この造船技能評価基準は、モーターボート競走公益資金による平成15年度日本財団助成事業である「造船技能資格認定のための技能評価基準作成」事業として、過去2カ年間で調査作成した作業要件書をベースに、各関係造船所で技能評価を実際に試行調査し、下記の「技能評価基準作成部会」でまとめたものである。
平成15年度技能評価基準作成部会委員名簿(順不同・敬称略)
区分 |
氏名 |
所属 |
部会長 |
田淵 一郎 |
学識経験者(元四国ドック(株)代表取締役社長) |
副部会長 |
佐々木 茂樹 |
内海造船(株)取締役瀬戸田工場長 |
委員 |
遠藤 博 |
学識経験者(元石川島造船化工機(株)代表取締役社長) |
〃 |
廣江 正臣 |
学識経験者(元四国ドック(株)取締役工場長) |
〃 |
竹末 敏昭 |
(社)日本造船協力事業者団体連合会業務部長 |
〃 |
秋山 覚 |
北日本造船(株)取締役工作部長 |
〃 |
伊藤 秀勝 |
東北ドック鉄工(株)取締役船舶事業部長 |
〃 |
森川 克美 |
墨田川造船(株)製造部長 |
〃 |
生駒 剛人 |
金川造船(株)常務取締役 |
〃 |
吉田 信一 |
神戸船渠工業(株)取締役船舶グループリーダー |
〃 |
安倍 公博 |
(株)三和ドック工務部部長 |
〃 |
小玉 淳一 |
西武造船(株)工務部造船鉄構課長 |
〃 |
長野 芳房 |
幸陽船渠(株)工作グループ長 |
〃 |
村上 譲二 |
今治造船(株)丸亀事業本部工作グループ長 |
〃 |
高畠 勝 |
檜垣造船(株)船殻課長 |
〃 |
浅海 通弘 |
浅川造船(株)取締役品質管理本部長 |
〃 |
木元裕行 |
伯方造船(株)取締役総務部長 |
〃 |
五島 宏 |
(株)栗之浦ドック常務取締役 |
〃 |
上野 修 |
福岡造船(株)船殻部地上組立課課長代理 |
〃 |
江藤 憲二 |
(株)臼杵造船所 取締役業務部長 |
(オブザーバー)
砂川 祐一 (株)エスエス・テクノロジー代表取締役
(事務局)
鈴木 實 常務理事、坂本 一 総務部付部長 |
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試行調査日程
会員造船所並びに地方社団小船工会員造船所20事業所を選定し、下記の期間において技能評価の試行調査を行った。
調査員:田淵・遠藤・廣江・砂川・事務局
日程:(1)臼杵・今治地区:8月31日〜9月5日(8事業所、うち小船工3事業所)
(2)神戸地区:9月23日〜25日(3事業所、うち小船工1事業所)
(3)因島地区:10月7日〜10日(6事業所)
(4)高松地区:11月12日〜14日(3事業所、うち小船工1事業所)
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(社)日本中小型造船工業会「雇用流動化対策部会」においては、過年度(平成13、14年度)の事業において、造船技能の継承を効率的に行うために必要な教育制度と資格制度の提案を行うとともに、造船技能全般をカバーする作業要件書をまとめた。
教育制度については、監督官庁のご指導のもと造船業界および関連業界全体の課題として取り上げられ、今年度(平成15年度)はシップアンドオーシャン財団の事業として検討が進められた。
資格制度については、(社)日本中小型造船工業会の今年度(平成15年度)の本部会「技能評価基準作成部会」において検討した。その結果を、資格制度の試案およびその意義、運用方法として、ここに提案する。
また、会員会社等21事業所、総計835人の技能者について、作業要件書を基に技能者個人ごとの能力評価を試行的に実施し、その結果ならびに20社のヒアリング結果に基づき、過年度にまとめた作業要件書を修正し、造船技能評価のための物指しとして「造船技能評価基準」をまとめ、ここに示している。
1. 資格制度とは
1.1 資格制度
(1)資格とは
資格。誰もが気軽に使っている言葉であるが、まずその内容と意味を明確にすることから始めたい。
「資格」とは、ある仕事や作業につくのに必要な要件(「職業資格」)と、その作業を行う能力があることを認定する「能力認定資格」の両者を総称していっている。すなわち、
資格=職業資格+能力認定資格
「職業資格」で一般によく知られているものには、弁護士や医師、公認会計士など、通常、職業につく上で資格・免許が必要不可欠なもの、そして自動車運転免許やクレーン運転士のように所定の免許あるいは講習修了者でなければその作業、操作ができないものが多い。すなわち、高度あるいは相応の知識や技量、経験がなければその職業についたり、作業を行ってはならないものが「職業資格」である。
一方、「能力認定資格」には、溶接工や技術士、情報処理技術者などがあり、その能力・技能を国家が認定するもの、平たく言えば、その知識・技量をもっていることに対し、国がお墨付きを与えるもので、資格がなくてもその作業に従事することができ、必須条件ではない。
