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8月14日(木)
本日のスケジュール・内容
1)Department of Health(DOH)Region VII Office
2)Cebu City Health Office
3)Lapulapu City Health Office
 
1)Department of Health(DOH)Region VII Office
 バスでDOH Region VII Officeへ移動。この、保健省のRegion VII地域事務所では、フィリピンのCentral Visayas地域(Bohol、Cebu、Negros Oriental and Siquijorの4州)人口約600万人をカバーしている。DOHの果たす役割について、地域局長のDr. Rosario Benabayeに説明を受ける。1991年にLocal Government Code(LGC)が施行されて以来、中央政府直属の機関であるDOHは以下の役割を担当している。
・Public Health
 Child Health, Women's Health, TB, Rabies, Health Promotion(tobacco, diet)
・Hospital
 CPG, Fiscal Autonomy
・Local Health Systems
 ILHZ, Sentrong Sigla
・Health Regulation
 Drug Quality, Equipment Standardization
 LGCの施行後、地方の特徴に合わせた保健行政を行いやすくなった反面、地域の経済格差の影響が一段と大きくなったそうである。財政的に豊かな地方は保健充実のために高額の予算をあてることできるが、貧しい地方にはそのような余裕はないからである。また、地域の保健行政が市長の興味によって偏ったものになるといった傾向もあるそうだ。次の選挙を見据えた予算配分を行う結果、保健行政がなおざりになるという傾向も少なからず見受けられるらしい。
 このRegional Officeが進めているプログラムにはJICAが資金、技術提供の両面から多大な援助を行っており、実際我々が見学した培養検査のためのlaboratoryには、日本製の顕微鏡がずらりと並んでいた。この施設では、JICAの援助による結核制圧プロジェクトが行われており、laboratoryは検査技師養成の目的にも使用されている。この施設で訓練された検査技師はCentral Visayas地域内で活躍しているそうだ。現地の人材を教育して、最終的に自立できるような形で協力を行っていることは理想的な援助のあり方を体現していると感じた。
 
2)Cebu City Health Office
 次に我々はCebu City Health Officeを訪問した。セブ州は1,172バランガイ、48自治体と5つの市(Cebu, Danao, Lapulapu, Mandaue, Toledo)からなる。この施設はCebu Cityの感染症対策の中枢として機能している。フィリピンでは売春が違法であるにも関わらず広く横行しており、AIDSを始めとしたSexually Transmitted Diseases(STD)の感染予防が急務となっている。フィリピン国内のコンドームの使用率は低く、そのこともSTDの感染拡大の原因となっている。ちなみに1989年以降に報告されたHIV陽性患者の数は56人だそうだ。売春が実質的に受け入れられているにも関わらず、合法にできない背景にはカトリック教会の強い影響力があるらしい。人工妊娠中絶が法律で認められていないことや義務教育で性教育を行うことに反対する意見が多いことも宗教的な理由によるところが大きいそうだ。この地区では売春婦を登録制にして一週間に一度のhealth examinationを義務付けている。検査には一回につき50ペソの費用が掛かるが、政府が35ペソを負担し、自己負担額は15ペソに抑えられている。一日に訪れる患者の数はおよそ200人で、実際我々が施設を見学すると、診察室の前には診察を待つ人々の長い列が見られた。この施設ではSTD以外にも、雨季に頻繁に発生するデング熱を始めとした他の感染症対策も積極的に行っているそうである。
(文責:馳 亮太)
 
3)Lapulapu City Health Office
 午後はLapulapu City Health Officeを訪問した。Lapulapu Cityは人口30万人を抱える、地元の若者のデートスポットとしても有名な町らしい。こちらでは一般市民を対象にしたレクチャーがあるというので参加させていただいた。タイトルはFeeding Programというもので、乳幼児栄養についての教育を地域住民に行っていた。3歳くらいまでの子供とそのお母さん方が100人近く集まって、熱心にレクチャーに聞き入っていた。参加は自由だが、栄養失調の乳幼児がいる家庭はヘルスワーカーが把握しており、積極的に参加するよう呼びかけに努めているとのことだった。講義の内容は、鉄分やヨード、ビタミンAなど幼児期に不足しがちな栄養素について、その欠乏時の症状や摂取方法などを黒板を使って行っていた。このようなレクチャープログラムは月曜から金曜まで毎日行われているそうで、隣に座らせてもらった現地のお母さんにどのくらい参加しているのか尋ねたところ、「毎日来てるわよ」とのことだった。レクチャー以外に、その場では、実際に乳幼児に適した栄養バランスの食事を支給しており、多くの参加者はそれを目的としているとのことだったが、子供たちの栄養改善が重要なので、それでも良いとのことだった。プログラムに参加させてもらったお礼に、フェロー全員で「上を向いて歩こう」の歌をプレゼントした。
 
Feeding Program
 
Health office内の分娩室
 
 その後、施設の中を見学した。この施設の周辺の地図があり、家1軒1軒に色とりどりのシールが貼られていた。これはヘルスワーカーが家を1軒1軒まわって、家族にデング熱や麻疹、水痘の患者がいるかを調べて結果を表示したものだという。すべて手作りであった。
(文責:七條光市)
 
8月14日 今日のひとこと
 
藤川:今日のドラッグストアでは忘れられない一日になりました。セブ島はマニラとは違う開放感があるね。
板谷:日程の残りが少なくなってきた。あたしはこれでいいのか?とふと思った。
倉田:疲れているから思考できないのか、もともと思考能力がないのか。反省の日々。そして優柔不断なくせに軽はずみで行動してしまう自分。セブで嫌な自分を再認識させられた。
七條:今日、デパートでファミコンをしました。微妙にキャラが違ってて受けました。
丹藤:リゾートホテルのとなりにスラム。違和感を覚えるのは自分が異邦人だからなのかな。国際援助なんて、結局は相手に自己を投影させて援助して、自己満足してるだけだって観点も忘れちゃいけないと思いました。
鶴岡:時間が経つのは早い。
喜多:リゾートと社会問題のコントラストがすごい。
小橋:白い砂浜、青い空。高級ホテルリゾート。今日見てきたセブ市の病院やバランガイヘルスセンターの現実との大きなギャップ。富める者とそうでないものの大きな格差。
是永:分娩室がショックでした。
 :はじめてのゆっくりとした1日だった。
水本:何の為に写真をとんの?あなたの記念のため?報告書のため?そんなんより撮られる側の人たちの心の方が大切じゃない?彼らは自己満の為の被写体じゃなくて、人なんじゃないの?
串間:栄養教育プログラムの時、お母さんと子供の表情がなかったように感じた。でも私たちが歌をうたったとき個人的に話したときに、少し笑顔が見られたのは安心した。笑顔は重要。
武山:某お姉さま方とembarrassingな夜をすごし楽しかったです。忘れません。
石岡:セブでのスケジュールをコーディネートしてくださったDOHのDr. Kintanarはコックさん、運転手さんとハウスメイド数名を抱えている。彼女曰く、キャリアウーマンが安心して仕事を続け、また家庭においても秩序を保つためにはこのようなサポートシステムが有効であるという。感心。







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