和歌山城
こんもりと緑茂る虎伏山(とらふすやま)に白亜の天守閣がそびえ、御三家の威容にふさわしい風格を醸し出しています。
和歌山城は、天正13年(1585)に紀州を平定した豊臣秀吉(とよとみひでよし)が弟の秀長に築城させたのが始まりです。その築城を担当したのが、築城の名人藤堂高虎(とうどうたかとら)で、本丸・一の丸を造りました。
まず、秀長の城代として桑山重晴(くわやましげはる)が入り、慶長5年(1600)には、関ケ原の戦いで功をたてた浅野幸長(あさのよしなが)が入城。そして、元和5年(1619)には徳川家康の第10子・頼宣(よりのぶ)が入城し、紀州55万5千石の城となり、以来、水戸・尾張と並び、徳川御三家のひとつとして、長い歴史を刻んできました。
和歌山城の石垣には、紀州特産の青石(緑泥片岩)が多く使われ、たしかに和歌山に来たことを実感させてくれます。
天守閣に登れば、和歌山市街が見渡せ、紀ノ川がゆったり流れているのがよくわかります。まずここで和歌山市全体を頭に入れて、観光を始めるのもひとつの方法かも。
平成15年度 第28回
日本教育会全国教育大会 和歌山大会
要項
大会主題「21世紀を築く日本人の育成」
〜行動力を高める教育〜
日時:平成15年11月15日(土)
会場:和歌山市民会館
主催:社団法人日本教育会
主管:日本教育会和歌山県支部
後援:文部科学省
和歌山県教育委員会
和歌山市教育委員会
和歌山県市町村教育委員連絡協議会
大会主題
21世紀を築く日本人の育成
―行動力を高める教育―
21世紀になって社会は、科学技術の著しい発展や情報化の進展により世界中の情報を瞬時に入手できるなど、高速ネット化された新しい世界へと変化しようとしている。
このような世界情勢の中で、インターネットや携帯電話の普及による情報化、国際化、人口移動などによる都市化や過疎化、出生率の低下による少子高齢化、そして、科学技術等の進展によって、我が国の経済や社会の状況も大きく変動している。
これらの時代の激しい変化は、社会全体に多様な価値観を生み出している。共通の目的や目標が失われがちになり、将来の展望をもちにくい状況が生れてもいる。しかし、変化の激しい状況であるからこそ、社会との関わりのなかで自己を発揮し、自ら学び、考え、目的や目標をもち、主体的に行動する力が求められる。このような時代には、自分の立脚点を見極め、今後どのような目標に向かって進むべきかを考え、目標実現のために責任感をもって、主体的に行動する力をもつことが極めて重要である。
今日、我が国の子どもたちの多くは、生れた時から物質的な豊かさを享受している。しかし、物質的な豊かさは、必ずしも人間としての心の豊かさや強さを育むものではなかった。大きな社会的変動の中で、引きこもりや不登校、青少年の非行などが増加し、社会に課題をもたらしている。学ぶことや努力すること、我慢することや思いやりの心をもつことなどの意義を軽んじる風潮が広がり、幼児期から青年期に至るそれぞれの世代に主体的に行動する意欲が薄らいでいる状況が見られる。
一方では、青少年のボランティア活動や職場体験、スポーツの振興、自然体験活動の普及などに、学校(園)と家庭、地域が連携して活動を展開する教育も広がりを見せている。こうした社会参加や実体験は、子どもたちの心情を揺さ振り、内発的な動機を揺り起し、一人一人の子どもに目的や目標に向かって主体的に行動しようとする力を着実に育んでいる。
21世紀を築く日本人の育成には、社会との関わりの中で自己を律していく力、向上心や志をもって生き、次代を創造する力などを育成する教育が重要である。私たちは、将来への夢や希望をもち、その実現に向けて意欲的に取り組む人材を育成しなければならない。また、自国の歴史や伝統を尊び、国際的な視野をもち、新しい時代を築くことのできる日本人を育成したいと考える。
行動力とは、夢や希望の実現に向けて自己を発揮する力であり、他の人や自然と共生する力であり、新しい時代に求められる大切な力である。
こうした考えに基づき「行動力を高める教育」を副題とした。
このような行動力を高めるには、幼児期から青年期に至まで、豊かな感性、たくましく生きるための健康な体、精神力、基礎的・基本的な知識や技能、問題を解決する力、望ましい人間関係を築く力、自ら学ぼうとする意欲や態度、自己統制力などを、それぞれの発達段階に応じて育み、実践させることが肝要である。
以上のことを基にして、次の通り協議の視点を提案する。
1 心を揺さ振り、感性を豊かに磨く多様な教育活動の推進
2 遊び、運動、スポーツを通じ、心身の健康を促す教育の推進
3 豊かな人間関係を築く、直接的・具体的体験を重視した教育の推進
4 主体的、創造的に取り組む態度を育む実践的な活動の推進
5 学校(園)、家庭、地域社会の連携を図った弾力的な教育の推進
和歌山大会 会長
社団法人日本教育会 会長
辰野千壽
本日、日本教育会和歌山県支部の絶大なご協力により、ここ和歌山市において、全国から大勢の会員のご参加をえて、平成15年度第28回日本教育会全国教育大会和歌山大会を盛大に開催できましたことは、誠に意義深く、ご同慶の至りであります。
さらに、公務ご多忙の折りにも拘わらず、文部科学省はじめ多数のご来賓のご出席をいただき、誠にありがとうございます。衷心より厚く御礼申し上げます。
日本教育会が全国教育大会を開催するのは今回で28回となります。本会がこのように発展、充実してきましたことは、6万数千人の会員のご努力によることはもとより、文部科学省はじめ関係諸機関のご理解とご支援の賜物であります。この機会に改めて謝意と敬意を表します。
わが国では、現在、社会の急激な変化への対応のために、各方面で改革が進められています。思うに、人は社会的基準、規範をもった社会に生まれ、成長しますが、その社会に十分に適応し、社会に貢献するためには、強い意志をもって社会的基準、規範を獲得し、それを実行することが必要であります。
今日の教育は、生きる力の育成を目指し、心の教育と基礎・基本の徹底、自ら学び自ら考える力の育成を重視し、確かな学力の向上を目指して各種の計画が考えられ、実施されています。しかし、この目標を達成するためには、実行する行動力を身につけさせることが大事であります。たとえ、児童生徒が善悪・正邪の判断ができ、学習の意義を理解し、自ら学び自ら考える力の重要性を理解しても、それを実行しなければ、その目標を達成することができません。
行動力は、自分の目的・目標を実現することを目指して実行する力であり、その基礎には意志の力が作用します。意志は物事を進んでしようとする心の働きであり、目的を実現するために自発的、意識的な行動を生起させ、それを統制する内的な過程であります。この意志の力は、自分の感情、欲求を制御し、目標の実現に向かって努力を続ける自己統制力でもあります。したがって、行動力を身につけさせるためには、意志の力、自己統制力を育成することが必要であります。
しかし、これまでの教育では、児童生徒の欲求の充足や個性、自発性・自主性を過度に尊重して厳しさを失い、社会には、彼らの自由と権利を過度に尊重し、逸脱行動をも許容する傾向さえみられます。行動力の育成では、規律ある生活をさせ、困難に挑戦させ、さらには集団生活を通し自己理解を深め、自我の強度を強めることが求められます。
この指導では、各校種、発達段階を考え、その連携のもとに、強い意志をもった逞しい人間を育てる具体的方策を検討し、工夫することが必要であります。この教育大会は幼、小、中、高、盲・聾・養護学校などの各学校の会員が一同に会して協議するので、まさにこの要請にも応えることができます。これは日本教育会の大きな特色であります。
こうした立場からも、この教育大会が実り多いものとなり、その成果が皆様方の明日からの教育実践において生かされることを期待します。
最後になりましたが、本大会を開催するに際しまして、和歌山県、和歌山市、和歌山県支部の皆様方に長期間にわたり、ご尽力とご協力をいただきましたことに対して、ここに深く謝意を表し、挨拶といたします。
和歌山大会実行委員長
日本教育会 和歌山県支部長
志賀義雄
錦秋の紀州路に、全国から多数の会員の皆様をお迎えできましたことは、支部会員一同、心より歓迎申し上げます。わけて、政務ご多端の折りから文部科学省から、そして本県知事様・和歌山市長様はじめ多数の来賓のご臨席を賜わり、大会に錦上花を添えて頂き、ありがたく厚く御礼申し上げる次第でございます。
さて、戦後半世紀を経て、高度な技術革新・情報化・国際化等々の急激な変化・発展は、人類共通の理念と現実の間に、様々な相克や乖離をもたらしました。まさに現代社会は、多様な価値観と対立軸が錯綜して、多角的な対応や変革を強いられ、人々は模索と苦悩の中にあります。かかる21世紀を、力強く生き抜ける青少年の育成を担う教育の責任は重大であり、私ども日本教育会に期待される使命を痛感するものであります。
本大会において「行動力を高める教育」を主題として「21世紀を築く日本人の育成には、この社会との関わりの中で自己を律していく力、向上心や志をもって生き、次代を創造する力などを育成する教育」の重要性が指摘されましたことは、まことに時宣をえたものであります。そのために「健康な体、精神力、基礎的・基本的な知識や技能」の育成から、更に「問題を解決する力、望ましい人間関係を築く力」や「自己教育力・自己統制力」へと発展的に止揚されることが提案されています。
ところで教育の原点は、先人の文化蓄積の伝達に始まります。この基礎基本の伝承作業は、現代社会の高度な文化度に対応するために、過重な学習努力が求められ、却って画一的な詰め込み教育に追われて、こども達に受動的学習を強いる憾みがありました。要は「行動力の育成」とは、現代適応する個性的能力と、能動的な自己教育力が両立・止揚するための多様な教育改革が緊急課題なのです。それには、先ず教育者自らが変革し行動する、探求意欲と実践工夫が求められます。さりながら、国定教科書的な均質な伝達教育から、多様な教育形態への創造的展開は、多様にして深刻な社会的諸問題を背景にして、教育現場に様々な戸惑いと負担を強いる筈であります。
まさに、私どもは複雑にして困難な教育的現実を直視し、こども達と輝く未来への希望を共有し、多忙な日常性に埋没することなく、謙虚に研鑚に務め、協力・連帯して組織的研修する教育体制を確立する使命があります。
本大会は、この課題と使命を踏まえ、午前中に、提言として幼稚園から高校まで、全国の校種別学校運営実践記録をご教示頂き、午後のシンポジウムにおいては、本県両大学の前学長先生や財界の代表・および不登校問題等の専門家のご意見を結集し、最後に、本県縁りの脇村全国高野連会長にご講演いただきます。何卒、本大会が盛会裏に多大な成果が収められますよう、ご支援ご協力賜りますようお願い申し上げます。
さりながら、私ども弱小支部として非力の故に至らぬこと多々あることとは存じますが、世界遺産申請中の紀北の真言密教の聖地高野山・紀南の熊野路を散策頂き平安の昔を偲びつつ紅葉の自然を親しんで戴ければ幸いに存じます。
おわりに、大会運営に献身的なご協力ご支援賜わりました、辰野会長様をはじめ関係各位に深甚なる感謝の意を表しますとともに、大阪支部を中心に近畿ブロックの皆様の絶大なご支援に厚く御礼申し上げて、ご挨拶といたします。
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