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新規範発見塾 レクチャー・メモ vol.15

 事業名 先駆的情報の創出・発信事業
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


北方領土はなぜ戻ってこないのか
 明治になると、日本人は「日露協商論」で話し合い解決をしようとします。しかし日露間に共通の利益はないということがわかって、日露戦争となります。幸いにして勝ちました。
 第二次大戦後のソビエト、ロシアと日本との関係を言いますと、戦後間もなくのころは「全面講和論」でした。話し合い解決です。やがてそれが終わって、日米安保条約。アメリカだけを頼り、ソ連とは対決をする。冷戦の間は西側のパートナーと言われて喜んでおりまして、幸い勝ったほうに属しました。そして、現在は北方領土が問題だと言っております。
 私は「北方領土は問題ではない」と、かねてより言ってきました。「問題だ」と言っては、相手の術中にはまる。かえってロシアを利する、とんでもないことだと思っています。つまり、かつては何でも話し合いで解決しようとし、次はアメリカに頼り、そして今は感情的な問題を話し合いで解決しようとしている。手段は「経済援助をするぞ」ですが、まことに次元の低い日本・ロシア関係になっていると思います。
 実際にやっていることは北方四島へ何かプレゼントをするとか、寄附するとかばかりです。そうすれば向こうは日本を好きになって、円満に返還されると思っているが、「そんなことは絶対ありません」と私が言っても、みんな「いや、いずれわかってくれる」。雪解けがあると信じている。
 しかし結果から言えば、今のところ戻っては来ていない。そして、返還の見込みも立たないのです。
 
まず話し合い解決を目指す国・日本
 さて、日露戦争のときには日英同盟ができました。これは共通の利益があったわけです。イギリスの立場は、このままではロシアがアジアをとってしまう。ロシア勢力の南下を防ぐことは独力ではできないから、日本にやってもらおう。ただし日本に「金はやるぞ、しかし後で返せ」なのですね。それから軍艦を買いたいなら、アルゼンチンの注文でイギリスで建造中の軍艦をあっせんしてやるぞとか、いろいろ手伝ってくれました。もちろんありがたかったのですが、しかしそれはイギリスにも利益があることでした。
 では、日露協商というのはどんな利益があったでしょうか?ロシアはどんどん南下して、清国の領土を奪い、満州をとり、遼東半島をとってだんだん万里の長城を越え、北京や朝鮮半島も全部ロシアのものにしようとしました。朝鮮半島の一番先にある島をロシアに貸せと言った。そのとき朝鮮は断るほどの根性がありません。朝鮮が独立していないことが日本の迷惑でした。
 もし朝鮮が独立していてきちんと断り、清も断り、日本も断る。三つ全部が断っていれば、その後のようなややこしいことにはならないのです。清は自分の領土をとられているのに「局外中立」で「私はいいですよ」と言うから、日本が「それは困る」と兵隊を出さなければいけなくなりました。
 日本とロシアが戦っているのは清の領土の上でした。
 日本はひとりで何もかもやらなければいけなかった。そしてなんとかロシアを追い払いました。ではその前、日露協商ではいったい何を決めれば日本の利益になったでしょうか。多少の時間かせぎ以外は何もなかったと思います。
 ここで言いたいことは、日本はそのように、一応は話し合い解決を目指す国だということです。それがまず前提です。
 
