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クレモナにヴァイオリン工房を構えている松下敏幸氏。松下氏は1982年25歳でクレモナに渡り、クレモナ国際ヴァイオリン製作学校マエストロ試験に合格し、1988年のクレモナ・トリエンナーレ、ヴァイオリン・チェロ両部門でそれぞれ銀メダルを獲得。今では、クレモナ国際ヴァイオリン製作学校にて後進の指導にも当たっている。楽器製作仲間との会話の中には、今でも必ず楽器の話が出てくるそうで、そういうところにクレモナという土地の「楽器製作の血」を感じるという
 
 街ではこの10月、街を挙げての一大イベントである「クレモナ・トリエンナーレ」が開かれた。3年に一度の弦楽器製作コンクールで、既に「LIUTAIO」として一線で活躍している内外からの参加者はもちろん、一人前の職人をめざす若者たちの晴れ舞台でもある。製作コンクールの最終選考と受賞記念演奏会が行われた「ポンキエッリ劇場」は、19世紀初頭に建設され、1,250の客席を持つ馬蹄型の劇場。元々はコンコルディア劇場と呼ばれていたが、歌劇「ラ・ジョコンダ(1876年初演)」などで名声を築いた地元出身のロマン派作曲家の功績を称えて19世紀末に改名された歴史を持つ。
 もちろん、今も「LIUTAIO」に憧れて、この街に集まってくる人は後を絶たない。ガリバルディ通りにある、国立のアントニオ・ストラディヴァリ弦楽器製作学校には随時180名の生徒が通い、5年制のカリキュラムが敷かれている。教える側は「クラス15〜20名の生徒に対して、一人の指導者ではとても間に合わない」と天を仰ぎ、今は消滅してしまったかつての少数徒弟制度に思いを馳せる。ただ、そうした学校を卒業したからといって、一人前の「LIUTAIO」になれる確率は極めて低い。周りから認められるまでになるには、10年を一単位とした努力の積み重ね、それを無欲に継続できる才能。そしてやはり芸術的な天分が必要であることはいうまでもない。
 
▼ストラディヴァリ博物館
ストラディヴァリの銅像が出迎えてくれる。ストラディヴァリの自筆の設計図、模型、仕事道具などが展示されているが、中でも弦楽器コレクターであり専門家であったサラブーエ伯爵の収集品が一番の見どころ。ストラディヴァリが作成したヴァイオリン「イル・クレモネーゼ」(1715年製)など市庁舎に展示されていた楽器は、現在このサロンで見ることができる
 
 
▼かつてのストラディヴァリの工房
ガリヴァルディ通りに面したストラディヴァリの工房があった家。今は1階部分が雑貨店になっている。ストラディヴァリがアマティの影響を大きく受けた1667年から1680年までの時期、ここで製作を続けた
 
 
▼ポンキエッリ歌劇場
1808年よりあるクレモナの街に唯一あるオペラ劇場。3年に一度開かれている弦楽器製作コンクール「クレモナ・トリエンナーレ」開催の場所。馬蹄型で1250席
 
 
▼市立博物館
16世紀に完成した建物の内部に設けられている市立博物館。内部は、中世のフレスコ画をはじめイタリア絵画諸派の作品が展示された絵画館や宝物館、考古学博物館など幾つかに分かれており、ストラディヴァリ博物館はこの中の3階部分にある







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