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新規範発見塾 レクチャー・メモ vol.15

 事業名 先駆的情報の創出・発信事業
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


元老院の共和制死守とアメリカの類似性
 そこでシーザー(カエサル)が出てくるわけです。シーザーは戦争の天才で、周りを征服してその戦利品をローマへ持ってくるから、「ういやつ」というわけです。
 さて、そこで有名なのが「ルビコン河を渡る」というエピソードです。元老院は、いかなる軍隊もルビコン河を越えてローマへ近づいてはならないと規制していました。味方の軍隊もです。越えたらクーデターで、反乱軍扱いです。これはソ連も同じでしたね。スターリンからゴルバチョフまで、モスクワ五〇キロ圏内に軍隊は置いてはいけないとしていた。味方を信用していないわけです。
 その点日本は、天皇陛下の周りの東京に軍隊がたくさんいました。反乱を起こすことはないと信用していたわけですね。これだけでも世界歴史の中で珍しいのです。麗しい国ですね。
 さてシーザーは、ルビコン河を渡ってローマへ入ります。そしてローマ市民の人気を得てどんどん権力を集めていくので、元老院はシーザーを暗殺してしまいます。共和制を守るためには死んでもらわなくてはいけないと「憂国の情」にかられたからと説明します。
 そして、共和制はまだまだ続くというわけですが、しかしこれを見ているとアメリカも今は同じではないかと思います。自由と民主主義が一番良いもので、最終勝利で、これでもう歴史は止まった。これ以上は動かない、などと言うのは同じ現象ではないでしょうか。少なくとも、そのような本を書く人はいいとして、みんなが喜んでたくさん読んだというあたりがおかしいのです。
 さて、シーザーが死んだ後、遺言状が公開され、自分のおいのオクタヴィアヌスを後継者とすると書かれていました。
 そのときシーザーは五十五歳で、オクタヴィアヌスは十八歳。シーザーは暗殺されるとは思っておらず、あと一〇年ぐらいは生きるつもりですから、オクタヴィアヌスもそのときは二十八歳になっている。立派な後継者になると思っていたのでしょう。しかし思いがけず、そのようなことになってしまう。
 
初代皇帝となるオクタヴィアヌス
 不思議なもので、ローマという国は若くても優秀な人間はどんどん使うのです。オクタヴィアヌスも地位を与えられて、もともと政治的才能がすごかったものですから、どんどん出世して三十歳のときは事実上の独裁者、ほとんど全権力を一身に集めてしまうわけです。ただし手続的には元老院が承認する形ですが。
 このオクタヴィアヌスは、さすがはシーザーが見込んだだけの天才で、紀元前二七年に驚くべき宣言をします。「元老院の皆さん、私は全権力を返上いたします。ローマは共和制でなければいけません。私の持っている権力とか、称号、資格を全部お返しいたします」と言うのです。そのまま続けていると、シーザーのように殺されると思ったのが大きな理由でしょう。
 それで元老院はみんな大感激して、彼にアウグストゥスという称号を与えます。「聖なる人」という意味です。ただの尊称であって権限はないのですが、しかしそう呼び続けていると、やはりそこに敬意が集まってくるのです。そしてアウグストゥスはその後、権威や実権をたくみに集め続け、初代皇帝になってしまうのです。
 「全軍最高指令権」も握ります。属州の統治も元老院の仕事でしたが、しかし統治するためにはそこへ行かなくてはいけない。田舎へ行くのは嫌だから、「アウグストゥスさん、あなたやってくださいよ」と言ったとき、彼はまた即座にイエスと言わないのです。「気候がよくて、食べ物が美味しくて、女性がきれいなところは元老院の方がやりなさい。それ以外の残ったところは私がやります」と言う。
 すると「おお、大したものだ。ういやつ」というわけですが、しかし辺境の統治にはローマ軍団すべての指揮権がないと不便です。それを認めてもらうためという狙いがあったのです。
 すっかり乗せられた元老院は、全軍最高指令権を授与します。しかも辺境のほうが兵隊が強いわけです。そこの統治者になってどんどん実力をつけていくわけですが、こうしたエピソードを言えば幾らでもあるので先に進みましょう。
 
力のバランスの上に立つパックス・ロマーナ
 さて、ここからが「パックス・ロマーナ」の時代です。
 元老院が「共和制の勝利である。共和制とは自分たちのことである。自分に反対する者は許さぬ。自分の言うとおりやれ」と言う中味は、要するに既得権益の保護ですから、ローマ市民ばかり大事にする。周りは反乱を起こす。周りが反乱を起こしたとき、鎮圧に行く人がいない。連戦連敗する。あるいはゲルマン人が侵入してくるが、それを身を捨てて守る人がいない。
 つまり共和制は勝っていないわけです。あるいは共和制は勝ったかもしれないが、元老院は勝っていないのです。連戦連敗になって初めて、元老院は「アウグストゥスさん頼みます」となる。
 すると、アウグストゥスが結局皇帝になってしまうというローマの歴史を述べましたが、このアウグストゥスは元老院とのバランスをとって良い政治をしました。だから皇帝にはなったけれども、中身はローマの共和制をほどほどにやったのであって、それが三〇〇年続いた。それを「パックス・ロマーナ」と言うのです。
 つまり、力と力はどこかでバランスしていなくてはいけないのです。
 バランスの上に立って、ローマの平和とローマの繁栄があったというところまでを知ったうえで「パックス・ロマーナで世界は幸せになった。これからパックス・アメリカーナで世界は幸せ」だと言っているのかどうかです。
 アメリカがそうなっているか、試しに比較してみてください。「パックス・アメリカーナで世界は幸せになる、中近東は幸せになる」と言いますが、アメリカの中にパックス・ロマーナのような自制心があるでしょうか? あるいは、対抗勢力はあるのでしょうか?
 ローマと同じだと言うなら、同盟国や属州の人にローマ市民権を与えねばなりません。元老院のメンバーに何人かは登用しなくてはなりません。トルコ、イラン、イラク、エジプト出身の下院議員や上院議員がワシントンに集まるようになると・・・まで予想しての発言なのでしょうか。
 アメリカの軍事力は世界最高です。だれも手向かう人はいません。中国だって鎧袖一触でしょう。
 では中国と戦争して勝って、その後どうなるでしょうか。世界制覇を完了し、それが最終戦争となるでしょうか? それが民主主義と自由主義の最終勝利となるでしょうか?
 私は必ず揺り戻しがあると思います。アメリカにヒトラーが誕生します。あるいは毛沢東がアメリカに誕生します。歴史に学べというなら、そういう見方になります。
 歴史は終わりにはなりません。対抗あるいはバランスがなくなったら、本性をむき出しにしてくるものです。







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