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5 社会福祉事業に係る改正(第7章関係)
 
(1)第一種社会福祉事業の経営主体に係る規定及び事業経営の準則に係る規定の移動(社会福祉法第60条及び第61条関係)
 旧社会福祉事業法は、社会福祉事業を行う者についての事業規制をその主眼としており、そのため第一種社会福祉事業の経営主体に係る規定(旧第4条)及び社会福祉事業の経営準則に係る規定(旧第5条)については、総則に置かれていた。しかしながら、1、2及び3において述べたとおり、この法律は社会福祉の全般に関する共通的基本事項を定めるものとして、その内容及び性格を変えていることから、改正後の社会福祉法の総則部分にこれらの事業規制に関する規定を置くことは適切でないこととなる。
 このため、旧第4条及び旧第5条については、事業規制について定める「社会福祉事業」の章(第7章)に移動することとした。
(2)社会福祉施設の最低基準に係る改正(社会福祉法第65条)
 一定の質が確保された福祉サービスの提供を保障するため、施設サービス提供に関する最低基準が定められているところであるが、今後、利用者が事業者と対等な立場で、契約に基づき適切なサービスを利用することが基本となることを踏まえ、同基準においても利用者の苦情解決への取り組み等を加える必要がある。
 したがって、社会福祉事業の経営者に対し、提供する福祉サービスに係る利用者からの苦情を適切に解決する責務を課す(社会福祉法第82条。6(2)(2)ア参照)とともに、厚生大臣は、社会福祉施設の最低基準として、設備の規模及び構造の他に、福祉サービスの提供の方法、利用者等からの苦情への対応その他の社会福祉施設の運営について定めなければならないことを明確にした。
(3)社会福祉事業の経営者に対する不利益処分に係る規定の改正(社会福祉法第72条)
 2及び3で述べたように、社会福祉法の目的の一つは利用者の利益の保護を図ることにあり、この目的を具体化するため、「福祉サービスの適切な利用」という章を新たに追加する(6参照)こととし、利用者の利益の保護の仕組みの実効性を担保するため、所要の規定を置くこととした。
 すなわち、次の6で述べるように、社会福祉事業の経営者に対し、利用契約の成立時における書面の交付を義務付ける規定及び誇大広告を禁止する規定を置くこととしているが、これらの規定に違反した経営者に対しては、都道府県知事が事業停止処分、許認可取消処分等の不利益処分を課すことができるものとした。
 
6 福祉サービスの適切な利用に係る規定の追加(第8章関係)
 
 措置制度の下では、福祉サービスの利用者と提供者の間に直接の契約関係がなく、サービスの内容は、措置権者である行政により決められていたため、利用者の意向を反映した福祉サービスの選択を保障する制度的な仕組みがなかった。
 今般、利用制度の導入に伴い、利用者の選択を保障するための諸般の仕組みの整備が不可欠となる。具体的には、利用者の判断を可能にする十分かつ適切な情報の確保と、判断能力が不十分なために自らサービスを選択して利用することが困難な者を保護するための福祉サービスの利用の援助等を定めることとした。
(1)情報の提供に係る規定の追加(第1節関係)
 利用者の選択に必要な情報が得られる仕組みや、より質の高いサービスを確保する仕組みの整備に当たり、福祉サービス全般に共通する事項として、次の(1)から(5)を定めることとした。
(1)情報の提供(社会福祉法第75条)
 利用制度への移行に伴い、利用者が福祉サービスを適切かつ円滑に選択できるよう、福祉サービスに関する的確な情報が利用者に対して自主的かつ積極的に提供されることが重要である。
 こうした観点から、社会福祉事業の経営者に対し、その提供する福祉サービスに関する情報の提供に努めなければならない責務を課すとともに、国及び地方公共団体に対し、サービスを利用しようとする者が情報を容易に入手できるよう、必要な措置を講ずるよう努めなければならない責務を課すこととした。
(2)契約申込者に対する説明(社会福祉法第76条)
 利用者の適切な選択を保障するとともに、契約時の情報不足による無用の混乱を避けるため、社会福祉事業の経営者に対し、その提供する福祉サービスの利用希望者から申込みがあった場合には、当該福祉サービスを利用するための契約の内容及びその履行に関する事項について説明するよう勤める義務を課すこととした。
(3)利用契約成立後における書面交付義務(社会福祉法第77条)
ア 利用者と事業者の契約関係を明確にするとともに、利用者が実際に不利益を被った場合の事後的な救済に資するため、社会福祉事業の経営者に対し、契約成立後滞りなく、以下に掲げる事項を記哉した書面を交付しなければならない義務を課すこととした。
(ア)当該社会福祉事業の経営者の名称及び主たる事務所の所在地
(イ)当該社会福祉事業の経営者が提供するサービスの内容
(ウ)当該福祉サービスの提供につき利用者が支払うべき額に関する事項
(エ)福祉サービスの提供開始年月日
(オ)福祉サービスに係る苦情を受け付ける窓口
 なお、本条にいう書面交付の方法としては、前記(ア)から(オ)までに掲げる事項をすべて記載した書面を交付するという方法だけでなく、本条の趣旨が十分に反映されている方法であるものと評価される限り、事前説明に用いた文書やサービス提供記録が記載されている資料などを利用者に交付する等の代替的な方法でも良いものとする。
