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 蘭嶼に関する人類学的調査報告は鳥居龍蔵(一九〇二)に始まり、鹿野忠雄、瀬川幸吉(一九五六)らなど多くの日本人による報告があります。蘭嶼の植物について古くは佐々木舜一、川上瀧彌(一九一六)等が一〇九科三四五属五〇三種の維管束植物を報告しています。最近では約八〇〇種が知られています。その内の約六五〇種は台湾に、フイリッピンには約五〇〇種が分布し、台湾との共通性が高い。しかし、フイリッピンには一一〇種が台湾には分布していない植物種が分布しています。しかしながら、タロイモなどの主要食用植物に関する詳細な報告は少ない。
 
(8)伝統的な住居が残るIratayの集落
(一九七六年一二月)
 
(9)
手前Ivalioの集落、海岸線に続く先がIranomilekの集落
(一九九六年一二月)
 
(10)
鰭尾(標高二〇五メートル)の頂上にある蘭嶼灯台よりYayu方面の眺望
(一九九六年一二月)
 
(11)タロイモの水田栽培
 
(12)
(一九七七年一二月 Imorod)
海岸に迫るところまで水田が作られ、水路には水量の調節し((12))、各棚田水田に隈無く水を引き込む高度な技術がうかがえる。
 
 ヤミ族の食文化を支える主要食用植物は、根栽農耕を支えるタロイモ=サトイモColocasia esculenta'ヤムイモDioscorea ssp'.サツマイモIpomoea batatasなどのイモ類を主にバナナMussa spp'.アメリカサトイモXanthosoma sagittifolium(中南米)、その他にパンノキ(ニューギアからメラネシア原産)、サトウキビSaccharum officinarum(ニューギニア原産)、ビンロウ(Areca catechuインドあるいはマレーシア原産)、キンマPiper betle(マレーシア地域原産)、パパイヤCarica papaya(メキシコ、コスタリカ地方と言われている)、クズなどを補充食用植物として栽培しています。さらに、ツワブキ、コウトウシュウカイドウ、タカサゴユリ、シマオオタニワタリ、クワレシダ、シマリュウガン、オオバアカテツ、タイトウウルシなどを豊かな森林の野生植物からの採集あるいは、野生しているものを栽培して利用しています。なお、野生の動植物の利用も盛んでその知識は豊富で、食に関してもその例にもれず、多様なものを食べています。例えば、藍藻植物のイシクラゲは、ネンジュモ科ネンジュモ属の仲間で、食用として知られています((7))。日本でも沖縄などでも食べています。戦前には、水田や川に生息するタウナギなども食べていたが、最近では見かけなくなってしまったようです。タウナギは伝統的な根栽農耕を営むニューギニアやメラネシアなどの熱帯圏では今日でもタンパク源として食べています。







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