日本財団 図書館


 品目別にみると、シェア第5位の事務用機器・データ処理機が前年比8.3%増となったことを除いて、最大の輸出品目である電気機器・同部品が5.2%減、衣料品・同部品が3.1%減、雑製品(玩具・運動用品等)が11.8%減、通信・音響機器が4.6%減、繊維・織物および関連製品が9.1%減と軒並み減少した。香港貿易発展局はその要因について、「玩具など米国市場に依存する製品の輸出が、米国同時多発テロ事件で減少したことが最大の原因。2001年の景気の不調は予想されていたものの、事件の発生は楽観的見方をも打ち消すものとなった」としている。ただし同局は、「米国同時多発テロ事件で一時中断した米国向けの電子部品、時計、宝石など航空貨物輸送は短期間で回復しており、物流面での混乱が香港貿易に与えた影響は比較的小さかった」と分析している。また、中国で生産した貨物を香港で積み替え、香港域外に輸出をするオフショア貿易(輸送中香港に荷揚げされないため再輸出に含まれない)が増加していることも、輸出減少の要因としてあげられる。例えばウォルマートやトイザ“ら”スなどはこの貿易形態を採用している。なお、企業の業態別にみると、海外からOEM生産を長期的に受託している大型の生産・供給業者では、輸出パフォーマンスが比較的良好であった。
 輸入についても、輸出先需要の減退で域外からの部品・部材の輸入が減少し、2001年は前年比5.4%減の1兆5,681億9,400万HKドルとなった。国・地域別にみると、中国が前年比4.6%減、日本が11.2%減、台湾が13.1%減、米国が7.0%減、韓国が12.2%減など軒並み減少となった。電機・電子製品や繊維製品などの部品・材料の輸入先である日本、台湾、韓国は、減少幅が特に大きい。品目別では、最大の輸入品目である電気機器・同部品が9.0%減となったほか、繊維・織物など関連製品が11.2%減、プラスチックの一次製品が20.5%減と、部品・材料の減少幅が大きかった。また、輸出が減少した雑製品(玩具・運動用品等)は輸入でも9.5%減と減少した。
 香港のサービス輸出は2000年下半期から回復し始め、2000年は前年比13.6%増と大幅に増加したが、2001年には3,354億7,100万HKドル、2.4%増と鈍化した。これは主に米国同時多発テロ事件の影響で、貿易関連サービスや観光が第3、4四半期に伸び悩んだためである。貿易関連サービスは2000年の12.7%増から2001年は1,014億HKドル、1.7%と大幅に鈍化した。観光は、入境制限の緩和により中国からの観光客が増加したが、米国同時多発テロ事件の影響を受け、600億HKドル、2.7%の伸びにとどまった。運輸も、商品貿易の減少を受け伸びが鈍化し、2001年は5.1%増となった。その他商業サービス(金融・保険等を含む)は、香港株式市場の低迷などのため、2000年の19.4%増から2001年には3.1%減と減少に転じた。
 サービス輸入は、1,790億5,500万HKドル、0.2%減となった。2000年に大幅に増加したその他商業サービスが2.5%減、貿易関連サービスは2000年の7.6%増から2001年は6.1%減へと、それぞれ減少に転じた。
 香港のサービス貿易は、運輸、貿易関連サービス、観光が占める割合が高い。中国と台湾のWTO加盟により域内の貿易活動や人的交流が促進されることで、サービス貿易の活発化が期待できる。
 
表1-(9)香港の主要商品別輸出
(単位:100万HKドル、%)
  地場輸出
2000年 2001年
金額 金額 構成比 伸び率
電気製品・同部品など 28,533 20,322 13.2 △28.8
通信・音響機器 4,206 3,507 2.3 △16.6
事務用機器・データ処理機 7,303 5,721 3.7 △21.7
衣料品・同部品 77,415 72,240 47.1 △6.7
雑製品(玩具・運動用品等) 16,408 14,352 9.3 △12.5
繊維・織物など関連製品 9,164 8,193 5.3 △10.6
撮影・光学機器・時計など 5,715 5,019 3.3 △12.2
77 97 0.1 26.0
プラスチックの一時製品 2,839 2,268 1.5 △20.1
旅行用品・ハンドバックなど 152 98 0.1 △35.5
合計 180,967 153,520 100.0 △15.2
出典)JETRO貿易投資白書2002年
 