同様の「能力認定資格」に、最近、いくつかの都道府県で創設された「マイスター」制度がある。これは、ものづくり基盤技能を振興する目的で制定されているもので、1級技能士の中から特に秀でた技能をもつ人を選任して、顕彰するものである。認定されたマイスターは、県、商工団体が主催する技能講習会、イベント等での講師や実習指導の役割を担わされる。参考までに、広島県の「ひろしまマイスター」制度を図1に示す。
資格を、それを実施、認定する組織・団体で区分すると、次の3つに分類できる。
(1)国家資格
国が法令に基づいて試験を実施し、認定するもの。弁護士、公認会計士、安全衛生に関わるものなど16省庁、計293資格。実際の運用は、特殊法人が委託をうけて行う例が多い。
(2)公的資格
(3)民間資格
(2)と(3)は、能力認定資格にあたるので、次項((2)能力認定資格)で述べる。
なお、本事業でとり扱う資格は、その性格上、能力認定資格である。
図1 広島県の「ひろしまマイスター」制度
(2)能力認定資格
(1)公的資格
民間団体に委託して試験を行い、国が資格の認定を行うもの。スポーツ指導員や英語検定、工業英語、速記技能など11省庁、134資格。
後述する技能検定制度もこの範疇に入る。
(2)民間資格
学会、業界団体、民間企業が独自に試験を行って認定するもので、その数は膨大にのぼる。対象は、通常、その資格があると就職や社内の地位あるいは社会的評価の向上に有利になる作業、業務が選ばれている。
(i)学会:土木学会の「土木学会認定技術者」特別上級、上級、1級、2級等。
(ii)業界団体:全国商工会連合会の「販売士」等など
(iii)民間企業:マイクロソフト社の「MS認定システムエンジニア」、TOEICの英検、等など。
(3)技能検定
技能検定制度は、昭和33年職業訓練法(現在、「職業能力開発促進法」)に基づいて制定されて昭和34年から実施し、現在、133職種が実施されている。
「技能評価基準」作成の本事業と関係が深いので、以下、中央職業能力開発協会の資料を基に、少し詳しく述べることにする。
【目的】
働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明することで、働く人々の技能と地位の向上を図る。
【実施機関】
厚生労働省が定めた実施計画に基づいて、(財)中央職業能力開発協会が試験問題を担当し、都道府県が試験を実施する。受験申請書の受付や試験実施の実務は、都道府県の職業能力開発協会が行っている。
【等級区分】
・特級:管理者または監督者が通常有すべき技能の程度
・1級及び単一等級:上級技能者が通常有すべき技能の程度
・2級:中級技能者が通常有すべき技能の程度
・3級:初級技能者が通常有すべき技能の程度
・基礎1級及び2級:随時、実施している外国人研修生むけ等級
【証書の交付】
技能検定の合格者には、次の合格証書が交付され、「技能士」を称することができる。
・特級、1級、単一等級 → 厚生労働大臣名
・2、3級 → 都道府県知事名
【試験の内容】
・試験:検定職種ごとに実技試験と学科試験が課される。
・実技試験:課題は、試験日に先立って事前に公表され、試験時間は4〜5時間。
・学科試験:職種、等級別に全国統一して同じ日に実施。
【試験の実施】
試験は、毎年、前期、後期の2回行われる。
・公示:3月および9月上旬
・申請受付:4月および10月の上旬〜中旬
・実技試験:6月〜9月および11月〜2月の各上旬〜中旬
・学科試験:8月下旬〜9月上旬および1月下旬〜2月中旬
・合格発表:10月上旬および3月下旬
資格(技能検定を含む)は、それを有する人にとっては、無資格者にくらべ採用、処遇、配置などで相対的に有利に働くことが期待される。実際の技能検定の活用先は、次のとおり報告されている。
表1 技能検定の活用
技能士取得後の扱い
(複数回答) |
% |
技能士資格保有と昇給・昇進の関係 (単数回答) |
% |
月々の資格手当て支給 |
29.5 |
昇格・昇進の前提条件 |
10.2 |
祝い金の支給 |
26.5 |
昇格・昇進の筆記試験免除 |
2.4 |
昇給の額・率に差がつく |
13.3 |
昇格・昇進選考の際に有利 |
50.0 |
賞与額に差がつく |
4.8 |
昇格・昇進とは特に関係ない |
37.3 |
表彰・掲示 |
45.8 |
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特に何もなし |
11.4 |
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(出所:日本労働研究機構「職業能力評価および資格の役割に関する調査報告書」H11)
表2に国家資格、表3に公的資格、表4に民間資格の一部を 示す。さらに、表5に技能検定職種とその試験内容を 示す(いずれも巻末に掲載)。
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