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大会日程
大会日程
1 開会式・・・10:00〜10:40
(1)開式のことば 大会実行副委員長
(2)国歌斉唱
(3)挨拶
和歌山大会会長 社団法人日本教育会会長 辰野千壽
和歌山大会実行委員長 日本教育会和歌山県支部長 志賀義雄
(4)祝辞
文部科学大臣 河村建夫様
和歌山県知事 木村良樹様
和歌山市長 大橋建一様
和歌山県教育委員会教育長 小関洋治様
(5)来賓紹介
(6)祝電披露
(7)閉式のことば 大会実行副委員長
2 主旨説明及び提言・・・10:45〜12:10
3 昼食・休憩・・・12:15〜13:15
4 シンポジウム・・・13:20〜14:50
5 記念講演・・・15:00〜16:30
6 閉会式・・・16:30〜16:45
(1)開式のことば 大会実行副委員長
(2)挨拶・謝辞 和歌山大会実行委員長
(3)次期開催県挨拶 静岡県支部長 久保田柾博
(4)閉式のことば 大会実行副委員長
 
21世紀を築く日本人の育成
―行動力を高める教育―
 
 
日本教育会研修事業委員会 委員長
(文京区立小日向台町幼稚園長)
酒井幸子
 
 日本教育会は、昭和53年度第2回全国教育大会以降、時代の状況にふさわしい大会主題を設定し、時代が要請する事項を副主題として調査・研究を積み重ねてきた。その成果を基に、幼、小、中、高、盲・聾・養等の各校種代表による提言を全国教育大会や機関誌『日本教育』において公表してきた。
 平成13年度からは、大会主題「21世紀を築く日本人の育成」のもと、副主題を「品性を高める教育」(13年度熊本大会)、「情報活用能力を高める教育」(14年度新潟大会)と設定し、提言・協議を行ってきた。
 今年度は、前記主題を受けて、副主題を「行動力を高める教育」とした。
 さて、今、社会は激しく変動している。その変動はとどまる所を知らず、将来への展望をもちにくい状況が生まれている。しかし、このような状況であるからこそ、次代を担う子どもたちには、社会とのかかわりの中で自己を発揮し、自ら学び、考え、目的や目標をもち、主体的に行動する力が求められる。
 今日、大きな社会的変動の中で、子どもたちの引きこもりや不登校、非行や犯罪などが増加し、社会に深刻な課題をもたらしている。我が国の子どもたちの多くは、出生時から物質的な豊かさを享受している。その一方で、学ぶこと、努力すること、思いやりの心をもつことなどの意義を軽んじる風潮が広がり、幼児期から青年期に至るそれぞれの世代に、主体的に行動する意欲が薄らいでいる。
 そのような中で、青少年のボランティア活動や職場体験、スポーツの振興、自然体験活動の普及などに、学校(園)と家庭、地域が連携して活動を展開する教育も広がりを見せている。こうした社会参加や実体験は、子どもたちの心情を揺さ振り、内発的な動機を揺り起こし、一人一人の子どもに、目的や目標に向かって、主体的に行動しようとする力を着実にはぐくんでいる。
 21世紀を築く日本人の育成には、社会とのかかわりの中で自己を律していく力、向上心や志をもって生き次代を創造する力、自国の歴史や伝統を尊び国際社会で行動する力などを育成する教育が重要である。私たちは、将来への夢や希望をもち、その実現へ向けて意欲的に取り組み行動する人材を育成しなければならない。
 こうした考えに基づき、副主題を「行動力を高める教育」と設定した。また、「行動力」を、
・夢や希望の実現に向けて自己を発揮する力、
・他の人や自然と共生する力、
・新しい時代に求められる重要な力として捉えた。
 今大会では、幼児期から青年期に至る、それぞれの発達段階に応じて、これらの力を育成すべく、次の5点を協議の視点として提案する。
1 心を揺さ振り、感性を豊かに磨く多様な教育活動の推進
2 遊び、運動、スポーツを通じ、心身の健康を促す教育の推進
3 豊かな人間関係を築く、直接的・具体的体験を重視した教育の推進
4 主体的・創造的に取り組む態度をはぐくむ実践的な活動の推進
5 学校(園)、家庭、地域社会の連携を図った弾力的な教育の推進
 今大会における5校種の方々の提言が、明日からの教育実践に生かされることを、心から願うものである。
 
自然・人との豊かなかかわりの中で主体的に行動する幼児を育てる
 
 
下関市立第一幼稚園 園長 勢一恵美子
 
1 はじめに
 幼稚園は、3歳から小学校入学までの幼児の教育を行う<子どもがはじめて出会う>学校である。
 多くの幼児にとって幼稚園生活は、家庭から離れて同年代の幼児と一緒に過ごす初めての集団生活を営む場である。幼稚園では「遊び」を大切にした教育を行っている。幼児にとって「遊び」は重要な学習であり、この時期に思い切り遊ぶことで、その後の学びや創造性が豊かになると言われている。そのことからも幼稚園教育は、その後の学校教育全体の生活や学習の基盤を培う役割も担っており、小学校以降の子どもの発達を見通した上で、幼児期に育てるべきことをしっかり育てることが大切になってくる。そのことが小学校以降の生活や学習においても自らの目的に向かって行動する力を養うことにつながると考える。
 子どもは遊びが大好きである。特に戸外遊びは、楽しい学びの場でもある。五感を通じて「何だろう」「面白そうだな」「やってみたいな」と幼児の心が動かされた時が遊びの始まりである。心が動き、興味・関心にそって主体的に行動する中で幼児期に必要な心情、意欲、態度が培われ、生きる力の基礎づくりがなされていく。
 このようなことを踏まえ、子どもの心が揺り動かされ、主体的に行動しようとする力を育むために、本園の実態から次の2点を提言する。
<提言>
1 幼児の心を揺さぶり豊かな感性を育むために、直接的な自然との触れ合いを重視した教育活動を推進する。
2 幼児のより主体的な行動を促すために教師との信頼関係を支えに望ましい友達関係づくりを重視する。
 
2 「ドキドキワクワク」幼児の心を揺さぶる
 本園は豊かな自然に恵まれている。園の四方が樹々に囲まれ季節や四季の移り変わりを肌で感じることができる。草花あそび、小さな生き物との出会い、土、砂、水、空、雲、風、太陽、雨とのかかわり等、手をのばせばすぐに触れられるものばかりである。ある時は、小動物の世話を通して生や死に出会い命の大切さを学ぶ。またある時は、朝顔の栽培から肥料をやれば成長が促され、水をやり忘れればしぼむという実感を伴った自然の摂理を学ぶ。自然の中でドキドキワクワクしながら何かを探す期待と喜び。気付いたり、発見したりした時の驚きや感動は子どもたちにとっては殊玉の宝である。自然は子どもの心を大きく揺さぶり、感性を育てる。
 本園では、豊かな自然環境を大いに活用し、毎日の当番活動を通して、誰もが小動物に触れ合う直接体験の促進、園内の自然体験活動(ネイチャーゲーム)を通して親子のふれあいの促進など、多様な教育活動を推進している。
 
 
3 ともだち大好き!せんせい大好き!
 幼稚園では、発達から考えて幼児がゆったりとした生活の中で心ゆくまで遊びを楽しめるような環境を幼児に保障することが求められる。すなわち幼稚園は「遊びの喜び、遊びの楽しさ」を十分に体験できる場であることが必要なのである。
 初めての集団生活の場である幼稚園では自分の居場所を確保することから始まる。入園当初から安定して活動を始める幼児、いつまでも居場所が見つからず教師に付いて回る幼児、友達とかかわりを楽しむ幼児、傍らでじっと見て過ごす幼児、見ていることで参加しているつもりになる幼児、心の中に自分の思いをため込んでいる幼児等、一人一人の幼児の姿はそれぞれ異なっている。
 同じ場にいるだけだった他の幼児と言葉を交わしたり、物のやり取りをしたりするなど、次第に他児とのかかわりが生まれてくる。そのかかわりの中で様々な自己主張やぶつかり合いによる葛藤、友達と共にいる楽しさや充実感、次第に皆と生活をつくり出していくことの喜び等を見いだしていく。
 この時期はよく保護者から「友達の名前が毎日一人ずつふえていくので嬉しいですよ」という声が聞かれる。友達に目が向き始めると、隣で泣いている幼児と同じ気持ちになったり、面白いことを見付け、顔を見合わせて大声で笑ったりする等、様々な心を動かす出来事を友達と共有し、感情の交流をしていく。
 いろいろな友達との出会いの中で、「○○ちゃんは〜が上手」「○○ちゃんは〜が好き」といった表面的な特性に気付くことから、次第に互いの心情や考え方などの特性にも気付くようになっていく。このようになると、遊びの中で互いの良さが生かされ、一緒に遊ぶ楽しさが増してきて、友達がいて私がいる幼稚園が大好きになり、次第に行動的になっていく。
 幼児の主体的な活動は、友達とのかかわりを通してより充実し、豊かなものとなっていくが、それを支える教師の役割は極めて大きい。
 入園当初の不安な気持ちは笑顔で温かく迎えてくれる教師がいることで、不安が少しずつほぐれていく。教師は、それぞれの家庭の状況を把握し、一人一人の幼児に思いを寄せることが大切である。アンテナをはりめぐらして幼児の気持ちや欲求などの目に見えない心の声を聴き、生活の中で幼児が示す発見の喜びや達成感を共感をもって受け入れることが大切である。
 教師が、幼児の主体的な活動を促すために一人一人の幼児の心に寄り添って、その心の動きを敏感にしかも温かく受け止めて応じていく内に「せんせいが大好き」になり信頼関係を築いていく。
 幼児は、自分が確かに見守られ受け入れられていると感じると自分らしいのびのびとした行動をするようになる。援助の仕方は、教師の感性、資質が大きく左右し、専門性として求められる。
 幼稚園教育は、生涯学習の基盤を培う出発点にある。今こそ、幼児期にふさわしい生活「ようちえんあしたもいきたいな」の場になるよう、心を通わせながら、実践を積み、きめ細かな対応をしていくことが望まれる。
 
4 おわりに
 平成15年3月、中央教育審議会から「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」答申がなされた。
 教育基本法の具体的な改正の方向として新たに規定する教育の基本理念に(感性、自然や環境とのかかわりの重視)の事項がある。
○美しいものを美しいものとして感じ取り、それを表現することができる力は、人の有する普遍の価値であって、文化の創造の基礎にある心であり、力である。・・・中略・・・自然と共に人は生きているものであり、自然を尊重し、愛することが人間などの生命あるものを守り、慈しむことにつながることを理解することが重要である。
 
 このことからも、21世紀はまさにレイチェル・カーソンの書「センス・オブ・ワンダー」美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性が幼児の発達にそった行動力を高めるために不可欠である。これらを支えるのがそれぞれの場に応じた適切な教師の援助と様々な友達とのかかわりである。
 主体的に行動する幼児を育てるためには「自然」そして「人」が鍵をにぎっていると考える。







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