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■当日の様子■
[南勢町から海山町まで]
 南勢町にある志摩ヨットハーバーは地域で数少ないマリーナのひとつである。ここを「海の駅」という概念で陸と海の接点となる交流拠点と位置づけ、海交流のベースキャンプづくりを行っている。10月24日、ここで交流会を開催し、翌日の25日に当ヨットハーバーを出発した。
 五箇所湾を出て、できるだけ沿岸沿いを航行し、地域の様子を海から眺めてみることにした。この地域は海抜0メートルから400メートルまで約20kmしかない。沿岸部はせりたった岩肌が見えるリアス式海岸である。海から眺めてみると人を寄せ付けない自然の厳しさを感じる。その昔、この地域には九鬼水軍という海賊がいて、リアス式海岸の地形を利用した悪行をしていたと聞いたことがある。実際にヨットで渡ってみるとその理由もよくわかる。入り組んだ多くの湾から所々見え隠れする集落があるが、海から来た人々はきっとこの地域には人が住んでいないのではないかと勘違いするだろう。そんなことに思いをよせながらヨットは帆走でゆっくりと熊野灘を渡った。
 いつまでも続くリアス式海岸の風景だが、微妙に変わってゆく海岸線の様子を見ていると陸からは想像も出来ない町々の特徴があるのに気づく。「海岸ウォッチング」としても立派な観光になりそうだ。こんなに陸に近いところを走っていても人工物の存在を感じない不思議な様相である。
 南勢町を出発して約3時間、ヨットは東紀州地域に入った。紀伊長島町あたりから、渡船で渡してもらった釣り人が岩釣りを楽しんでいる光景を見ることが出来る。この辺りは波で削られた穴があちらこちらに空いている。宝探しでもできそうなくらいとてもユニークな地形である。
 海山町まで来ると沢山の漁船を見ることができる。この辺りは漁業が盛んな地域であり、伊勢志摩地域と決定的に異なる雰囲気であることがわかる。湾内に入るとさらに漁船の数が多くなり、まさに港町に来たという印象である。湾内に入ってから海山町の引本浦までさらに1時間、かなり入り組んだところに港があるのだ。間もなくヨットの帆を降ろしてゆっくりと航行した。なにか場違いなところに来たのではないかという気持ちさえ抱かせる。
 引本浦の岸壁には、海山町の方が手を振って待っていた。予定より1時間以上遅れて到着した。ヨットを岸壁につけてひとまず上陸をした。一旦、海山町のキャンプ場まで車で送ってもらい、交流会の準備をしてもらった。その間、希望者をヨットに乗せてさらに尾鷲湾を一周した。
 
交流会(志摩ヨットハーバー)
 
[海山町から尾鷲湾一周]
 日も傾きかけたころ、海山町の方を乗せて尾鷲まで航行した。海山町の方は頻繁に船にのって海を体験している・・・というのが我々の印象である。しかし、地元の人でも船に乗って自分の町を海から眺める機会がないという。しかも東紀州でヨットを乗っている人は少ないので、ヨットに乗る機会はめったにないという。
 海山を出発して約2時間あまりでヨットは戻ってきた。その後はキャンプ場に行って交流会をした。休みに猟をしている役場職員の方が、猪と鹿の肉を持参し鍋をふるまってくれた。わいわいと話しながら今日の体験談について語り合ったが、海山町の方が「ヨットに乗って海から自分の町を眺めると考え深いものがあった」という言葉が一番印象に残っている。参加者たちからも東紀州と伊勢志摩の海交流はとても大事であるという声が沢山聞けた。今回で南勢町と海山町との海交流のきっかけが出来たことになる。美味しい料理を食べながら、「来年はもっと沢山の人数を集めて大々的にやろう」という事で盛り上がった。志摩ヨットハーバーのハーバーマスターも協力的で来年はクラブのメンバーにも協力してもらうと言っていた。来年がとても楽しみである。
(地域交流センター 明石 博行)
 
交流会(キャンプ inn 海山)
 
 
五ヶ所湾(南勢町)
熊野灘
引本浦(海山町)
尾鷲港(尾鷲市)
 
 
 







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