日本財団 図書館


今月の詩(10) 平成十五年度全国吟詠コンクール指定吟題から
【幼年・少年・青年の部】(続絶句編)(10)
雪梅
方岳
 
 
《大意》梅が咲いても、降雪がなければ、風景が生き生きしない。降雪があっても、詩心が起こらないようでは、せっかくの風景でも人を俗なものにしてしまう。夕暮れどきに詩ができあがった。そのとき空から雪が降り始めた。梅と雪と詩の三つを併せて、これで完全な春となり、春の情趣を十分に味わえるというものである。
 
【一般一部・二部・三部】(続絶句編)(10)
長安主人の壁に題す
張謂
 
 
《大意》世間の人は交際を結ぶとき、金の力を目安とする。だから金が多くなければ、交際も深くならない。たとえ友人となることを承知した仲でも、金の切れ目が縁の切れ目で、交際はしだいにうとくなり、しまいには通りすがりの人のような心となってしまう。
(解説など詳細は財団発行「吟剣詩舞道漢詩集」をご覧ください)
 
文学博士 榊原静山
奈良朝(その一)
奈良朝の時代展望(七一〇〜七九四)
 近江朝にしても、藤原宮にしても天皇が代わるごとにといってもよいほどに遷都がおこなわれたが、平城京(奈良)は唐の長安の都に模して、非常に大きなスケールで造られた中央集権国家の偉容を誇る都である。中央に朱雀大路を通し、左右を左京、右京に分け、南北を九条、東西を四坊に区切り、朱雀大路の突き当たりに皇居(大内裏と官庁街)を造るという理想的な都市を築き、七百十年、元明天皇の時に、ここへ都を遷し、奈良朝が始まる。
 特に天武天皇は聖徳太子の精神を受けついで、仏教を政治の根本理念としつつ、儒教的な実際の活動が多かったが、さらに聖武天皇が七百二十四年に即位されるに及び、天皇みずから“我はこれ三宝の奴なり”といって、厚く仏教を信じ、その功徳によって天災地変を無くし、鎮護国家の思想にもとづいて、日本全国に国分寺や国分尼寺を建立した。さらに、当時としては日本国中の総力を結集したといわれる東大寺と、その中に安置する大盧舎那仏(だいるしゃなぶつ)の建立を発願して、高さ十五米、銅七百三十五万升、錫十二万升、水銀五十八升、金千四万両といわれる大仏を、天平勝宝四年(七五二年)に完成し、盛大な大仏開眼式が開かれている。この開眼儀式には、印度の僧菩提(ぼだい)が大導師をつとめ、また南方からの人々や芸術家も参加したといわれ、仏像が東洋へ伝わって以来初めてといわれる程のスケールで行なわれたと言われている。
 また、この時代にも遣唐使を幾度も派遣している。遣唐大使、副使のほか、留学生や学問僧が参加し、数隻の木造船に分乗して出発するのだが、当時の未熟な造船能力と航海術では、前後十三回のうち往復とも無事であったのはただ一度だけというほど困難、かつ危険なことであった。
 しかし唐の文化を移入しようという人々の情熱と決意によって、生命を賭けて中国へ向かったのである。これらの死線を越えて参加した人々の中で、吉備(きび)の真備(まきび)、玄肪(げんぽう)は、政界で活躍、道昭は法相宗を、道慈は三論宗をひろめた。
 いっぽう中国僧鑑真和尚が渡来して律宗を伝え、有名な唐招提寺を造り、阿倍仲麻呂は唐朝に仕えて詩人として名を残している。
 寺院としては、東大寺、西大寺、飛鳥朝以来建立された薬師寺、大安寺、元興寺、興福寺、それに法隆寺を加えて南都の寺々がきら星の如く揃い、その中に安置されて、今日大切な文化財どなっている数々の名彫刻も、次々と造られた。例えば、東大寺法華堂の不空羂索観音、日光、月光菩薩、執金剛神、東大寺戒壇院の四天王、新薬師寺の十二神将、興福寺の阿修羅、八部衆、唐招提寺の鑑真和尚像、あるいは、大仏殿前の燈籠火舎のすかし彫り。
 建築では、東大寺法華堂、唐招提寺金堂、法隆寺夢殿、当麻寺の塔、栄山寺八南堂、さらに、正倉院に蔵されている沢山の御物など、数えきれないほどの作品がこの時代に創られている。
 文学の面でも吉備の真備、阿倍仲麻呂、淡海三船、石上宅嗣(後述)が出て活躍、吉備の真備は漢籍を唐から多く持ち帰り、阿倍仲麻呂は唐で李白や王維と交友し、淡海三船は歴代天皇の漢風の諡号の撰者となった。三船とともに第一人者といわれる石上宅嗣は、自分の家に私設図書館を作った。七五一年には日本最初の詩集“懐風藻”が撰進されており、これよりさき七百十三年には古事記、七百二十年には日本書紀が出来ている。次にこのような政治的、文化的な背景の中に、漢詩がどんな人々によって作られ、伝承されたかを見ることにする。
 
吉備真備
 
奈良朝の詩壇(七一〇〜七九四)
 日本の漢詩や漢文学は奈良朝に入って、画期的な発展をとげている。もちろん中国においても史上最も絢爛たる文化の開花期であり、詩壇においても全盛期であった盛唐の時代で、李白、杜甫、王維、孟浩然、高適、岑参等の詩聖が輩出した時代である。従って、まだ目ざめたばかりの日本の先駆者達が、中国に憧れ、小さな船で決死の別れを告げて万里の波涛を越えて、遣唐船で送られたのももっともなことであろう。
 詩人としては藤原宇合(うまかい)、石上乙麻呂(いそのかみおとまろ)、石上宅嗣(いそのかみやかつぐ)、淡海三船(あわみみふね)等の人々が有名である。
 
藤原宇合
 
藤原宇合(六九四〜七三七)正一位大政大臣藤原不比等の第三子で、七百十五年には遣唐使として入唐、七百十九年には陸奥における蝦夷の乱を持節大将軍となってこれを鎮め、帰郷後、式部卿、西海道節渡使、正三位などに累進し、文武両道に通じ、天平九年四十四歳で没しているが、西海道節渡使になった時の作に次のようなのがある。
 
奉西海道節度使之作
藤原宇合
 
往歳東山役 往歳東山(おうさいとうざん)の役(えき)
今年西海行 今年西海(こうねんせいかい)の行(こう)
行人一生裏 行人一生(こうじんいっせい)のうち
幾度倦辺兵 幾度(いくたび)か辺兵(へんぺい)に倦まむ(うまむ)
 
(語釈)往歳・・・過ぎた年。東山役・・・東山道の節渡使の役。行人・・・旅人、ここでは自分のこと。辺兵・・・辺土の兵。
(通釈)過ぐる年は東山道の節渡使として赴任し、今はまた西海の地に来て働いている。私は一生の中で幾度かこうして辺境の地で御奉公していかれるものであるよ。
 
財団新役員(2)=相談役 〔再任二百十七名、新任八十四名、計三百一名〕
道央
三本菅善風
山際渓水
尾角鳳帥
東 聖堂
笹谷城俊
土谷鳳煌
伊藤千峰
馬場碩鵬
一戸邦寿
小田代旭錦
佐々木陽聲
木綿暁風
新任
大浦錦翁
阿部國遙
安藤櫻心
平賀岳森
吉岡胤道
斎藤陽豊
吉川鳳翔
大井城将
佐々木旭妙
加賀金州
岸田裕豊
 
道北
中山成学
河口彩峰
 
道南
新任
宮下龍汀
 
道東
新任
佐藤国凰
 
北紋
工藤國邑
 
青森
崎野国清
 
岩手
佐々木岳中
加藤岳興
 
秋田
新任
野呂田神聆
 
山形
茂木宋洲
松浦岳
新任
赤塚岳柳
森口天眞
 
福島
笠原應月
西山岳聚
 
新潟
霜鳥桂月
新任
外山岳修
今井春桜
 
栃木
熊倉麗峰
佐藤霞雲
田村遊月
伴吟鳳
柴田秋水
大橋西峰
阿見吟雪
新任
田中秀風
 
茨城
野口龍学
鷹崎吟公
田中吟涌
藤田吟帥
新任
横田清洲
 
群馬
山川天涯
岸大洞
野本正達
金子一正
多加谷征心
山口凰心
新任
国分国壮
青木龍弘
 
千葉
白幡清香
丸本朝岑
板橋天真
金杉修学
秋葉岳涼
新任
杉浦光耀
大久保
田谷静楓
 
埼玉
小室貴相
吉川吼丈
渡辺北辰
新任
岡村晨潮
 
東京
榊原静照
阿部天吟
菅原雪英
関根神峰
前島昊陽
遠藤岳恒
佐藤晄岳
森田旭真
桜井龍雲
秋葉総洲
鈴木景恍
丸山隆楓
佐々木瀞戈
會沢道神
山本隆卿
星野岳蓬
長谷川吟慧
新任
植島昊春
岡安美泉
田中岳水
 
神奈川
小林紫舟
木内梅水
前田国敞
志村静風
川口頌道
和田豊明
関興祥
橘興貴
新任
小澤泰鵬
鈴木南城
 
山梨
河西吼精
吉田錦神
五味國心
大窪國威
御手洗吼雄
宅間岳星
安江興嶺
戸田吟髞
廣瀬翠凰
早川阮蒼
新任
塩澤國曠
 
静岡
大林菊嶺
赤杉滄洲
望月東琴
冨永芳陽
内田幸陽
新任
堀宏豊
松浦東道
村岡東鈴
 
愛知
落合総穂
松原秀峰
岩見香城
伊藤薫楠
一ノ瀬雅邦
和田箔峰
長谷川桂楓
浅野
上家濤邦
伊藤神暢
新任
清水聖鵬
峯澤胆峰
 
長野
胡桃沢凌州
上沼梅風
降幡学風
新任
竹澤瑞洲
津野錦風
 
富山
渡部岳惺
新任
八田岳尚
 
石川
高野岳乗
高桑岳松
新任
河村岳悠
 
福井
窪田鷹路
小倉鷹宗
 
岐阜
北洞吟条
増田梅峰
石川朝雲
平塚皎宇山
梅村香雲
長尾照國
早崎康峰
二村峰心
木村麗扇
新任
中谷照峰
鎌倉秀峰
河田誠龍
中村櫻光
 
三重
今村岳仁
藤井正峰
新任
中西槍峰
 
滋賀
鉤正滋
吉岡嘉峰
新任
川田華将
 
京都
武田吼濤
木工深山
高橋摂勝
新任
徳田旭道
 
大阪
今村騰洲
笠原哲櫻
岡田岳龍
藤井芳洲
藤枝寿春
外畑宗泉
柏原星芳
前重華泉
久保梅香
浅田芳城
松村穂尊
伏村慶城
新任
大橋玉泉
辻本景丞
宇佐美翠城
中田讌洲
 
兵庫
小笠原紫暁
尾家緑洲
笹野摂
永留鯉聖
尾花摂綾
伊藤南光
坂本黎洲
来條尊凰
福島岳忍
杉原国誠
橋本實憲
野島鯱城
山崎鯉苑
新任
毛登山哲鶯
田和國穂
田川紫萩
 
奈良
土居鷺行
大西玉凰
北西岳仙
本田菖南
中川義智
田中甲洲
蔵本泰洲
南 水應
東浦
深井凰雪
福本水涛
新任
百々国聖
船津蒼洲
福山照洲
林田
岩井水敬
 
和歌山
江藤壽洋
新任
仲尾華城
 
岡山
鳥越酔泉
安原竜鵬
新任
高岡芳燿
本原岳融
 
広島
細工月城
土井吟城
大西龍鳳
小畑紘泉
池田静翠
新任
後藤滄峯
 
山口
今林芳山
山崎剛山
淺尾吼朗
菅源左近
佐藤明洲
 
島根
新任
吉永款泉
 
香川
藤岡清竹
福家霊姚
植松摂城
貝出清洲
新任
村岡紫洲
矢野渓風
松野巌穂
 
愛媛
山田燧城
吉岡麗峰
池田竹山
加藤清進
松本松陽
新任
芳之内芳翠
柏愉洲
 
徳島
新任
宮岡和光
内田華水
 
高知
藤田鶯誠
濱口紫柳
垣内婉泉
関田岳継
 
福岡
西清峰
上野岳翠
原精龍
山口筑鳳
田淵火洲
新任
道園岳勝
岡本義乃
 
大分
大賀千霊
河合岳彬
高橋岳裕
一ノ宮祐窓
釘宮昊霊
清水穂山
新任
多田鶯霊
田代勲霊
加藤祐鶴
 
佐賀
古賀桜洲
田久保豊明
渕上岳樟
渕上岳洸
香月信岳
 
長崎
藤本玉堂
古川岳斉
太田岳象
田澤岳喨
新任
松尾精聖
南里岳旺
種田岳昭
野田岳英
 
宮崎
水永岳光
新任
坂本岳貴
 
熊本
野中択水
内田祥水
後藤鈴芳
近藤廣洲
新任
玉城舟桂
 
鹿児島
新任
坂元岳盛
 
本部
木下俊雄
多六平太
藤間章作
長谷川岳聖
森豪神
雨宮國風
 
ブラジル
森豊
後藤真洲







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION