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聖徳太子の十七条憲法とは
 こんな話をし始めるといくらでもあるのですが、時間が来ましたので締め括りましょう。そういう日本精神が、いったいいつからできたのか。わかりやすく言えば、聖徳太子の十七条憲法ですが、これは不思議なことに、今日でも廃止されてないんですね。廃止手続がされていないのですから、今でも法として生きているのです(笑)。
 さて、西暦紀元六〇四年、聖徳太子が十七条の憲法を発布いたしました。
 その解釈については様々な学説があり、本もたくさんでていますが、本日はサービスとして思いきりわかりやすく解説いたします(笑)。
 一に曰く、和をもって貴し(とうとし)とせよですね。
 二に曰く、あつく三宝を敬え。つまり仏と法律と坊主を敬え。
 三に曰く、詔(みことのり)を受ければ必ず謹め。命令を聞けということですね。
 四に曰く、お役人たちはみんな礼儀正しくせよ。礼をもってもととせよ。
 五に曰く、接待を受けて飯を食うな。欲を捨てろ。訴訟(裁判)はきちんとせよ。
 この辺から後は全部、役人に対する訓示になっていくんです。十七条の憲法というけど、大方は役人に対する訓示なのです。
 六に曰く、悪いやつはやっつけろ。善は勧めろ。これは昔からの伝統である。
 七に曰く、人おのおの任務があるぞ。自分に区分された仕事はきちんとやれ。
 八に曰く、朝は早く出勤して、夜は遅く去れ。・・・役人に言っていると思えばよくわかります。
 九に曰く、信はこれ義のもとなり。事ごとに信あれ。信用が大事です、信用を壊してはいけません。・・・金融・証券業を監督していた大蔵省の人にぜひ読んでもらいたい。いいかげんな指導を乱発するから大蔵省は信用がなくなって、財務省にされてしまった。聖徳太子の憲法を忘れた罰ですね(笑)。
 十に曰く、憤りを断ち、怒りを捨て、人のたがうことを怒らず。人が自分と違っていても怒るなと言っている。
 十一に曰く、明らかに功過(こうか)を察して賞罰を必ず当てよ。勤務評定をちゃんとやれ。働かないやつを見逃すな。働いた者はきちんと褒めろ。
 十二に曰く、国司国造、百姓からあんまり税金を取るな、重税を取るのはよくない、と言っています。
 十三に曰く、自分の仕事をきちんと心得てやれと言っている。つまり、技能(スキル)を磨けと言っているわけです。
 十四に曰く、群臣百寮、嫉妬あるなかれ。これはただの道徳ですけど、人のことを嫉妬なんかするのではありませんよ、というわけです。
 十五に曰く、私に背きて公に向かうは、これ臣の道なり。公私混同するな、私は捨てて公のことを一生懸命やれと言っている。
 十六に曰く、民を使うに時をもってするは、いにしえの良典なり。民に何でもかんでも言いつけるな。民には民の都合がある。今は種をまくときだというとき、こっちへ来て公共事業をやれなどと言ってはいけない。民の都合に合わせて命令せよと言っている。
 十七に曰く、それ事はひとり断ずべからず。集団合議制がよいと言っているわけですね。独裁はよくないと言っている。
 ―というのが十七条の憲法で、言いたいことは、十七条の憲法など見たことないと思っていても、こうして聞いてみると、もともとわかっているという気がしませんでしたか?何となく日本中にこれが浸透しているということですね。つまり日本人が共有するセンスであって、これがいろいろなところにあらわれてくる。生活にも産業にも、教育にも、社会にも、そしてマンガ・アニメにも。
 話を広げれば、まだ廃止されていないのですから、公務員の人はこれをちゃんとわかっていますか? ということです。というのも、最近突然、日本中がこれを言い出して、公務員倫理法をつくったが、それは日本中が急に十七条憲法の精神に立ち返っているということです。不思議なものです。
 今、急に大掃除の時代になってきましたが、そのセンスは一四〇〇年前までさかのぼることができるというわけです。
 そして、もう一つ大事なことを付け加えますと、十七条憲法をつくったとき、聖徳太子とそのスタッフは当時の世界最高の宗教(=社会思想)のすべてに通じていたということです。
 その上で自主的に取捨選択しました。仏教と儒教はとるが、道教はとらないと決めました。そう決めた気持ちの根本は、日本の神道だったのでしょうか。私の力ではわかりません。縄文時代からの日本人のセンスがもうでき上がっていたと想像しています。
 それもまた、精神から見た日本の底力です。







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