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8月11日(月)
本日のスケジュール・内容
1)WHO西太平洋地域事務局訪問・研修
2)学生主催懇親会
 
1)WHO西太平洋地域事務局訪問・研修
 
7:45〜8:00 Orientation and Guideline
Dr.H.Inoue, Medical Officer, Programme on Technology Transfer
 
 まず初めに、井上先生から本日の講義予定とWHOの組織についての説明があった。講義をしていただく方々がどういう立場にいて、どのような視点をもって問題に取り組んでいるのかを考えながら話を聞くよう、アドバイスをいただいた。
 また、国際社会でのマナーとして、講義を受けた際には、講義終了より1秒以内に質問をするのが礼儀であるということや、質問する際にはまず自己紹介を行い、演者への謝辞を述べてから質問を切り出すといったことを教わった。
 
8:00〜8:30 Mechanism of WHO/WPRO and Its' Role in the Improvement of Public Health
Dr.Richard Nesbit, Director, Programme Management
 
 WHOの目標はすべての人々が高い健康レベルを得られるようにすることである。
 現在6地域、191カ国で構成されている。本部はスイスである。
 WHOの機能は世界健康事業を指揮しコーディネートすることにある。
・政策をはっきり示す
・情報を管理する
・技術や政策のサポートをする
・国家や世界の協力関係を推進する
・基準やスタンダードを設定する
 
8:30〜9:00 Sexually Transmitted Diseases including HIV/AIDS
Dr. B. Fabre-Teste, Regional Adviser, Sexually Transmitted Diseases including HIV/AIDS
 
 通常の男性・女性・子供の関係にリスクの高い人々(売春婦、男性同性愛者、麻薬常用者)が関わることによってHIV感染が広がっている。コンドームの普及を進めることが急務である。
「どのように性問題に対する教育を進めているのか」
 WHO単独ではなく、ユニセフやユネスコと協力して、学校に通う子供たちに教育を行っている。またメディアの活用も行っている。学校に行けない子供たちに対する教育をどうするかが問題となっている。
「母子感染の防ぎ方にはどのような戦略があるか」
 WHOの方針は、HIV陽性のすべての女性に薬物療法を行うことによって、母体血中ウイルス量を減少させることである。また、子供に対しては学校などで検査を行い感染の有無をチェックするなどしている。とにかく大事なのは、すべての人をチェックできるネットワークを形成することである。
「教育は大事だが難しい。コンドーム使用の普及に成功した例はあるのか」
 カンボジアとタイでは効果的であったといえる。しかし、どの国も個々に事情が異なるため、同じようにあてはめることはできない。
 
9:00〜9:30 Expanded Programme on Immunization
Mr. H. Hiraoka, Technical Officer, Expanded Programme on Immunization
 2000年ポリオ根絶達成の過程と、西太平洋地域でのこれからのチャレンジについての話を伺った。
「紛争地域における予防接種活動はどうなっているのか?」
 ミンダナオでは2001〜2002ポリオキャンペーンの期間だけ、紛争をやめるよう調停を結ぶということがあった。
「予防接種の重要性をわかってもらうためになにかやっているのか?」
 母親向けのパンフレットを製作したり、テレビやラジオを使って広告している。
(文責:七條光市)
9:30〜10:00 COFFEE BREAK
 
10:00〜13:00 WPRO Focuses and Policies
Dr. Shigeru Omi, Regional Director
 始めに学生からの質問を受け付け、それに答える形でお話くださった。また、先生ご自身の経歴や人生の先輩としてのアドバイスなど様々なお話しをしていただいた。
 学生からの質問をまとめると、大きく次の2種類のものがあった。
(1)将来国際保健に関わる仕事をするために、今身に付けておくべきことは何か。
(2)医療関係者である前に一人の人間として何を大事にしていくべきか。
 
(1)将来国際保健に関わる仕事をするために、今身に付けておくべきことは何か。
〜前提として国際保健が好きであること〜
 本当に好きなことでないと上手くいかない。貧しい人を救いたい、病気の人を助けるためだという理由も大事だが、それだけで無理をして自分を犠牲にしてまで国際保健にたずさわることは、長続きしないだろうし偽善に陥る恐れもある。自分を幸せにできない人は他人を幸せにはできないのである。また、人は好きなことで一番成果が出るようにできているものであり、好きなことを極限までやるべきである。極限までやれば自分というものが見えてくる。
 