日本とソ連の対立はアメリカに好都合
 アメリカも絡めて見ると、こんな話になります。
 明治時代になって、黒田清隆が北海道開拓をするが、北海道へ日本人を一生懸命住まわせようとしたのは、ロシアの南下を防ぐためでした。黙っていると、ぱらぱらロシア人が入ってきて住み着いてしまいますから。
 黒田清隆は賢い人で、北海道開拓使に任命されると、さらにアメリカ人を引っ張ってきて住まわせようと考えました。そうすればロシアは侵略をためらうからです。アメリカの軍事力だけが頼りです。ブラウンという農務長官がアメリカ式大農業を持ってきて、酪農を北海道に広めてくれます。都市計画も持ってきたので、札幌は碁盤の目のような街並みです。ついでにキリスト教も来ましたから、北海道へ行くと教会が多いですね。
 ともかく、アメリカ人を入れておいたほうがよいという知恵があった。平和的「外国利用」という知恵があった。今はあるでしょうか、ないでしょうか?皆さんも考えてください。
 さて第二次大戦後の一九五〇年、日本で「全面講和か単独講和か」と言っていたとき、アメリカは黙っていて何も言いません。それはヤルタ会談等の秘密条約があり、それを踏まえてのサンフランシスコ条約という流れがあるから日本の応援ができない。それらについては長くなるので機会を改めます。とにかく、この辺が今の日本の出発点ですね。
 さて言いたいことは、アメリカとしては日本とソ連が対立してくれているほうが嬉しいということです。
 要するに、自分以外の国はお互いに仲が悪いほうが具合がいいのです。だから「みんな仲よく」などという外交をする国は、本当はありません。一時的、例外的にあるだけで、あとは全部喧嘩させておけというのが実際の姿です。
 喩えていえば、小学校、中学校のころの学校生活を考えればわかるはずです。三人か四人だけ仲よしをつくり、自分の周りだけ固める。クラス全部で仲よくしましょうと言う人は先生だけです。国連と一緒です(笑)。みんなが言うことを聞くのは先生がいる間だけです。先生が教室から出て行くと、すぐもとへ戻ります。国際関係論なんて難しいことを言うけれど、小学校のほうがよっぽどよくわかる。子供ですから無邪気に、侵略でも、略奪でも、欲得でも、喧嘩でも、みんなむき出しに現れます。国際関係と言ったって、その本質は同じです。口がうまくなり、礼儀作法は発達していますが、しかし欲得はちっとも変わりません。
 
北方領土返還の交渉はモスクワよりワシントンで
 アメリカはずっと日ソ対立は歓迎であって、自分は黙っています。
 なぜ黙っているかというと、北方領土はアメリカがソ連にくれてやったからです。そのいきさつは省略しますが、北方領土返還がもし本当に国民の悲願なら、外務大臣はワシントンヘ行くべきです。モスクワだけではラチが明きません。
 まだソ連だった時代、モスクワ大学の日本学の教授で、その人は日本語ができてもちろん歴史もよく知っている人と議論をすると、「あれはアメリカがとってよいと言うからとったのであって、日本からとった気はない。当時は日本中アメリカのものであって、一部を我々に分けてくれた。私たちはアメリカからもらったのだ」と答えました。ワシントンへ行かなければラチが明かないと再確認しました。
 つまり日ソ対立はアメリカが希望していることですから、その方向で話していればアメリカに褒められるわけです。叱られる心配がない。しかも返ってくる見込みなんか全然ないが、騒いでいれば格好いい。
 モスクワのインテリと話をしていると、「結局、日米安保条約があるからだ」という話になります。日本にはいくら失礼なことをしたって平気だが、日米安保条約があるからそうもいかない。日本独自の力とか、日本への礼儀とか、道徳とか、そんなことは一切関係なく、アメリカ軍がいるからだというわけです。
 さて面白いのは、そんな議論をした相手の住宅事情ですが、ソ連人はモスクワに住みたいわけです。ところが、なかなかモスクワの住民票をくれない。しかし、自分はもらえたから幸せだと言うのですが、そのモスクワの住居はというと、日本の公団住宅とそっくりなんです。なぜかというと、日本の都市計画や建設の人はみんなソ連へ勉強に行ったからです。大量供給という点では、ソ連が一番経験がありましたから。
 野原の中に豆腐を切ったような四階建てのアパートがぼんぼんと建っていまして、塀で囲ってもいなければ植木も何もない。殺風景な光景ですが、要するに社会資本はないのが社会主義だと知りました(笑)。しかし、そこへ住めるというのが飛び上がるほど嬉しいことなのです。行ってみると「えー」というようなものですけれども。日本人に生まれてよかったなと思いました。
 一人当たり一四平方メートルの住宅を与える。日本の建設省は、わが国では一人当たり一七平方メートルの公団住宅をつくると威張っていたころです。戦勝国は一四平方メートルで、戦敗国は一七平方メートルです。社会党や労組の人がソ連に招待されて視察に行くが、帰ってきたら何にも言わなくなるという時代でした。
 オリンピックで金メダルをとったような人は、アパートがもらえて自動車が買えます。それをぽんと置いておくと、夜の間にワイパーからヘッドライト、みんなとられてしまうから、一晩中窓から下を見おろしていないといけないとは、人民も略奪主義でした。あるいはそれがホントの共産主義かと思いました。
 人のものは自分のものというわけです。そういう相手に一生懸命「話し合いをしよう」と言うのは見当違いだと痛感しました。
 帰ってくると新任の安倍晋太郎外務大臣から夕食に誘われました。ご子息の晋三さんが会社を辞めて秘書官になって横におられました。私の意見は“ソ連とは口をきくな”でした。話し合いをしてトクをとれるような日本人はいない、というのが根本認識です。







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