  再輸出
2000年 2001年
金額 金額 構成比 伸び率
電気製品・同部品など 220,611 215,892 16.3 △2.1
通信・音響機器 148,663 142,304 10.7 △4.3
事務用機器・データ処理機 120,509 132,680 10.0 10.1
衣料品・同部品 111,268 110,600 8.3 △0.6
雑製品(玩具・運動用品等) 179,586 158,421 11.9 △11.8
繊維・織物など関連製品 95,573 87,053 6.6 △8.9
撮影・光学機器・時計など 89,583 69,480 5.2 △0.1
50,534 45,938 3.5 △9.1
プラスチックの一時製品 35,298 30,242 2.3 △14.3
旅行用品・ハンドバックなど 36,720 34,043 2.6 △7.3
合計 1,391,722 1,327,467 100.0 △4.6
出典)JETRO貿易投資白書2002年
 
表1-(10)香港の主要商品別輸入
(単位:100万HKドル、%)
  2000年 2001年
金額 金額 構成比 伸び率
電気製品・同部品など 288,955 262,867 16.8 △9.0
通信・音響機器 161,627 158,690 10.1 △1.8
事務用機器・データ処理機 142,920 147,697 9.4 3.3
衣料品・同部品 124,735 125,545 8.0 0.6
雑製品(玩具・運動用品等) 128,495 116,272 7.4 △9.5
繊維・織物など関連製品 106,875 94,955 6.1 △11.2
撮影・光学機器・時計など 59,871 60,946 3.9 1.8
44,149 40,234 2.6 △8.9
プラスチックの一時製品 44,439 35,339 2.3 △20.5
旅行用品・ハンドバックなど 28,787 26,806 1.7 △5.9
合計 1,657,962 1,568,194 100.0 △5.4
出典)JETRO貿易投資白書2002年
 
 2002年第1四半期の輸出は世界的な需要減退を受けて、前年同期比6.2%減の3,257億5,800万HKドル、輸入は9.1%減の3,423億100万HKドルと、2001年に引き続き輸出入とも減少が続いている。輸出の内訳では、再輸出は5.0%減、地場輸出は17.5%減となった。
 国・地域別にみると、輸出では中国向けは2.7%増と好調であるが、米国(14.9%減)、日本(13.7%減)、英国(14.4%減)、ドイツ(19.1%減)、台湾(10.1%減)向けは減少している。輸入では、中国(6.0%減)、日本(14.1%減)、台湾(5.6%減)、米国(20.4%減)など軒並み減少した。
 品目別輸出では、輸出額2位の事務用機器・データ処理機(10.5%増)、3位の通信・音響機器(3.5%増)が増加したことを除けば、電気機器・同部品(6.3%減)、衣料品・同部品(12.1%減)などは減少した。輸入では、電気機器・同部品(3.5%減)、通信・音響機器(1.5%減)、事務用機器・データ処理機(7.0%減)と軒並み減少となった。
 香港特別行政区政府は、2002年の貿易動向を輸出は前年比増減なし(0.0%)、輸入は0.7%減、輸出のうち再輸出は0.5%増、地場輸出が4.0%減と予測している。
 香港との貿易・投資関係の深い中国が2001年12月、台湾が2002年1月、相次いでWTOに加盟した。中国のWTO加盟が香港に与える影響について、2001年11月に香港特別行政区政府が香港貿易発展局と共同でまとめた報告書によると、「2002年から2010年で中国向け輸出は15%(年平均1.3%)、総生産高は5.5%(0.5%)増加する。これらは関税の減免および非関税障壁の緩和措置に基づいた成長であり、中国国内のサービス業の開放によりさらに成長が見込まれる」としている。
 同報告書は具体的な影響として、(1)外資企業の中国市場への進出、(2)中国製品の海外市場進出、(3)貿易環境の透明性が高まることの3点を挙げている。特に(1)については、外資企業に対する国内販売制限、外貨収支バランス、現地部品調達率および輸出パフォーマンスに対する規制が緩和される。ただし、大部分の消費製品の平均関税は10%以上の水準を維持するため、中国国内市場では国産品が輸入品に比べて依然として有利である。外資企業は、大部分の製品販売業務に従事することが3年以内で段階的に許可される。サービス業では、販売、電気通信業、金融サービス、ビジネスサービス、オーディオ・ビジュアル、観光業などにおいて外資投資規制が緩和される。大部分のサービス業では6年以内に市場開放が完了し、外資企業は合弁企業内で大部分の株式を所有することができるようになる。独資企業の経営に関する数量的・地域的制限も徐々に撤廃され、香港企業の中国におけるビジネス機会は拡大するという。
 一方、台湾のWTO加盟について同局は、「台湾企業の中国大陸への直接投資が増加し、部品や材料の在中国香港製造業からの調達が増加する。在中国香港サービス企業の顧客拡大にもつながる」と分析している。
 香港は2001年4月、ニュージーランドと経済協力緊密化協定の締結を目指すことに合意した。また2001年12月、中国との自由貿易協定を視野に入れた「中国と香港との経済・貿易関係を一層緊密化させる協定(CEPA)」の締結を目指すことで合意に至っている。その後の協議で香港と中国は、香港の原産地規則を基礎とし双方に適した規則を制定することや、関税の減免、非関税措置の削減について、双方で研究を進めることに合意した。
 (注)香港の原産地規則は、原産地が異なる部品を使用する
製品について香港を原産地とするには、香港以外で生産された部品の価値が完成品コストの25%を超えてはならないと規定しており、中国の規則と異なっている。
 香港の貿易統計によると、2001年の香港の対日輸出は前年比0.5%増の876億1,100万HKドルで、2000年(19.4%増)の増加から大幅鈍化し、対日輸入は11.2%減の1,765億9,900万HKドルと急減した。
 品目別輸出では、輸出額第3位の電気機器・同部品が前年比6.0%減となったほかは、第1位の衣料品・同部品が1.0%増、雑製品(玩具・運動用品等)が2.0%増、事務用機器・データ処理機が8.4%増、通信・音響機器が7.6%増となった。輸入では、第1位の電気機器・同部品が前年比17.3%減、以下、通信・音響機器が9.5%減、撮影・光学機器・時計などが8.2%減と、香港の輸出市場の需要減退に伴い部品・材料の輸入需要が縮小したことで、各品目とも大きく減少した。一方、香港の品目別輸出で増加した事務用機器・データ処理機は、対日輸入でも6.5%増となった。2001年の香港の対外貿易全体に占める日本のシェアは輸出入とも大きな変化はなく、香港にとって日本は輸出先として第3位、輸入先として第2位と重要な貿易相手国である。
 2002年第1四半期は、対日輸出が前年同期比13.7%減の196億4,300万香港ドル、対日輸入は14.1%減の382億7,200万HKドルと、ともに2ケタの減少になっている。
 投資については、日本の財務省統計(報告・届け出べース)によると、2001年度(2001年4月〜2002年3月)の日本の対香港投資は件数で37件、金額で2億9,600万ドル(前年度比68.4%減)と大幅に減少した。業種別で見ると、投資総額の48%を占める商業が15件、1億4,200万ドル(70.5%減)、22%を占める金融・保険が3件、6,500万ドル(70.9%減)など、特に非製造業部門の減少幅が大きかった。製造業部門は34.9%の減少にとどまった。主な投資案件としては、2001年9月オリジン電気が中国・香港の業務を統括する拠点を香港に設置したことがあげられる。
 一方、2001年度の香港の対日投資は、大幅に減少した2000年度から回復に転じ、件数で25件、金額で2,700万ドル(前年度比51.3%増)となった。特にサービス業における投資は大幅に増加し、9件、1,400万ドル(前年度比14.7倍)であった。香港企業による対日投資案件としては、アパレル小売店ジョルダーノの進出や、6月の日本アジア証券の丸金証券買収などがあげられる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION