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吟剣詩舞の若人に聞く[第50回]
鈴木恵美子さん(十一歳)●岡山県赤磐郡在住
(平成十四年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞幼年の部優勝)
母:鈴木正恵さん
師:井本粋鴛さん
宗家:藤上南山さん(菊水流剣詩舞道本部)
 
鈴木恵美子さん
 
もって生まれた、豊かな情感が魅力の逸材
 初めての全国大会で優勝を手にした鈴木恵美子さん。類まれな情感をもち、これからの飛躍が期待される彼女に、優勝のこと詩舞のことを、宗家、ご家族を交えてお話をうかがいました。
 
――優勝した時の気持ちは?
恵美子「とても嬉しかったです。名前を呼ばれた時は本当に驚きました」(笑)
――決勝大会の踊りは上手く行きましたか?
恵美子「はい、表情をつけるのが自分なりにできたと思います。それから、止めなければいけないところがちゃんと止まったし、決めるところが決められたので良かったと思います。やり終わった後は、やった!という感じでした」
――優勝する自信はありましたか?
恵美子「まったくありませんでした」(笑)
――点数では何点くらいかな?
恵美子「八十点」(笑)
――満点に二十点足りないのは何故?
恵美子「最初のほうで、なかなか震えが止まらなかったからです」(笑)
藤上「震えが止まらなかったの?」(笑)
――どれくらいで落ち着いたの?
恵美子「半分くらい経ってからです」(笑)
――全国大会に出たのは初めて?
恵美子「はい、そうです」
――初めて出て、優勝はすごいね?
恵美子「ありがとうございます」
――宗家がご覧になっていて、いかがでしたか?
藤上「稽古の時ほど情感は出ていませんでした。舞台も大きいですし、緊張感もあったのでしょう、もう少し情感が出ていればいいなと思いました」
――優勝にはお姉さんもビックリするね?
恵美子「はい」
藤上「お父さんが一番ビックリするのではないでしょうか」(笑)
――コンクールの前はどうでしたか?
正恵「東京に来たのが初めてでしたから、その方に気をとられていましたね」(笑)
――東京で何か見ましたか?
恵美子「浅草に行きました」
――全国大会に出るといいことがあるね?
恵美子「はい」(大笑)
――詩舞をはじめてどれくらい?
恵美子「二年と少しです」
――なぜはじめたの?
正恵「姉二人がしておりまして、きれいな衣装を着て宗家先生のリサイタルで踊っているのを見て、私もこの着物が着たいといいだし、それで始めることになりました」
――それでは着物に惹かれたの?
恵美子「はい」(大笑)
――最初の恵美子ちゃんの印象はいかがでしたか?
藤上「素直な子です。言ったことは、ほとんどクリアできます」
――お姉さんがしているという影響もありますか?
藤上「それもあると思います。コンクールには出てきていませんが、お姉さんも優秀ですよ」
――そのほかに特徴的なことは何ですか?
藤上「情感を持って生まれた子だと思います。これは珍しいです。そういうものは教えてできるものではありませんし、その子に備わったものですから、大きな武器になりますね」
正恵「姉と歳が離れていますから、生まれた時からお稽古場に連れて行きました。だから詩舞を見て育ったところがあり、そうした環境の中で、情感も自然に育ったのではないかと思います」
 
優勝決定の知らせを受け、インタビューに答える、
写真(右)より藤上南山宗家、鈴木恵美子さん、
母の鈴木正恵さん
 
――お稽古は大変ですか?
恵美子「何回も怒られるような時は、辛いです」(笑)
――詩舞をしていて楽しいですか?
恵美子「はい、楽しいです。がんばって踊りをして、優勝できたときは特に楽しいです」(笑)
――勉強とお稽古の両立は大変ですね?
恵美子「何とかやっています」(笑)
――これから恵美子ちゃんに期待することはありますか?
藤上「流派としての課題曲がたくさんあり、時間はかかりますが、それを一つひとつマスターしてもらい、将来は先生になっていただきたいと思っています。十年もすれば先生になれます」
――先生になるの?
恵美子「・・・」(笑)
藤上「少年の部で優勝した長岡加奈ちゃんも、将来は先生になると言っているよ」(笑)
――詩舞をやらせてよかったと思う点は?
正恵「礼儀作法も教えていただけますし、もともと長女は姿勢が悪く、それを直すために詩舞を始めたのですが、姉妹とも姿勢がとても良くなりました。また、けじめのある生活ができるようにもなりましたね」
藤上「着物をたたんだり、袴をたたんだりできる?」
恵美子「はい、できます」(笑)
 
表彰式の直後喜びの恵美子さんを中心に
写真(右)師の井上粋鴛さん、(左)母の
鈴木正恵さん
 
――お姉さんと詩舞について話す?
恵美子「話すというか、駄目なところを直してくれます」
――小さい子を見て、この子は伸びるかどうかわかりますか?
藤上「わかりますね。でも、伸びる子、器用な子に限って何でもできるので、途中で辞めるケースが多いですね(笑)。特に中学くらいになると勉強が忙しくなって、本人よりお母さんたちが、勉強が遅れたら困るからと辞めさせる場合があります。一週間に一度のお稽古だから、大変ではないと思うのですが」
――受験などと重なったら、どうしますか?
正恵「のんびりと育てたいので、好きなことをやらせたいと思います。本人が踊りをしたいなら、ずっと続けてもらいたいです」
――好きなことをしてもいいらしいよ?
恵美子「・・・」(笑)
――今後の恵美子ちゃんのテーマは何ですか?
藤上「情感はもうできていますから、活発に動くということです。子供らしさはまだまだ必要ですから、その子供らしさ、をどのようにして出すか、その辺がテーマになると思います」
――来年は少年の部だね?
恵美子「挑戦するつもりです」
藤上「少年の部になるとライバルが多くなるから、大変だと思います」(笑)
――少年の部の舞台は見ていましたか?
恵美子「はい、みんなすごく上手でした」(笑)
――これからの目標はありますか?
恵美子「先生たちのような踊りがしたいです」
藤上「この年齢よりも上のクラスがあり、リサイタルではその子たちと群舞をすることになるので、そんなことも目標になるでしょう」
――最後にひと言お願いします。
恵美子「本当に優勝できるとは思っていませんでしたが、優勝できてとても嬉しかったです」(笑)
――本日はお忙しい中、インタビューにお答えいただきありがとうございました。これからのご活躍に期待しております。







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