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増毛町 地域住民グループ支援事業
 
○2年をかけた理由及びその効果について
 事業開始当初から、行政機関三者の協働事業として2年計画で取り組んだ。住民との話し合いのプロセスを大事にし、1年目は話し合いの年、2年目は実践活動の年とした。2年をかけて関係機関で力を注いで取り組んだことで、今までの行政主導のやり方とは違う、住民と行政が協働した活動の意義が、徐々に浸透してきた。(1)参加した住民のモチベーションが高まり、活動していこうという気運が生まれ、会を立ち上げることができたこと、(2)話し合いから生まれた活動が、徐々に地域に広がってきていること、(3)行政職員自身も、このような協働(ヘルスプロモーション)の活動方法を、事業をやりながら学んできたことが効果としてあげられる。
 
○「お助けマーシーの会」立ち上げにあたり企画委員会の果たした役割、特に住民参加による効果について
<住民参加の効果>H12年度の話し合いを通して、少しずつでも実践していくための企画委員会を作ろう、という声が住民から出てきたこと。現在の地域通貨を活用した活動が、住民の求めている楽しく参加できる活動であり、徐々に地域に広がってきたことである。
<企画委員会の果たした役割>中心になって、企画・運営・評価していること。その結果、自分たちの基盤となる団体を立ち上げることができた。行政主導ではこうは出来ない部分で、自分達で活動していく母体を自分たちで作ったことで、モチベーションが高まった。
 
○12年度の3つの柱が出された背景と13年度にお助けマンボランティア活動に絞った理由。
<背景>増毛にはボランティアコーディネーターがいないため、特技を生かしたボランティアや、要望に基づいたボランティアは、なかなか取り組めなかった。また増毛は高齢化率が高く、独居世帯も多い。高齢者の孤独死の問題があったり、どこもそうだが隣近所でのつながり・支え合いが薄くなってきていた(特に高齢世代と若い世代の隔たり)。一方で、元気高齢者も多いが、持っている素晴らしい能力・経験が生かしきれていなかった。
<理由>継続してやっていくために、「無理はせず、出来るところから少しずつやっていこう」というスタンスで取り組んだ。3つの活動はとても一度にはできないため、優先順位などを考えて、絞って活動することにした。高齢者と子どもの活動は、活動の充実は必要だが、すでに社会福祉協議会や町の事業で既存のものもあるため、新しいしくみを作るということで、お助けマンボランティアに絞って取り組んだ。
 
○地域通貨の考え方が出てきたのはいつか。またその背景の実践活動事例は。
 12年度話し合いの時から地域通貨は話題に出ていた。栗山町のエコマネーはとても有名で、視察に行った人もおり具体的に話題になった。栗山町の取り組みを講演してもらった時も、エコマネーの活動を聞き、増毛でもできたらいいという思いが生まれた。13年度も地域通貨については何度も話し合ったが、実際取り組むことには時期早尚、という意見で一歩踏み出せなかった。そこでまず何も介在せず「してほしいこと」と「できること」のマッチングを行って活動してみた。その中で、特に高齢者は「何かお礼しなければ」という思いが強かった。庭の草取りや、ぶどうの棚作りを頼んだ高齢者には、「お互いに助け合う会なので、お礼はいりません」と説明しても納得してくれず、お金を出そうともした。結局お菓子や飲み物のお礼をもらってしまって、やった方も「そんなつもりじゃないのに・・・」とこちらも変な気兼ねをしてしまった。また、「何も(代価が)ないと頼みにくい」という声もあった。そのような高齢者の反応をみんなで話し合い、地域通貨があった方が気軽に頼みやすいだろう、ということで試験導入を決めた。
 
○H12年度支援チームでの評価は、どのような方法と結果だったか。
 支援チームでは、つどいの運営の評価として、グループ各々の話し合いの様子(記録)と、参加者に毎回運営に関するアンケートをとったもので行い、つどいの運営に反映させた。ex.なかなか具体的な話に進んでいかず、やっているボランティア活動の話ばかりになるグループがあった→全体会に時間をかけ、他のグループの話も共有するよう進めた。(ボランティアのつどい評価表)
 
○13年度の全町調査の方法と結果は。また、なぜ単なるサービスの提供ではなく、お助けマーシーの会を立ち上げ、地域通貨を利用したサービス受給制度としたか。
<調査>調査票は、一度企画委員で作成し、つどいの参加者で模擬的に登録・マッチングを実施してみて練り直した。調査は「してほしいこと」「できること」のニーズ調査として実施。まず調査票は広報に折り込んで全町に配布。切り取って郵送で返送できるようにした。2ヵ月後返送数は20名程度と少なかったため、企画委員で高齢者の聞き取り調査(生きがいデイサービスや保健事業の参加者)も実施。5ヵ月後は100名を超え、「できること」が130項目、「してほしいこと」が50項目と、圧倒的に「できること」が多かった。徐々に「してほしいこと」の掘り起こしをしていく必要があった。
<単なるサービスとしなかった点>
 事業当初から、行政が直接サービスを提供していく予定はなく、住民自身が考えた活動を支援していく、というスタンスで取り組んだ。目指すところも、企画も、調査も、実践活動も、住民と役場職員が一緒になって考え行い、各々の役割分担をして進めてきた。住民が主体的に活動することで、住み良いまちづくりをすすめていくことに主眼を置いたので、このような形となった。
 
○効果として、住民と町職員がほぼ対等な関係で話し合いが出来るようになってきた内容は具体的にどういうことか。12〜13年度努力した点は。
 12年度当初は住民メンバーの発言は少なかった。行政職員に遠慮している部分が大きかったし、「お役所の会議は形ばかり」という気持ちで付き合ってくれていた感がある。その中で、集いでは、小グループに分かれて、一人一人の発言を大事にしてきた。支援チームや企画委員会では、「とにかく一緒に話し合って、みんなで決めて活動していきたい」という姿勢を大事にしてきた。その経過の中で、みんなで描いてきたことが「出来るかもしれない」という手ごたえに変わってきた。これを実現するために、真剣に議論するようになり、同じ夢を目指す仲間として、時には意見を対立させながら、話し合っている。
 
H14年度、43事例の実践活動を通してみた事業の効果は。
(1)高齢者たちは、送迎等やってもらう一方、「自分たちも何か出来ることがあれば役に立ちたい」と食器布巾作りや芋の皮むきなど積極的にやってくれるようになった。またリサイクル活動にも積極的に参加してくれる。このような社会的役割を持つことで、高齢者の尊厳を大事にすることができる。
(2)元気な高齢者が草とりをやってあげたら、きれいになって花も咲き、やってもらった虚弱高齢者も精神的に明るくなって元気になったことがあった。元気高齢者も大変感動し、「自分はやってあげたのだが、その人の姿から逆に自分もパワーをもらった。この活動が生きがいだ」と話した。そう活動報告する姿を見た若い世代も感動し、「このような人をたくさん増やすことが、まさに私たちの目指す姿だ」と感じた。異世代交流からたくさんのことを学び合っている。
 
○お助けマーシーの会で需給と供給が一致できなかった場合は。14年度43件だが、申し込み数はどのくらいか。また、需用側と供給側で申込みの多いサービス、不足気味のサービスはどのようなものか。不足するサービスを確保するために、どのような取り組みをしているか。
<一致出来ない場合>「できること」の登録は「してほしいこと」の3倍くらいあり、マッチングしていたものも数える程度であった。「できること」の欄はそれなりの特技でないと気軽に書けないという面があり、また「してほしいこと」は特に聞き取り等が必要だった。また、マッチングが少ないため、「やってくれる人」を探す作業が大幅に必要だった。専任のコーディネーターがいなく、保健師や企画委員が片手間に作業するため、コーディネートは少しずつしかできない。要望の合ったものは、何とか引き受け手を探し、あとは「できること」をいかした講習会形式の活動が中心となっている。
<申込み数>申込みは10件(草とりや包丁とぎなど)。まだまだ、随時申し込みの連絡をくれる人は一部に留まっている。高齢者には特にシステムが分かりにくい。もっとPRやコーディネートが必要な部分で、課題でもある。
<多いサービス>女性の登録が男性の4倍と多く、自分の得意な料理を教える内容が多く登録されている。また、簡単にできる「声かけ・話し相手」も多い。
<不足気味のサービス>除雪。ブルトーザーの置いていった雪の処理が大変という高齢者の声が多かった。ゴミステーションの当番時の除雪は試験的に行ってみたが、しかし日常的な除雪の作業は、現在の登録者だけでは困難で、実施できていない。除雪問題をどうしていくかは、今後検討課題となっている。
 
○「住民と行政の協働活動」「住民の主体的活動の育成」「行政として側面的に支援していく」について、具体的にどのようなことか。
<住民と行政の協働>ボランティア活動以外にも全般に共通することの意味で書いたのですが、今までの行政主導のやり方では、いつも決まった人しか参加せず、広がりがない。役場でお願いして、人の良い人たちが断れずやってくれる・参加してくれるという感じである。そうではなくて、住民が目指すことを自分たちの手でも取り組んでいくことで、住み良いまちづくりを目指すことができる。そのために、住民と行政が、計画・実践・評価を一緒になって行うことである。しかし行政側にそのような協働体験がほとんどない。この事業を通して、どう一緒にやっていけるのか学んできたところである。話し合いのプロセスを大事にすることで、行政側も住民側も徐々に理解してきたところである。
<住民の主体的活動の育成>まず住民や行政職員、様々な年代の人たちで識論する場を行政が作っていくこと。とにかくみんなで話し合って決めていくことを大事にする。また活動の企画にあたって、行政側からみて「難しいのでは」「上手く行かないのでは」ということでも、話し合いで決めたことは一緒に取り組んでいく。失敗しても、行ったり来たりしながら、住民に沿いながら、住民が自己決定していくプロセスを支援する。そうすることで、お互いの理解や連帯感が生まれ、1つ1つの活動の積み上げが自信となり、着実に大きな力になっている。
<行政として側面的に支援していく>企画は住民たちが主になって行なうので、場所や最小限の予算の確保、連絡調整、記録や資料・情報の提供など、活動しやすい環境を整えること。
 
○会の今後の新たな展開としてどのようなものが考えられるか。
 (今後は試験的に活用していた地域通貨を、本格活用する予定となっている。それに伴ない、会の規約や会費をきちんと決めてやっていくことになっている。)
 地域通貨を活用して、異年齢の交流・支え合い活動を地域にどう広げていくかが課題。まちづくりに主体的に参加する効果を、住民自身が実感していくこと。住民自身が住み良いまちづくりを進めていくことで、自分たちが幸せに暮らせる、そう実感できる活動展開を目指していく。







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