 具体的には、社会福祉事業に該当する介護サービスについての本条の適用に当たっては、前記(ア)から(オ)に掲げる事項の書面交付については、介護保険法に基づく指定事業者・施設の指定基準などを遵守した文書の交付及び書面への記載をもって、これに代えることができるものとする。
 これは、社会福祉事業に該当する介護サービスについては、その指定事業者・施設の指定基準において、(1)サービスの提供に際し、あらかじめ利用申込者に福祉サービスの内容や利用料その他の費用の額等の重要事項を記した文書を交付して説明を行い、サービス提供に関する同意を得ること、(2)契約成後のサービス提供に際し、居宅サービスについてはサービス提供の記録を居宅サービス計画等に記載し、施設サービスについては、入退所(入退院)を被保険者証に記録することが義務づけられており、本条の趣旨が担保されているからである。
イ 各種相談事業をはじめ、以下に掲げる事業については、その事業の性格上、社会福祉法第77条に規定する書面の交付を社会福祉事業の経営者に対して義務づける実益に乏しいと考えられることから、同条の規定を適用しないこととした。
(ア)社会福祉法第2条第3項第1号に規定する事業
(イ)児童福祉に係る事業(社会福祉法第2条第3項第2号)のうち、障害児相談支援事業、保育所を経営する事業、児童厚生施設を経営する事業、児童家庭支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談に応ずる事業
(ウ)母子福祉に係る事業(社会福祉法第2条第3項第3号)のうち、母子福祉施設を経営する事業
(エ)老人福祉に係る事業(社会福祉法第2条第3項第4号)のうち、老人福祉センターを経営する事業及び老人介護支援センターを経営する事業
(オ)身体障害者福祉に係る事業(社会福祉法第2条第3項第5号)のうち、身体障害者相談支援事業、身体障害者福祉センターを経営する事業及び身体障害者の更生相談に応ずる事業
(カ)知的障害者福祉に係る事業(社会福祉法第2条第3項第6号)のうち、知的障害相談支援事業及び知的障害者の更生相談に応ずる事業
(キ)精神障害者福祉に係る事業(社会福祉法第2条第3項第7号)のうち、精神障害者地域生活支援センターを経営する事業
(ク)生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業(社会福祉法第2条第3項第9号)
(ケ)隣保事業(社会福祉法第2第3項第11号)
(4)福祉サービスの質の向上(社会福祉法第78条)
 福祉サービスの利用が、行政の行う措置制度から利用者が選択する利用制度を基本とすることとに伴い、福祉サービスの質の確保についても、行政が委託契約を通じ画一的にサービスの質を確保する考え方から、社会福祉事業の経営者が最低基準を遵守した上で、その提供する福祉サービスの質の一層の向上に自主的に取り組むことを促すという考え方が基本となる。
 このため、社会福祉事業の経営者に対し、自らが提供するサービスの質の自己評価その他の措置を講ずることにより福祉サービスの質の確保・向上に努めなければならない義務を規定することとした。
 また、国は、福祉サービスの質の評価に対する基準の作成、第三者評価機関の育成等の必要な措置を講ずることにより社会福祉事業の経営者の取り組みを支援するよう努めなければならないこととした。
(5)誇大広告の禁止(社会福祉法第79条)
 従来、社会福祉事業については、これまで措置制度が基本であったために、個々の事業者が公告する必要性がなく、福祉サービスに係る広告について規制する規定は置かれていなかった。今後、利用制度を基本とすることから、利用者の利益保護を図るとともに、不正な競争を防止する観点から、社会福祉事業の経営者に対し、以下に掲げる事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人に誤認させるような表示(いわゆる「誇大広告」)を行うことを禁止することとした。
ア 提供される福祉サービスの質その他の内容に関する事項
イ 利用者が事業者に支払うべき対価に関する事項
ウ 契約の解除に関する事項
エ 事業者の資力又は信用に関する事項
オ 事業者の事業の実績に関する事項
(2)福祉サービスの利用の援助等(第2節関係)
(1)福祉サービスの利用の援助
 福祉サービスの利用者の中には、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者、判断能力が不十分なために福祉サービスを自ら選択し、事業者と契約を結んでサービスを利用することができないおそれのある者がいる。このため、これらの者によるサービスの利用を援助する仕組みを整備し、利用者の利益の保護を図ることとした。
ア 福祉サービス利用援助事業を行う者の留意事項(社会福祉法第80条関係)
 福祉サービス利用援助事業は、判断能力が不十分な者を対象とすることから、特に利用者の立場に立ち、その意向を尊重する必要が強く求められる。したがって、この事業を行う者の義務として、利用者の意向を尊重し、利用者の立場に立って公正かつ適切な方法で行うことを特に明記した。
イ 都道府県社会福祉協議会が行う福祉サービス利用援助事業等(いわゆる地域福祉権利擁護事業)(社会福祉法第80条、第81条関係)
 福祉サービス利用援助事業については、その実施体制が全国的に整備されている必要があることから、都道府県社会福祉協議会において、都道府県の区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うとともに、福祉サービス利用援助事業の従事者の資質向上及びこの事業の普及啓発のための事業を行うものとした。
ウ 運営適正化委員会の役割(社会福祉法第83条関係)
 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であって、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される公正・中立な第三者機関として、運営適正化委員会を置くこととした。
(ア)運営適正化委員会については、福祉サービス利用援助事業の助言・勧告を行う合議体と、福祉サービスに関する苦情の解決を行う合議体をそれぞれ一以上設けることとする。委員については、それぞれ同数の公益を代表する者、福祉サービスの利用者を代表する者及び社会福祉事業を経営する者により構成される選考委員会の同意を得て、都道府県社会福祉協議会の代表が選任することとする。(社会福祉法施行令第2条、第7条関係)
(イ)なお、運営適正化委員会については、その公正性・中立性を確保するために、事務局を都道府県社会福祉協議会に置くものの、運営適正化委員会の組織、運営については独立したものとするため、委員の互選による委員長が会議を招集し、合議体を構成する委員を指名する等の規定を整備する。なお、事務局についても、事務局長は運営適正化委員会の委員長の命を浮けて局務を掌理することとする。(社会福祉法施行令第5条〜第8条関係)
(ウ)さらに、運営適正化委員会の業務が個人のプライバシーに関わることを考慮し、その委員及び事務局員について守秘義務を課す一方、運営適正化委員会に少なくとも年に一回その業務の状況について報告書を作成し、これを公表することを義務づけ、業務の透明性を確保することとした。(社会福祉法施行令第9条、第10条関係)
(エ)なお、選考委員会の委員については、あらかじめ住民、福祉サービスの利用者、社会福祉事業を経営する者その他の関係者の意見を聴取して、都道府県社会福祉協議会の代表者が選任するものとする。(社会福祉法施行令第2条第5項関係)。なお、具体的な方法としては、意見書の提出を受け付ける方法、意見を聴取する方法等のうち、都道府県社会福祉協議会があらかじめ定める方法とする。なお、選考委員会の委員長については、公益を代表する者のうちから委員が選挙する者とし、利用者等関係者の意見を広く反映しつつ、中立性の保持を図ることとした。(社会福祉法施行規則第17条〜第20条関係)
(2)福祉サービスに係る苦情解決(社会福祉法第82条、第85条及び第86条関係)
 利用者の意向が十分反映された福祉サービスが提供されるためには、利用者が、福祉サービスに関する苦情を自由に申し出ることができる環境を整える必要があるため、福祉サービスに係る苦情を適切に解決するための仕組みを整備することとした。
ア 事業者による苦情の適切な解決(社会福祉法第82条関係)
 苦情については、まず第一義的には事業者による解決の努力が不可欠であることから、社会福祉事業の経営者に対して、常に、その提供する社会福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないこととした。特に、社会福祉施設については、社会福祉法第65条に基づき、苦情への対応を最低基準に盛り込むこととしている。なお、事業者の苦情解決に取り組むに当たっての具体的な方法に関する指針については、別途通知する。
イ 運営適正化委員会による苦情解決(社会福祉法第85条、第86条関係)
 利用者からの苦情については、第一義的には事業者の努力により適切な解決が図られるべきものであっても、個々の処遇の内容等に関する苦情、当事者同士の話し合いでは解決が困難な苦情もある。このような苦情については、公正・中立な第三者機関によるあっせん等により解決することが望ましい。したがって、公正・中立な第三者機関として、都道府県社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会に苦情解決を行わせるものである。
(ア)福祉サービスに関する苦情について解決の申出があったときは、運営適正化委員会は、その相談に応じ、必要な助言及び調査を行う。また、苦情の申出人又は当該申出人に福祉サービスの提供を行った事業者が書面により苦情の解決のあっせんを申請した場合には、運営適正化委員会は、書面により他方当事者に通知し、双方の同意を得て、あっせんを行うことができる。
(イ)運営適正化委員会があっせんを行う場合には、合議体によるあっせんに付するものとする。あっせんを行わない場合やあっせんをうち切る場合には、当事者に理由を付した書面をもって通知するものとする。(社会福祉法施行規則第21条〜第24条関係)
(ウ)なお、運営適正化委員会が苦情の解決に当たり、利用者に対して虐待等の不当な処遇が行われているおそれがあると認めるときには、都道府県知事に速やかに通知し、行政機関による解決を促すこととする。
(3)社会福祉を目的とする事業を経営する者への支援(第3節関係)
 都道府県社会福祉協議会は、社会福祉を目的とする事業の健全な発達に資するため、社会福祉を目的とする事業を経営する者がその行った福祉サービスの提供に要した費用に関して地方公共団体に対して行う請求事務の代行等の支援を行うよう努めなければならないこととした。(社会福祉法第88条関係)







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