〜広い視野(perspective)を持つ〜
 リーダーとして仕事をしたいのであれば、偏った物の見方に固執するのではなく物事を大きな視野に入れることが大切である(put things in perspective)。組織をまとめる上では柔軟に問題に対応する必要があるが、その時にもこの考えは役立つ。
 
〜人間関係を大切にする〜
 WHOで大事なことは、同じように他の社会でも大事である。日本の病院で上手くいかなかったからといって、WHOへの転職を考える人がいるが、それは間違いである。どこで働くにしても、自分が仕事ができているのは、周りの人が手伝ってくれているからだということを知らなくてはいけない。
 
〜世の中全体のことに興味をもつ〜
 国際的センスを身に付けるためには、普段から世の中のことに興味を持つことが大事である。多様な価値観を知ることにもつながるし、世界を知ることで逆に日本を知ることもできる。そのためにも語学力を身に付けることは役に立つであろう。
 
(2)医療関係者である前に一人の人間として何を大事にしていくべきか。
〜問題解決能力を持つ〜
 問題は解決するために存在する。その解決方法は、実はそれまでの自分の生き方の中にある。真剣に生きていれば、なんとなく答えは出てくるものだ。真実はすべて現実となって現れてくる。
 
〜自分との対話を怠らない〜
 一日一回でも立ち止まって自分の生きる意味を考えてみる。物事を論理的に大きな枠組みの中で考える癖がつくだろうし、自分自身を公正に判断することができるようになる。自分自身を知るということは自分の適正を知ることにもつながるから、仕事も含めて将来自分のやるべきことも見えてくる。
 
〜すべての事にはやるべき時と方法がある〜
 物事はすべて自分の思いどおりにいくはずがなく、わがままが通らないことが多々ある。やるべき時と手段を選べば必ずよい方向に向かうものである。その時と方法を見つけるのが我々の使命だ。
 
尾身先生の講義
 
 先生のお話は国際保健に興味のある者にとって非常に価値あるもので、将来へのやる気と自信を持つとともに今後の方針を決める上でとても役立つことと思う。将来、私たちがどのような分野の仕事に就くことになろうとも、参考になるであろう非常に興味深いお話であった。尾身先生がこのような貴重なお話をできるのは、先生自身が「自分の一番好きなことを極める」ということを実践されているからではないだろうか。
 
13:00〜13:30 Lunch
 
13:00〜13:30 Noncommunicable Diseases
Dr. G. Galea, Regional Advisor, Noncommunicable Diseases
 生活習慣病には、虚血性心疾患、脳卒中、癌、慢性肺疾患、糖尿病など様々な疾患があり、発展途上国では死因の80%以上を生活習慣病が占めているという。このことは見逃すことのできない現実であるし、問題点を知り解決策を探り行動に移していくことが大切である。
 日本でも大きな問題となっており、これからも患者数が増えていくであろうと言われている糖尿病を例に挙げる。
 
目標
・一次予防・・・発症を予防する、もしくは遅らせること。
・二次予防・・・罹患患者の症状の進行を予防、もしくは遅らせる。また、合併症を予防すること。
・システム作り・・・一次・二次予防を維持する国家的なヘルスケアシステムの構築。
 
対策
・WHOによる生活習慣病の看視
・リスクアセスメントとプログラムの影響力の評価
 
具体策
・糖尿病に関する国民教育
・WHOによる糖尿病対策のガイドライン作成
・新しいプロジェクトを立ち上げ実行する
・ヘルスセンターの整備と職員の養成
・ケースコントロールを慎重に増やし正確な統計をとる
 
生活習慣病全体に対する打開策
・国家的政策や法律制定(禁煙、ダイエット、運動など)
・医療的介入の強化(ガイドライン、クリニックなど)
・既存のプログラムの看視と見直し
・地域に根ざしたプログラムの実行(教育、カウンセリングなど)







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