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アメリカこそ侵略主義で略奪主義
 アングロサクソンのルーツにはノルウェー人がいて、これは海賊による略奪が本性、住みついてこつこつ農耕業をやるという精神はない。こつこつやっている人を騙して、軍事力で奪い取る。彼らがアメリカに行ったとき、まことに都合がよかったのは略奪する相手がたくさんいたのです。しかも、強い相手がいなかった。インディアンしかいない。大喜びで思う存分アメリカ中を略奪した。インディアンの人口は激減しました。殺してしまったり、食べていけない貧困な土地へ押し込めてしまったからです。
 だから私がアメリカの人に「日本が侵略主義で略奪したと、あまり言わないほうがいい。自分だってそうでしょう」と言うと、「わかっているけれど、もう昔だからいいだろう」と答える人がいたので、「では、歴史は五〇年以上さかのぼらないことにすると、国連決議をしなさい。そうしないと、大変なことになりますよ」とアドバイスしました。実際、歴史をもし二〇〇年さかのぼってもいいということになったら、白人は生きるところがなくなってしまう。全部ヨーロッパへ引き揚げなければいけません。
 そんな議論はやればやるほど、白人は不利になります。アメリカでも黒人が「先祖がひどい目に遭ったのを賠償しろ」と裁判を起こしていて、ひとつでも認めたら大変なことになります。
 略奪の過去はアメリカ人のほうが圧倒的に多いわけで、日本人もありますが、この五〇年間はしていません。なんで日本が「謝れ、謝れ」と言われるかといえば、この五〇年間、まったく侵略戦争をしていないからです。日本をいたぶろうと思えば、第二次世界大戦までさかのぼらないと言えないから、いつまでも繰り返し言われるのです。アメリカのように、その後何度も戦争をしていると、新しい話がたくさんあるので第二次世界大戦のときいかに悪いことをしたかという声は、もう出てこない。
 例え話でいうと、若いとき一回だけ浮気をした男は、奥さんにいつまでもそれを言われる(笑)。その後、たびたび浮気をしておけば、そんな昔のことは言われないのにと思います。日本の外務省も、アメリカへ行ってそう言えばいいのです。このようにわかりやすく言うのが外交術です。それを言わずに、ただただ謝るからいけないのです。
 さて、ビル・トッテンさんの本の中に、ニューヨークという街ができたころ、ユダヤ人、オランダ人などがヨーロッパから渡っていって、銀行業の店を出す。その証券金融資本はどんなに悪いことをしたかが細かく書いてあります。それを読むと銀行業の本質はこうだとよくわかります。
 日本人が考える銀行業と違うのです。彼らは、銀行業とはそういうものだという常識があって、その上に「我が銀行はフェアプレーです」と言っていることを知らなければなりません。フェアプレーでないのが普通だ、という常識を持ってつき合わなければいけないのです。
 
自由資本主義をよく知っていた大正時代の日本人
 日本人も大正時代はその常識がありました。
 銀行業というのはインチキだ、人を騙すものだ、気をつけろと知っていたのです。
 なぜなら、大正九年に日本中の銀行は二五〇〇もあった。四六都道府県だと、県一つの中に五〇ぐらいあるのです。「なら自分も」と看板を出すわけで、銀行の看板を出せば誰でも銀行です。ちょっとした町の金持ちが銀行という看板を出して、机を置いて帳面を広げる。集まった預金は自分の事業や生活に流用してしまう。そこで倒産か合併。昭和十五年には五〇〇になって、その間に二〇〇〇の銀行が合併、倒産しているから、銀行に預けるのは危ないと身にしみて知っていました。
 しかし、昭和十五年に五〇〇になってからは、長い間一行もつぶれない。預金を踏み倒した銀行は一つもない。昭和十五年、つまり一九四〇年以降はずっと大丈夫。六〇年間大丈夫ですから、日本人は預金というのは大丈夫なものだと思っております。しかし、それ以前の日本人はちゃんと用心しておりました。昔の日本人のほうが賢かったと思いませんか?
 日本にも「自由資本主義」が昭和十五年まではあったのです。二五〇〇人いた頭取が五〇〇人にまで減る。では、二〇〇〇人の頭取はどこへ行ったのか。当時の大阪朝日新聞が連載記事を書きました。大正時代、第一次世界大戦後の不況や金融恐慌でばたばたと倒産するとき、銀行の頭取はどういう運命をたどったか。
 その記事を読むと、けっこう刑務所に入っているのです。しかるに、今は一人も刑務所に入らないとは何事でしょうか。日本国の道徳は低下しました。かつての資本主義のほうが、よほど立派だったと思います。
 最後にこんなエピソードも付け足しておきましょう。マルクスは『資本論』の第二巻で、資本家は誕生の前、泥棒であった。インドから泥棒し、中国から略奪した。あるいは奴隷貿易で、アフリカ人を南北アメリカに運び込む。奴隷マーケットの売買記録では二〇〇〇万人です。それをこき使って、儲けていく。そうやってつくった金で、マンチェスターの町をつくった。マンチェスターの町のきらびやかな商工会議所のビルディングも、道路のペイブメントも、すべて黒人の血と汗でできているのだ。これは原始的蓄積段階といって、最初に元手をつくるのは大変なことで、悪いことをしなければ元手ができない、ということを書いています。
 ところが二宮尊徳は変わった人で、働け、働け、働いて元手をつくりなさいと教えた。これが日本なのですね。
 資本主義に対する感覚が、根本的に違うのです。そのことも知っておかなければなりません。







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