める
 2: 小グループ(3グループ)に分かれ、そのテーマについて話し合う
 3: 総括ミーティングの場で、各グループでまとめたものを発表し合い、全体の結論を模索する
 
1: 大グループ(全員)で、全体テーマを決める
 メンバーから下記のようなテーマが出た。
・先進国と途上国について
・私たちには何ができるか
・医療とは何か
・マラボン地区で私たちに何ができるか
・生活の場として途上国はどうか
・援助のあり方(日本人としてできること)
・日本とフィリピンで見たものの比較
・豊かさと貧しさとは何か
・学生としての今、そして将来、それぞれ何ができるか
・人生において何のために働くのか
・自分と国際保健協力とのあり方
・ハンセン病から見た社会福祉の受け皿
・国際協力と国益
・シンボルマークについて
 
 これを集約する形で、全体のテーマとして次の2つを挙げることにした。
【論点I:国際保健協力における援助のあり方】
【論点II:自分は何をできるか】
 
3:総括ミーティングの場で、各グループでまとめたものを発表し合い、全体の結論を模索する
 
【論点I:国際保健協力における援助のあり方】
 
[Group A:倉田班]
援助の目的
・格差をなくす
・国益
・宇宙船地球号の安定化
・健康の改善⇒経済の発展につながる
 
援助のタイプ
・問題が起きる前の予防−魚が住めるような環境を整えること
・急性期の援助・・・魚を与えること
例:医療−JMTDR, MSFのような活動
他−情報収集、インフラ整備、物質提供
・慢性期の援助・・・釣りの仕方
急性期に引き続いた援助
例:日本政府による資金援助
対策(一般的)
・政治の安定
・貧困対策
・経済・産業の発展
・教育の向上
 
援助の問題点
・急性期:行動が遅い
NGO間のなわばり意識
魚を与え続けることは不可能
・慢性期:人材育成が流出してしまう
手間、暇がかかってしまう
日本の世論
ニーズにこたえているかどうか
自国の問題解決が先
 
対策(保健医療分野において)
・物質、資金の援助ではなく、魚としての保健医療
・取りかた−教育
「か(金)き(機械)く(車)」から「け(健康)こ(心)」へ
他の意見としてグループA内で出たもの
・援助以外は公正で対等なビジネスであるべきだ
・NGOへの資金援助をより多く行う
・医療関係者が、国際医療をしやすい環境を整える
 
[Group B:丹藤班]
 
 論点Iを考える中で、次のことが議題にあがった
・援助は相手の国に役に立っているのか?
・援助って必要なのか?
・「幸せ」ってなに??
⇒「幸せ」の基準は難しい
⇒基本的人権を守ってあげることが大事なのでは?
 
援助とは
・GIVE & TAKEであるべきだ
・やっている方の自己満足ではないのか
・援助をしようと思わない
・100%の純度を求めるのはおかしい
・援助を必要としているヒトが救われる形であれば、問題はないのではないか?
・「効果」をあげることが大事なのでは?
・「国益」にこだわるより、対象者が救われるような援助をすればよいのでは。
 
必要な援助=彼らの幸せを増幅させるもの
(例:経済的発展を彼らは求めているのか)
 
他の意見としてグループB内で出たもの
・資本主義との接触が、途上国に不安定化を産む要因になっているのではないか
 
【Group C:水本班】
 
総括ミーティングの様子
 
 論点Iを考える中で、次のことが議題にあがった
 
 国際保健医療とは何なのか
・宗教的な色合いから始まったものもある
例:欧米(キリスト教の教義から)
・社会的な名声を得ようとしているのではないか?
・地域医療の延長線上であるべきだ
 
援助の動機
・国レベル
国益につながるものであっても仕方がない
例:ODAは人道的に立つといっても、戦後賠償の継続的な意味などで国益につながっているのではないか
・個人レベル
個々人の野心から
善の心−崇高な心
好きな気持ち
他の意見としてグループC内で出たもの
・どこまで援助できるのか
 援助をするといっても、それは、自らが今いる地位を脅かすまでには与えない。むしろ、自らが上位の立場にいて、下位の人たちに支えてもらうために、与えるという意味もあるのではないか。
・絶対的な「善」はありえないのではないか?
 その対象者のことを本当に思いやって、「こころ」を届けるのは難しい
 
【質疑応答】
 論点1についての各班の発表を受けて、全体の質疑応答に入った。
 
   質疑1:「格差をなくす」目的は、全員が平等になることを求めてなのか?
   応答1:それを求めて援助はするが、結果的に平等になるのは難しいのではないか。
   質疑2:貧富の差の是正のために国は動いているのか?
   応答2:最低ラインで生活をしている人たちに主眼をおいて、援助をしていると思うが、本来の目的は、貧富の差の是正ではないのではないか。
 
【アドバイス】
 指導専門家の吉川先生から、対象を絞った具体的な話を進めたほうがわかりやすいのではないかというアドバイスを受け、自分が実際に国際協力の分野にどう関わっていこうと思っているのかという将来のイメージについて述べていくことになった。
 
【論点II:自分は何をできるか】
七條(セブン)
・国際交流をしたい ⇒ 医師像
・現地のヒトに還元できるシステムを作ってほしい
・環境、労働条件を整えてほしい
 
藤川(アイチャン)
・国際協力に活かす為の経験をつまなければいけない
⇒海外にいるということは関係ない
・長い目で見て、将来活かしていこう
 
馳(リョウタ)
・専門性をもった職に就きたい
・医学部=医者養成学校の構図を脱却してもっと幅広い知識を学びたい
・このような機会を広めていくことで、みんなの関心を高める努力も必要
 
是永(ヨウコ)
・マネージメント能力が必要
・もしくは、専門性を身につけてスキルアップしたい
 
串間(クッシー)
・看護学部の私には、セブンとは手段と目的が別
・対象となる人が好きで関心があるがゆえに、自分のルーツである土台を固めようと思う。
 
板谷(イタリアン)
・必要とされる場所に行きたい(その場として国際保健)
・専門性を身につけたい
・ステップアップして行きたい
 
武山(キョキート)
・「国際協力の手段として医者を選んだ」と思っていた
・相手に喜んでもらうことが大事
⇒役に立てればそこでいい(日本国内でも)
・現場を見てみようと思う
 
倉田(クラッツ)
・視野を広く持とうと思う
・パースペクティブを持つことが大事だと思った
 
鶴岡(ツルベェ)
・自分の幸せをまず考えたい
・加藤先生のスタイルが印象的
・WHOと現場の間のJICAが職場として適当だと考えた。
・「医学が楽しいと思うのは当たり前。」2年間は業務として追われるのではなく、視野を広げていけたら、と思う。
・今回は、その契機となった。
 
石岡(イッシー)
・個々人として、医学的な専門性を身につけて一人前になるべき
・一人前にならなければ、役割を果たせないのではないか
 
小橋(コパ):個人的な感想
・国際保健にはあまりこだわらなく、1つのフィールドとして捉えている。国外、国内の違いはない。今回の機会は、改めて考え直す契機となる。さわりしか、まだ知らない。
・これからもここで会った仲間とは、議論していく仲間であり、一生の仲間でいたい。
 
喜多(キティ)
・国際保健分野に関しては、耳年増になってしまっているが、リフレクションなどでのメンバーの考え方が一番刺激的だった。
・素直な疑問を聞いて、考えていない、答えを持っていなかった点が多々あった。
 そういう点で今回は良かった。
・今回は、ディスカッションができるいい仲間にめぐり合えた貴重な機会
・これからそれぞれの道に進むと思うけど、この関係を続けられたらと思う。
 
丹藤(タトゥ)
・行政に関する分野に関わろうと思っていた。
・国際保健は、保健行政の一部分として捉えていた。
・NGOに関わり、下から援助に携わっているヒトと会って、これから先、そういう道に進む時に、違った視点を持てる機会となった。
・皆とこれからも語り合っていきたいと思う
 
水本(KJ)
・フィールドが好きで、人とじかに向き合っていくのが好きだ。ゆえに、マジョリティを対象にしたアプローチ方法をとりたいと思う。
・向かう先は定まっていないが、その折々、想う方向に進んでいくつもりである。
・生涯の知人を得られた
 
菅野(シャチョウ):指導専門家
・一つ一つの意味を考えることが大事
・ヒトと付き合わなければならない(相手側の立場への理解が必要)
・笹川記念保健協力財団の好意で成り立っているツアーであり、「好意」であることの意味を考えて下さい
・「残るもの」を各自で考えてください
 
吉川(キッチー):指導専門家
・今回のプログラムを通じて得られたものは、多かったと思うが、それをゆっくり消化していって欲しい
 
【最後に】
 「国際」や「援助」という大きな枠組みの中で議論を進めていくうちに、私たちは方向を見失っていた。しかし、その中で、「援助は相手の役に立つべきもの」「どこまで与えられるのか」という意見に代表される「相手」、そして「自分」という個人に焦点を合わせる大事さに私たちは気付いた。タイムオーバーになり議論の続きは一部夜のリフレクションに持ち越されたが、そうして、迷子になってもがき、手探りながら問いを求めた姿こそ、今の自分たちを表すものであり、今回の私たちの総決算なのではないかと思う。
(文責:水本憲治)
 
