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1.2 資格/認定制度制定の経緯と機能
(1)資格制度の目的と機能
 資格制度(国家、民間とも)には、「職業資格」を含め、大なり小なり次の3つの目的、機能がある。
(1)公証機能:資格者が有する技能の程度を公に証明する。
(2)評価機能:技能の評価を高め、資格者の地位を社会的に評価する。
(3)向上機能:公証することにより、技能習得意欲を喚起し、技能の向上を図る。
 この3つの関係を技能検定を例に示すと、図2のようになる。
 
図2 技能検定の3機能の関係
(出所:新井吾朗(職業能力開発大学校)「「資格」制度の社会的機能に関する考察」、http://www.uitec.ac.jp/~araigoro/ronbun01/kinou.htm
 
 因みに、現行の国家資格、技能検定を取得者の目的からみると、図3のとおりとなる。
 
図3 資格取得者の側から見た資格制度の意義
 
(2)資格と人事管理
 わが国における人事・給与制度は、おおむね、次の図4のように変遷してきている。
 
図4 人事・給与制度の変遷
 
 図4でわかるように、現在は、国際競争の激化により、コスト競争力の維持・向上をはかるために、経営的には単なる能力や学歴・知識、年功・勤続年数を重視するより、出来高、成果を重視する「成果主義」の傾向にある。
 
(3)民間資格制度の特徴
 民間資格は、表4に示したように膨大な数にのぼるが、資格取得者個人および認定機関の母体である業界団体や企業の私的な効能のために制度化したものである。その主たる目的は、次のように要約できる。
(1)資格取得者への効能の訴求
 その資格を有することで、無資格者に比べ採用、処遇、組織内での地位が有利になるという効能、有利性を訴求、強調する。
(2)サービス品質の保証
 自社・団体の技術・技能の向上、均質化を図り、サービス品質を保証する。
(3)社会的評価の高揚
 当該技術・技能の中心的存在であることを訴求することで、自社・団体の社会的評価を高める。
 
(4)資格制度の社会的な意義
 一方、アウトソーシングの拡大やフリータの増加、外国人研修生・就労者の増大、採用時の個人情報開示制限など社会情勢の変化に伴い、資格制度には、下記のような意義も生れてきている。
(1)契約的採用への移行にともなう契約内容の客観化への活用
(2)流動化が加速されつつあるなかでスポット人材能力の(事前)評価への活用
 繰り返しになるが、資格制度には本来、次の機能も含まれている。
(3)業界外に技能内容を明確にし、社会評価の向上に活用
(4)教育や自己啓発目標への活用
(5)組織内の処遇評価の一部として活用(組織としては更に人間性などを加える)
(6)顧客に対する品質の保証(ISO9001、食品工業のHACCP、医薬品工業のGMPなどの品質管理基準・規制遵守の証として資格内容や取得者数を明示)
(注)HACCP: Hazard Analysis Critical Control Point 危害分析重要管理制度(食品製造における安全衛生規則)
GMP: Good Manufacturing Practice 製造管理及び品質管理規則







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