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第1章 調査の概要
 地域交流センターでは、平成5年度の「道の駅」の社会実験の事務局を務め、また今次のいわゆる“全総”に関する基礎調査を手がけて以来、「地域連携」という概念に多大なる関心を抱いてきた。
 地域交流センターでは、「道の駅」の評価から、人と人とのネットワーク拠点であり、地域連携を具現化する手法として、「まちの駅」*というコンセプトを産み出し、全国各地域の延べ数百カ所において、国土交通省の支援などを受け、社会実験を繰り返し、ノウハウを積み上げてきており、実験の結果、その効果を認められ常設に至った「まちの駅」も、現在では50ヵ所を越える。そして、「まちの駅」のひとつの類型に「海の駅」「島の駅」が挙げられる。
 一方、隠岐・対馬・種子島においては、国土交通省による調査事業を受託したことにより、地域交流センターでは、数ヵ年に渡り、それぞれの島の島興しに取り組むとともに、3島連携による島興しの可能性も模索してきた。
 そこで、これまで「まちの駅」の社会実験で培ったノウハウを応用し、海事思想の普及、海や島に関わる情報の発信、海を利用した地域興しを実現するために、隠岐・対馬・種子島において、今般、日本財団の助成を受け、「海・島の駅」の社会実験に着手した。
 
 本調査は、隠岐・対馬・種子島において、地域活性化に対する「海・島の駅」づくり事業を、具体的な場所と期間を設定した社会実験方式で行うことにより、その役割や機能の有用性を検証することにある。
 
 実際に具体的な場所と期間を決めて、期待する事柄を一時的に客観的に体験することによって、参加した人たちの共通の認識や合意を得る手法・過程を「社会実験」と呼んでいる。社会実験には、以下のような意義がある。
 
(1)地域ぐるみの取り組みを通じた連携活動のきっかけ
 
 「海・島の駅」実験の意義のひとつは、実験という取り組みを通じて住民、まちづくり団体、NPO、企業など地域の多様な立場の人々の参加協力体制を作り上げることであり、市町村の枠を越えた交流・連携を促すことにある。
 
(2)客観的な評価と将来展開の方向づけ
 
 実験を行うことによって、概念では理解や予測のできないさまざまな現象を地域の特性の中で具体的に確認し、客観的に評価することによって、その成果を踏まえた今後の方向づけや整備に向けた判断の手がかりを得ることができる。
 
 この実験を通じて次のような項目を検証する。
 
(1)地域住民・来訪者が求める施設内容・情報の把握と効果の検討
(2)情報収集から提供までの体制や人材発掘の可能性の検討
(3)「海の駅」「島の駅」の将来展開により広域で事業化へ取り組む足がかり
(4)将来的に、「海の駅」「島の駅」を展開する上での解決すべき課題の整理
 
(1)実験時期及び期間
 
 平成15年8月2日(土)〜8月31日(日)約4週間
 (ただし、実際は、実験期間終了後も、各「海・島の駅」関係者の協力と発意により、引き続き、その機能を維持し、平成16年3月現在も実験を継続している。)
 
(2)実験参加者
 
(1)島を楽しくする会
(2)隠岐・対馬・種子島への来訪者
(3)「海・島の駅」設置施設利用者
(4)地域住民
(5)まちづくり団体
(6)NPO
(7)企業
 
(3)実験の推進と評価
 
1)実験実施体制
 
 本実験を進める上で、実験内容の合意形成や推進のための体制づくりが重要であるため、以下の関係者で構成する「島を楽しくする会」を組織し、実験の推進を行う。
 
●構成員
<隠岐>
・B & G海洋センター(株)ノア隠岐
・ひめぼたるの会
 
<対馬>
・(株)対馬国際ライン
・YAMANEKOプレス
・「海・島の駅」に賛同する有志住民
・ 〃 有志行政職員
 
<種子島>
・NPO種子島ジュントス
・まちづくり団体MAP
・「海・島の駅」に賛同する有志住民
 
●コーディネーター
・調整事務局 NPO地域交流センター
 
2)評価
 
●利用状況の把握
・パンフレットの減少数、関係者の印象
 
●利用者・関係者の評価(アンケート・ヒアリング等)
・実験の趣旨や方法についての評価
・「海・島の駅」の機能についての評価
・求められる情報内容、機能の有用性や効果、連携の可能性等
 
(4)情報発信の仕方
 
1)専用情報コーナーを既存施設内の一角に設置
・施設看板の設置
・コーナー看板の掲示
・作成印刷物(情報パンフレット、情報シート)の配置
・休憩コーナーの設置
・喫茶コーナーの設置(可能な施設のみ)
・既存の観光パンフレット等の配置
 
2)案内人の配置
・施設関係者の兼任(可能な施設のみ)。実験期間中は、時間帯限定でも可。
 
 実験は、以下の3島の既存施設7ヵ所を対象にして行った。なお、種子島においては、10月以降、鹿児島県内で「まちの駅」の社会実験を開始しており、当初の8月の実験期間終了後は、隠岐・対馬との連携のみならず、鹿児島県内の「まちの駅」との連携も行った。
 サテライトは、運営主体の発意により、自発的に本実験に協力してくれた施設である。
 実験参加施設の立地条件・性格は以下のとおり。
 
地域 設置施設 運営主体 立地 性格
隠岐 B&G海洋センター
クラブノア隠岐
(株)クラブノア隠岐 マリンリゾート施設
・体験施設
・休憩コーナー
・トイレ
対馬 日田勝港ターミルビル (株)対馬国際ライン フェリーターミナル
・休憩コーナー
・トイレ
種子島 おじゃり申せ館 NPO種子島ジュントス 港近傍の市街 NPO本部
・休憩コーナー
・物産
・軽食
・トイレ
観光ホテル門倉亭南荘内
TNAツアーズ
(有)門倉亭南荘
(TNAツアーズ)
市街 アクティビティ斡旋
・体験斡旋
・休憩コーナー
・飲食
・トイレ
(サテライト)ひげさんの店 南国みやげ品店 港近傍の市街 みやげ物店
・物産
・案内
・トイレ
(サテライト)おたつめたつ NPOおたつめたつ 郊外 高齢者福祉施設
・トイレ
(サテライト)ロータスイトウ (有)イトウ 港近傍の市街 自動車二輪車販売
・案内
・トイレ
 
(1)屋外看板
 
 「海・島の駅」運営主体の理解と同意が得られ、かつ、関係者の協力により無償で作成が可能な場合において、屋外看板を設置した。
 
・設置場所:施設入り口
・サイズ:(H)1800mm×(W)900mm程度
・事務局で雛形を作成し、各「海・島の駅」関係者に提示し、協力者により無償で作成が可能な場合設置。
 
(2)屋内コーナー表示板
 
 「海・島の駅」運営主体の理解と同意が得られ、かつ、関係者の協力により無償で作成が可能な場合において、屋内コーナー看板を設置した。
 
・設置場所:施設内の「海・島の駅」コーナー付近で、目に付きやすい場所
・サイズ:(H)450mm×(W)900mm程度
・事務局で雛形を作成し、各「海・島の駅」関係者に提示し、協力者により無償で作成が可能な場合設置。
 
(3)「海・島の駅」情報発信パンフレット
 
 島を楽しくする会が主体となり、各島の自慢情報((1)地図情報、(2)テーマ情報、(3)体験情報、(4)おすすめスポット情報、(5)イベント情報、(6)特産品情報、(7)食べ物情報、(8)ひと情報、(9)おすすめもの情報、(10)ここだけ情報)をワークショップ形式で探し出し、統一パンフレットを作成し配布する。
 なお、この情報の発信項目と体裁は、地域交流センターがこれまでに全国各地で「まちの駅」の社会実験を繰り返し、検証しコンセプト化したものであり、今回の「海・島の駅」でも、これに準拠した。
 
・体裁:A3両面カラー3つ折
・作成部数:1,000部
・配布:自分の「海・島の駅」に750部、他の「海・島の駅」に100部づつ配布し、予備として、事務局に50部保管。
 
(4)「海・島の訳」情報発信シート
 
 「海・島の駅」情報パンフレットに盛り込んだ10項目の情報をもとに、情報発信シートを作成し、配布する。
 
・体裁:A4片面モノクロ印刷
・作成部数:1,000部
・配布:自分の「海・島の駅」に990セット、予備として事務局に10セット配布。
 
(5)実験PR用パンフレット
 
 実験期間中、利用者に実験の趣旨と「海・島の駅」のイメージを伝えるための実験PR用パンフレット(A4両面カラー)を事務局で作成し、各施設に備え付け、利用者に配布する。
 
・実験の趣旨(「海の駅・島の駅ってなに?」「日本ぐるっと一周・海交流で海の駅を!」「隠岐・対馬・種子島の島を楽しくする会の取り組み」)、実験施設、実験期間等を盛り込む。
・実験施設に、各300部配布。
・事務局で予備として100部保管。
 
(6)観光情報パンフレット
 
 各「海・島の駅」に、他の2島の観光パンフレットを数種類、200部程度設置し、配布する。
 
(7)アンケート用紙
 
 利用者からの意見を収集するため、アンケート用紙を設置し、あわせて筆記用具を置く。
 
・実験施設に100部配布。
 

*「まちの駅」第5章参照







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