2)セブ島観光
 総括ミーティングを終えた私たちは、フィリピン第3の都市であり、フィリピン最古の都市とも言われるセブ島を、Mrs. Limの案内のもと観光した。サントニーニョ教会やマゼランクロスに代表される名所・旧跡を訪れその歴史に触れた他、人気のあるビーチにも立ち寄り、最後の午後を満喫した。
 
マゼランクロス
 
3)Farewell Party
 論点IIの「自分が何をできるのか」について、総括ミーティング時の時間的制限から発言できなかったメンバーが順次発言し、その後、マジックや物まねなどの出し物をしながら話に花を咲かせた。
 
8月16日 今日のひとこと
 
藤川:国際保健、国際協力、公衆衛生についてじっくり考えることのできた旅でした。人生のうちで今やるべき事、将来やるべき事がよりはっきりと分かってきたような気がします。本当にどうもありがとう。
板谷:みんなイタリアンはおいしかったかな?あたしも美味しい存在になるぞ〜。
倉田:これだけたくさんの人、しかも個性の強いやつばっかり集まっているんだから意見がまとまるわけない。結局、それぞれ個人が思う道へ進む、っていうのが総括ミーティングの結論になったわけだが。これからもみんなでなんらかのつながりがあればいいね。
七條:観光地ほど、物乞いの仕事をする子供たちが多くて複雑だねぇ・・・
丹藤:今日で最後です。今から6時間後にはもう日本への飛行機に乗っているとは。寂しくなりますが、ここで得た仲間はこれからもずっと友だちとして、意見をぶつけ合ったりなぐさめあったりする関係でありたいと思います。
鶴岡:総括ミーティング(テーブルの段差に注意!)。プカーっと浮いたプール。ビーチバレー。マッハshopping。イタリアン(食べ物の方)。最後のミーティング。えびの恐怖。今日も非常に濃厚でした。これも色んな人にお世話していただいての一日。感謝感謝。
喜多:時のたつ速さにあらためて驚く。フィリピンで見たものをどれだけ咀嚼できるだろうか。
小橋:今日までみんなありがとう。本当にたくさんのことを考える旅でした。それに加え自分の弱さもたくさん見えた。反省の連続でした。
是永:密度の濃い10日間だったので、初日が遥か遠くに感じられます。
 :せっかくまとまりが出てきたのにもう明日でお別れになると思うと悲しいね。みんな本当にどうもありがとう。出発直前になってお腹が痛くなってきた。犯人はあの海老??
水本:スケジュールを終え、やっと自分らしくなれたのかも。もっと早くにその自然さがあったら良かったのにな。
串間:自分のルーツとは何か、を常に追い続けた上での自分の幸せ、自分と関わる人への関心を持っていきたいです。このような方向へまっすぐに行けるようになったのもフェローでの経験、人との出会いのおかげです。ありがとう。
武山:これこそセブ!な海の青さにMrs. Limとの語らい。ほんわかのんびり幸せなオフ日でした。
石岡:花売り娘から1環の花をもらった。小さく白い花・・・日を過ぎても香りが漂って消えない。とてもいいにおいである。
 
8月17日(日)
本日のスケジュール・内容
1)フィリピン出国
2)日本帰国
 
1)フィリピン出国
 セブから、マニラ経由で帰国するため、ホテルのロビーには午前3時半集合の予定だった。少々遅刻してロビーに行ってみると全員そろっていなかった。なんだか、慌ただしい。メンバーのうち二人が体調を崩し一人は動けないらしいと知った。Mrs. Limも空港まで見送ろうとホテルまで来ていてくれた。緊迫した雰囲気の中、動けないメンバーと吉川先生、泉さんがホテルに残り、他は先に空港へ行くことになった。落ち着かない気分でセブの空港につくと、彼らもホテルを発ったという連絡。みんなが、ほっとした。
 マニラで出国手続きを済ませたあとは、残ったフィリピンペソを使い果たすために免税店に行ったメンバーが多かった。なぜかフィリピンでゴディバのチョコレートを買った者もいた。
 
2)日本帰国・解散
 朝はどうなることかと思ったが、全員で無事(?)帰国できた。写真を撮ったり、アドレスを教えあったりして、それぞれの帰路についた。
 
成田空港にてお別れ







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION