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第6回つどい
講演「住民がまちづくりに主体的にかかわることの意義について」
講師:東京都立大学大学院 教授 星旦二氏
 健康は重要な政策。先進国では保健課長をしないと首長になれないのは常識。今出てきている健康日本21は健康計画を基本構想にしようというもの。しかし日本の自治体計画というのは、美辞麗句ばかり並べて、どこの自治体の計画も同じ「金太郎アメ」。「誰もが住みやすい〜町」「〜を拡充する」などと形式と建前。そしてお金を出して民間業者に全部委託。自分の町に合った計画を作りたい。先進国は大統領自ら推進している。本当は健康日本21も小渕総理に書いて欲しかった。先進国では健康政策は最優先課題、というのが常識。
 
 健康を規定する要因は何?現状では健診受診率の向上が言われていたりする。年に1回の健診、個人努力で健康になれるのか?肥った保健婦が指導して健康になれるのか?私の父は52歳で早死した。これは父が悪いのか?
 1979年アメリカで出されたヘルシーピープルの報告は、公衆衛生の革命と呼ばれた。これに健康規定要因があげられている。医療や健診の役割はどのくらい健康に寄与しているのか?
 感染症で死亡する割合は急激に減った。これは抗生物質やワクチンが出来たからなのか?このグラフを見てみよう。はしか、しょう紅熱、結核、チフスとも、薬を使い始めたのは、死亡率がグッと下がってからである。それでは何故下がったのか?感染症が撲滅した理由は、「上下水道の整備、タンパク質の摂取、手を洗うこと」。これが大きい。みなさん手は洗おう。
 ガンの死亡率。グラフを見てみよう。急増しているガン、急減しているガン、増えなかったガンがある。それは何か?急増は肺ガン、急減は胃ガン、増えなかったのは大腸ガン。肺がんが増えた理由は何?「喫煙」。北海道は特に女性の喫煙率が高い。胃ガンが減った理由は何?「冷蔵庫の普及」。冷蔵庫のおかげで、うす味・うす塩になった。燻製も少なくなり、カビも減った。異型細胞からガンになるのにどの位かかるか?26〜38年かかると言われる。子宮ガンの原因は何か?原因はヒューマンパピローマウィルスと喫煙。何故子宮頚ガンが低下したのか?家庭風呂の普及のおかげである。シャワー付寝室の普及が子宮ガンを予防する。
 日本のガン死亡率は、アメリカの45年後追いである。しかし大腸ガンが増えなかったのは何故か?野菜のキャンペーンである。温熱化する、味噌汁にたくさん入れる、野菜ジュースなどで、野菜を多く摂る。野菜がとれた判断方法は便。便が多いか、便が水洗トイレに浮くか、便秘しないか、これが目安。
 ところで、男性公務員が年金を何年もらうか、話し合ってみよう。何と「5年」である。どうして短いのか?校長先生が早死にする理由は何か?「役割がない、つきあいが少ない、プライドがじゃま。」自分の余命を計算してみよう。何歳まで生きるか。最期の病名は?どの病気がいいか?心臓病、脳血管障害、ガン。あなたの日常生活習慣はどうか?(1)睡眠時間は7〜8時間、(2)ほぼ毎日朝食を食べる、(3)間食は摂り過ぎない、(4)体重は標準である、(5)運動やスポーツをする、(6)適量の飲酒をする、(7)喫煙はしない。何個あったか?45歳では、0〜3個と6〜7個では、12年も平均余命が違う。最も大切な生活習慣は、禁煙が最優先(アメリカ)。そして食事が最も大事。子宮ガンと大腸ガンは健康診査。そして安全運転。好ましい生活習慣は自己責任で可能か?環境整備も重要。ヘルシーピープルの健康規定要因では、保健医療の役割はたった10%。日常生活習慣が50%。環境の役割が20%、遺伝の役割が20%と言っている。医療の健康寄与度は低い。医療はハイリスク集団(糖尿病とか高血圧になっている人。)へかかわることが重要。
 
 ヘルシーピープル2010では、健康志向行動、地域格差是正、住民参画・地方自治が謳われている。地域の健康格差を計るものとして、平均寿命(今生まれた赤ちゃんが生きるであろう推定生存年数)がある。地域健康水準の総合指標となる。先進諸国の平均寿命を見てみると、日本は世界一。それはなぜか?それは読み書きそろばんであろう。つまり、セルフケア能力が高いということである。男性の平均寿命は世界一だけれど、13年後にはカナダに抜かれそうである。しかし女性は?どこも追いつけない。女性はいつまでもトップをいく。男性と女性で格差があるのは何故か?恐らく「喫煙」であろう。
 平均寿命が延びない県がある。東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、京都府。東京都民が早死する理由は何か?「水道汚染、大気汚染、農薬たっぷりの野菜・みなさんが作る野菜(笑)、ストレス、仕事中心、ローン、通勤、情報不足」。逆に平均寿命が延びた県は?秋田・山形、長野・石川、島根、熊本・大分。ちなみに山形県の長寿理由仮説は、「きれいな水・空気、サクランボ・ラフランス、紅花・すいか・創意工夫、勤勉さ、本間家解体」。
 東京都23区の平均寿命をみてみた。最下位23位だった足立区は、1995年、何と20位となった。これはすごいことなのである。何故か?これはぜひみなさんにお知らせしたい。ボランティア活動の結果と思っている。やらされボランティアではなくて、前向きに、楽しいボランティア活動。世代間交流とか。15年間の保健所の「自主グループ活動支援」の活動成果と思っている。保健婦が小さい自主グループを長年に渡って育ててきた結果である。市民が主体性を持って、自分たちが楽しいことをやる。参加する人みんなが楽しむ姿勢でやってきた。そんなふうに活動してほしい。
 岐阜県の死亡率の場合。男性は長生き・女性は平均以下。県内の市町村でみると、岐阜市は最も短命な市なのである。上流の市ほど長寿、という結果である。きれいな水と空気に感謝である。そう考えると、増毛町もとても大事なものがある!
 健康規定要因の一つとして「社会ネットワーク」がある。知人・友人はいるか、趣味・役割は?生きがい・つながりがあるか?楽しく集まる場があるか?銭湯・地域コミュニティセンター・理容美容・飲食店・公園・・・。とても大事な地域の健康資源。
 もう一つ「主観的健康感」がある。主観的健康感が高いと、その後の死亡率が少ない、という結果が出ている。それは所得との関連も大きいようだ。
 
《私達のかかわった熊本県の蘇陽》
 みなさんの町は、特養ホームに入れるか?寝たきりでも安心か?楽しい人生か?町を愛して町づくりに参画しているか?それを実現したのが蘇陽町。
 蘇陽町は人口5000人、高齢化率25%、自主財源14%の町。医療機関は町立病院、医院、歯科医院。阿蘇岳の麓の自然がきれいな町。1988年熊本県のモデル事業に指定されたことで関わり始めた。当初町長にお願いしたことは、(1)全国的な健康づくりのモデル、として取り組んでほしいこと、(2)住民の役割を重視してほしいこと、(3)そのための予算を確保してほしいこと、(4)やる気のある予防課長の人事(優秀な人を)、(5)それが町長のためになる(選挙)、と話した(笑)。この健康づくり活動の特性としては、指標型の目標設定や住民参画型の計画策定、そして保健計画がそのまま町の基本計画となり、まさに健康日本21地方計画の先取りだった。
 計画策定には、住民と他職種が共同作業ですすめた。医者も行政職員も入って、楽しく、自分の課題として討論を重ねた。この住民参画が最も大切である。町の計画策定を、住民が発表している。職員の方が住民に教えてもらっているのである。その計画内容には、「きれいな水と空気」「ごみ対策」「農家の嫁さん確保」「バリアフリー」「寝たきりでも安心して暮らせること」「寝たきりを予防すること」が盛り込まれており、この保健計画が町の総合計画になったことが、大きな特性だった。目標設定は、理念的目標「誰もが住みやすい町づくり」と、指標型目標を入れたことが特徴的。「特別養護老人ホームを建設」「ホームヘルパー5人雇用」という目標を立てた。しかし理事者からは「目標はあいまいにせよ。“拡充強化”に変更せよ。」と言われる。さあ、あなたならどうやって理事者を説得する?助役への説得方法は?「この計画は住民が創ったんです!」と言う。「あんた、無視すると町長になれないよ!」(町長の場合、“選挙に負けるよ!”)(笑)
 健康推進委員が27名。設置するときに婦人部から「男性が健康に関心がないから、ぜひ男性にさせてくれ」とのことで、みんな男性。名前もかっこ良く「健康むら長」。2年任期なのだが、みんな健康むら長をやめない。何故?みんな全国の講演会に呼ばれている。海外にもいける。何よりやりがいがあるからである。
 健康づくり基盤整備として、施設整備(訪問看護ステーション、特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター)、マンパワー確保(保健婦2名、ヘルパー5名、訪問看護婦3名、社会福祉士1名)。基盤整備状況は(1997年)全国一である。特別養護老人ホームの意義としては、「寝たきり・痴呆でも安心できる」「介護疲れの防止」そして「若者の雇用確保」となったこと(18人雇用できた)、「世代間交流の場」「経済活性材料」となったこと。しかしホーム開所式時の困った問題があった。入所希望者がいなかったのだ。それはそれで良いことなのだが。しかし町長も大きなメリットがあった。天皇陛下の前で保健文化賞を受賞し、全国的に有名になった。そして自分のためになった(特養入所)。
 健康づくり活動の効果はどうか?量的活動効果として、(1)早世予防効果(65歳以下の死亡率):22.1%(1988)→18.2%(1992)→15.6%(1998)!(2)主観的健康感:48.0%(1988)→67.1%(1992)→71.5%(1998)!(3)寝たきり予防効果:19人(1988)→23人(1992)→12人(1998)。(4)痴呆予防効果:20人(1988)→39人(1995)→28人(1998)。痴呆予防は厳しい様子。(5)老人医療費は横這い傾向。県平均は100万だが蘇陽は70万円。
 質的活動効果として、健康生活課の位置付けが向上したこと。福祉課長は企画課長になり、そして教育委員長に。視察団体も増加し、健康むら長に講演依頼が殺到する。視察見学の受け付け条件がある。午後三時以降にすること。何故?宿泊して、健康むら長との交流をすること、そして無農薬野菜を買っていってもらうこと。町にお金を落としていってもらう(笑)。
 町の課題としては、疲れきった介護者(高齢者)=寝たきり予備軍の増加。
 
 蘇陽町から学べたことは、「指標型目標は評価しやすい」「関係者での目標共有化の大切さ」「議会活動の大切さ」「エモーショナルリレーションシップの大切さ」「関係者関係機関のメリットの確認」。組織的な推進条件としては、「住民を中心とする活動」「環境・文化を含む健康」「各機関・各職種で協働したこと」「評価計画を策定したこと」「スーパーリーダーはいない」「話し合いの場の設定」「活動効果の確認」。最も大切な推進条件は「住民のメリット第一」ということ。「早世予防」「楽しい」「生きがいにつながる」「しくみ作りに参画」。
 蘇陽町では、住民と高校生が北欧視察にいってきた。スウェーデンから学べることは、「寝たきり後追いから、発生予防へ」「多様な選択があること」「家族→社会で支える」。北欧の目標は、「より後期高齢でぼけること」。楽しいこと、場の確保整備がすすんでいる。北欧で最も集まる楽しいイベントは?「チークダンス」である!口紅・化粧・身だしなみが大事。
 
 自分の最期は?93歳まで生きて(年金1億円)、1週間寝たきりになって、家族に感謝を述べて、コロリがいい。
 自立した新しい健康づくりとは、「自分のために、楽しく、いきいきと生きる。そのために条件を整えること。」自分の目標を設定して、そのための条件を自分で選択していこう。(健康診査・健康教育、自主グループ活動、余暇活動・趣味・外出、住居・自然環境、システム作り。)自分で出来ないことも明確化しておく。個人だけでは無理。健康づくりの役割には、「自分でできること」「みんなでできること」「行政との協働」がある。相互支援、環境整備が重要。
 早世すると損だよ。元気で長生きしよう。しくみ作りへ参加して、最期はコロリといこう。自分は、自分の健康寿命のために、熊本県蘇陽町計画策定委員・足立区健康福祉計画策定委員・多摩市総合計画策定委員長(居住地)、厚生省 健康日本21計画策定委員。寝たきりでも安心?「特養にいつでも入れる、在宅・施設・病院 選択できる、家族の介護負担が少ない」そのための条件整備をしよう。
 自分の楽しいことを、やはり集まるには楽しくないと。自分のために、自分の長生きのために活動しよう。自分の将来を考えていく。支え合いの地域作り、子どもの教育、主体的にやっていく。行政と一緒にやっていく。少しずつ表現できる!個人の努力だけでは無理。住民主役を確認しながら、進めていこう。
 
 
H13年度 会議など実施状況
日程 つどい 企画 その他 内容 参加数
4月24日   第1回   運営方針・役割の決定 8名・行政4
5月22日   第2回   全町調査の実施検討 8名・行政4
5月30日     行政 三行政機関打ち合わせ会議
事業趣旨・方向性の確認
行政20
課長職含む
6月19日   第3回   調査票検討、第1回つどい企画 8名・行政7
6月28日 第1回     活動方針確認、調査票試しに記入
模擬的にマッチング実施
23名
行政15
7月10日     保健所 保健所企画会議参加(学習会)
「ヘルスプロモーションについて」
講師:室蘭保健所佐々木主任技師
山郷・上野・木村
・三浦・石坂・佐々木
7月18日   第4回   第1回つどいの評価、第2回つどい企画 5名・行政4
8月9日   第5回   第2回つどい企画、全町調査 6名・行政6
8月21日 第2回     講義:「住民参加を軸にしたまちづくり活動から
    見えてきたもの」
 講師:金沢大学 佐伯教授
討議:全町調査について
19名
行政24
町長・副支庁長
・保健所長
9月上旬     調査 広報9月号にお助けマーシー調査
票折り込みし配布
 
9月5日     保健所 保健所管轄別研修会
奈井江町長、函館短期大学斉藤助教授
「ヘルスプロモーション」
豊川・山郷・木村
・羽豆町5
9月28日     幌延町 幌延町保健推進員研修会
お助けマーシーの会実践報告
豊川・山郷・木村
・羽豆・佐々木
10月11日   第6回   調査回収状況、今後に向けて
※登録11名
7名・行政7
10月16日     報告 行政:介護予防事業者担当会議で事例報告(札幌) 佐々木
10月22日
〜26日
  聞き取り
調査
  生きがいデイサービスで聞き取り調査 のべ5日間
5名・町6
11月7日   第7回   調査状況、今後にむけて
※登録75
6名・行政7
11月15日     視察 美唄市保健推進員視察研修 豊川・木村・羽豆
・三浦・堀・佐々木
12月5日     報告 行政:倶知安保健所地域ケア研修会で事例報告 佐々木
12月6日     報告 北海道中央研修会で事例報告(札幌) 佐々木
12月27日   要項
チーム
  お助けマーシーの会の要項(しおり)作成 行政3
(堀井・水野・佐々木)
1月10日   実践
チーム
  マッチング作業、連絡調整 山郷・佐藤・三浦
・石坂
1月16日   第8回   チーム進行状況報告・検討、
地域通貨について学習
※登録90
5名・行政7
1月30日     保健所 お助けマーシーの会学習会
「地域通貨について」
講師:北海道東海大学 乾助教授
豊川・山郷・海東
・羽豆町5
2月18日   第9回   実践状況報告、第3回つどい企画 4名・行政3
2月25日 第3回     実践報告8事例、気兼ね等の課題に
ついて意見交換
24名
行政18
3月5日   第10回   講話 「まちづくり活動に住民が参画することの 意義と全国的動向」
金沢大学 佐伯教授
1年の振り返りと今後についてグループワーク
8名・行政6
3月6日     行政 三行政機関打ち合わせ会議
事業評価について
行政17
 
お助けマーシーの会登録 115名
  日程 内容 提供者 してもらった人 備考
1 1月31日(木)
2月14日(木)
図書館の貸出・返却
〜家と図書館の往復
市村浩子さん 松野吉雄さん
(阿分)
自分だけ申し訳ない気持ち・とても助かる気持ち
2 2月10日(日) 絵手紙一緒にしましょう
〜羽豆宅
羽豆美津子さん 安藤由美子さん 自然に手土産持参(気兼ね)/道具提供者
3 2月13日(水)
10:00〜12:00
けんちん汁講習会
〜文化センター
高齢者5名 7名 安保さんは3日前から用意/簡単でコツも分かり勉強になった
4 1月24日(月)
10:00〜12:00
包丁とぎ講習会
〜老福センター
桂弘之さん 6名 世代間交流に。包丁がよみがえった
5 1月31日(木)
午前中
生きデイボラ
〜老福センター
佐藤景子さん   気軽に参加できた
6 1月28日(月)
〜2月2日(土)
降雪時6:15〜
除雪ボランティア
〜ゴミステーション当番
佐藤、山郷、
斉藤幸恵
高齢者2名 継続的な除雪は難しい/地区の中でできれば・・・
7 2月3日(日) 初心者のパソコン
〜羽豆宅
堀江琢磨さん 羽豆定雄
・美津子
 
8 2月18日(火)
AM1時間
総合的な学習の時間
・小学生の高齢者訪問
小学生3名 独居高齢者3名 世代間交流に。高齢者は待ち望んでいたし、小学生もとても良かった。
8件 のべ 提供者 16名
        受け手 24名
        合計 40名







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