日本財団 図書館


第三十一回 全国少壮吟詠家審査コンクール決戦大会
時・・平成十五年三月九日 場所・・笹川記念会館国際ホール 主催・・財団法人日本吟剣詩舞振興会
厳しい審査を通過し、女性五名の少壮吟士候補が誕生
 財団主催のコンクールの中でも、入選するのが極めて難しいと言われる全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会が、三月九日(日)笹川記念会館国際ホールにて行なわれました。参加総数百三十五名が栄光の少壮吟士を目指して熱吟しました。
 
開会を宣言する鈴木吟亮専務理事
 
 この大会は笹川鎮江会長が言われているように、「全国の少壮吟詠家の日頃の研鑚を競う場と同時に、すぐれた少壮吟詠家選出の場として、吟詠の芸術的向上を図り、あわせて吟剣詩舞道の普及振興に資することを目的とする」もので、大会実施要綱にもそれが明記され、それ故に特に厳しい審査基準になっています。また、単に吟がうまいだけではなく、舞台マナーや吟詠マナー、社会人としてのエチケットなども審査対象となり、吟を含め人間性も審査されます。少壮吟士はやはり吟界のリーダー。それにふさわしい人物でなければ資格は得られません。
 今回の参加予定者数は総勢百四十二名で、地区別決選大会出場者数は北海道五名、東日本三十四名、中部十三名、近畿三十四名、中国十三名、四国十三名、九州十六名、第三十回入選者等が十四名で、三回目の挑戦となる人が十一名いました。なお、七名が残念ながら欠場しました。
 普段は指導者として活躍されている皆さんですし、少壮吟士へ挑戦するだけあり、大会では実力の高さを遺憾なく発揮され、精進を重ねたと思わせる素晴らしい吟詠がつづきました。しかし、プレッシャーからかタイムオーバーをする人や絶句する人、誤読などがあり、コンクールの厳しさ、重圧感をつくづく感じさせられました。ただ、全体を通して安定した音程、発声の良さ、詩情感などを感じることができ、少壮吟詠家審査コンクールにふさわしい内容の舞台ではなかったかと思われます。
 実力伯仲の競吟が一通り終了すると、少壮吟士特別審査対象者六名が選出され、第二の関門である律詩の吟詠が行なわれました。そして、すべての審査が終了すると、河田神泉財団会長代行が講評をされました。
●調和と言うことでは、転句の頭で長く待つ人がいたり、終わりを極端に伸ばす人がいた。これは曲に調和しているとは言えない。
●調和点では二十点満点で、十八点が六名、十七点は二十五名、十六点が二十三名、十五点が最も多く九十四名、以下、十二点、十一点が数名ずつおり、五点が一名いた。
 
審査員席、河田神泉審査委員長(中央)が開始の合図を送る
 
●発音については、Aが八十二人(全体の六十四%)、Bが三十二人、Cが十人、Dが三人、Eが一人と言う結果で、少壮吟士を受けるなら、C、D、Eではだめ。鼻濁音をしっかり身につけて出てくるべき。
など、厳しい講評となりました。それもひとへに、少壮吟士に対する期待の高さの表れなのではないでしょうか。講評の後、審査結果が発表されました。当事者だけではなく、会場に訪れた人たちも固唾を飲んで聞き入っていました。そして、伏尾画子(大阪)、中武玲子(宮崎)、塩澤比早江(長野)、塚本康江(広島)、猪飼律子(愛知)の皆さんが、見事に栄冠を勝ち得、晴れて少壮吟士侯補となられました。一回目入選六人、二回目入選四人と合わせ十五人の皆さんが入選しました。
 閉会の言葉を入倉昭星常任理事が述べると、熱気を帯びた本大会も成功のうちに幕を下ろしました。入選した人も、そうでなかった人も、少壮吟士と言う吟界の頂きを目指して、来年も挑戦することでしょうし、それが吟界を元気にさせる源になるのではないかと感じさせる大会でした。
 
競吟一番、緊張の猪木原美香さん(岡山)
 
入選者が段上に並び、次々と表彰状を受けた
 
少壮吟士候補になられた喜びの言葉
伏尾画子さん(大阪)
 「少壮吟士は雲の上の存在と思っていましたから、信じられない気持ちです。これからが大変でしょうが、日々努力してまいります」
 
「曲江」(杜甫作)を吟じる伏尾画子さん
 
中武玲子さん(宮崎)
 「早く家族と先生に報告したいと思います。今日は律詩に進めただけで幸せでしたので、後悔しないようにやろうと思いました」
 
「富士山を詠ず」(柴野栗山作)を吟じる中武玲子さん
 
塩澤比早江さん(長野)
 「父(飯森寿岳現評議員)が第一回少壮コンクールで入選し、それ以来の私の夢でした。親子でコンクールに入選できたことを喜んでいます」
 
「水戸八景」(徳川景山作)を吟じる塩澤比早江さん
 
塚本康江さん(広島)
 「今日の吟詠は、自分では自身がなく、どうなるのかと思っていたので、結果をまだ信じられません。これからはさらにがんばります」
 
「梅花」(高啓作)を吟じる塚本康江さん
 
猪飼律子さん(愛知)
 「私のことではないような気分です。亡き母に、良い報告ができ、とても嬉しいです。また、宗家、理事長、会長の皆様に感謝しております」
 
「梅花」(高啓作)を吟じる猪飼律子さん







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION