■セッション b. 財源
助成金の活かし方
スポーツNPOにとって助成金や補助金を恒常的な自主財源と考えることはできません。助成金を今後のNPOの成長にどのように役立たせるかを探ることは急務です。スポーツヘの2つの助成制度、toto助成金とスポーツエイドの紹介を行い、効果的な活用方法を検討しました。
石田 和彦氏(独立行政法人日本スポーツ振興センタースポーツ振興投票部 振興事業課長)
1959年東京都生まれ、1978年大学入試センター、1984年文部省体育局学校保健課、1989年文部省体育局体育課、1991年日本体育・学校健康センタースポーツ振興基金部管理係長、1992年文部省体育局生涯スポーツ課振興係長、1995年文部省体育局競技スポーツ課庶務・助成係長、1998年文部省体育局体育課総務係長、1999年宮崎大学経理部主計課長、2000年日本体育・学校健康センタースポーツ振興投票部企画運営課長を経て、現在に至る。
坂井 宣夫(笹川スポーツ財団(SSF)業務部長)
1947年千葉県市川市生まれ。SSF設立当初からの事務局メンバーで、助成事業、調査研究、イベントの開催、情報部門等の責任者を歴任。学生時代からテニスに親しみ、日本体育協会B級スポーツ指導員(旧日本テニス協会一級公認指導員)の資格を持つ。週末は、地元浦安のテニスクラブでボランティアで指導を行なっており地域のスポーツ振興に一役買っている。
コーディネーター
川西 正志氏(鹿屋体育大学生涯スポーツ実践センター所長・教授)
中京大学大学院体育学研究科(体育学修士)修了。1985年鹿屋体育大学に講師として着任以来、同大学にて教鞭を執り現在に至る。専門分野は体育・スポーツ社会学、生涯スポーツ論。研究論文・著書多数。最近の著書では、生涯スポーツ実践論(市村出版)。海外研究歴は、ウォータール大学およびウリフリッドローリエ大学(カナダ)へ文部省在外研究員として赴任の経験等も持つ。現在日本スポーツ振興センターのスポーツ振興くじ助成金と笹川スポーツ財団スポーツエイドの両審査委員を務める。
<要約>
財源のセッションでは、「助成金の活かし方」ということで、toto助成金審査部会委員、SSFスポーツエイド審査委員で鹿屋体育大学教授の川西正志氏をコーディネーターに迎え、日本スポーツ振興センタースポーツ振興投票部振興事業課長石田和彦氏、笹川スポーツ財団業務部長坂井宣夫氏から現状と展望についての話があった。
川西氏から、限りある財源をいかにNPOの活動に活かしていけるか、NPOが自然淘汰されながら社会貢献をどうしていくかというために、さまざまな財源がうまく機能していくことが重要であるとの意見があった。
次に、totoの売上を伸ばし、それを還元するために製作されたプロモーションビデオを上映し、討論に入った。
まず、日本体育・学校健康センターから独立行政法人日本スポーツ振興センターに組織改正したスポーツ振興くじの概要について、石田氏から説明があった。スポーツ振興くじtotoは、だれもが身近にスポーツを親しめる環境整備や世界の第一線で活躍する選手の育成、国際大会の開催支援など、新たなスポーツ振興政策を実施するための財源確保策として導入された。このtotoの売上によって生涯スポーツ、競技スポーツの振興を図っていく制度である。平成12年9月に文部省が策定した「スポーツ振興基本計画」により、生涯スポーツの推進に向けての環境整備、国際競技力の向上、生涯スポーツ・競技スポーツと学校体育との連携の3つの柱からなっており、政策目標として、国民のだれもが身近にスポーツに親しめるような生涯スポーツ社会の実現をあげている。その実行策として、10年間で全国の市町村において少なくとも一つは総合型地域スポーツクラブを育成していくという。そのため、totoとして、1.地域スポーツ施設整備助成 2.総合型地域スポーツクラブ活動助成 3.地方公共団体スポーツ活動助成 4.スポーツ団体が行う将来性を有する選手の発掘・育成 5.スポーツ団体が行うスポーツ活動助成 6.国際競技大会の開催支援などの6つの事業を計画している。対象団体は、地方公共団体とスポーツ団体で原則として法人格のある団体になる。totoでは、平成14年と15年に助成金を出しているが、助成総額が64億円、27億円と額が減ってきており、16年度も減額が予想される。ぜひtotoを購入してほしいというコメントがあった。
つづいて、笹川スポーツ財団の坂井氏からSSFスポーツエイドについての説明があった。スポーツエイドでは、スポーツ事業に対する援助で組織の運営費助成ではないという基本をもとに、他の助成制度と異なる、申請団体の法人格の有無については問わないという特徴がある。スポーツエイドは、平成3年に始まり12年間で5,850事業に総額36億円を助成してきた。そして、平成13年度から「スポーツ好きの子どもたちを育てよう」をコンセプトに、青少年のスポーツ参加を積極的に進める事業と指導者の養成をする事業へも支援をはじめた。特に青少年のスポーツ参加事業では、「スポーツプログラム」として重点的に支援している。また、16年度からスポーツキャンプの支援もはじめ、SSFの求める普及の形ということで独自の資金援助を行っている。スポーツエイドをNPOにどのように使ってもらうかは、まず収支のバランスをとってほしい。助成金の多くを人件費に充ててしまうと助成金がなくなったときに事業の存続ができなくなる危険性をはらんでいる。人件費は参加費の範囲内にとどめる必要がある。SSFのスポーツエイドに対する考え方は、その事業の一本立ちまでをお手伝いする。そのためには、用具の整備や会員獲得のための広報等に力を入れてほしい。そして、底辺の拡大を目指すためにも指導員を増やしてほしいというコメントがあった。
両者の助成金の違いと傾向は、totoが地方公共団体や比較的公益性の高い財団法人やNPO法人に絞られており、一方スポーツエイドでは事業の主体性、公共性で法人格の有無はないということにある。
笹川スポーツ財団は、様々な事業内容を検討して現在2億円で助成をおこなっているが、totoの方は財源獲得の課題もあり、継続的に初年度から自動的に2年ないし5年間もらえるということには、難しい状況になってきている。NPOや市町村の方の中には来年の助成も可能と考えているところが多いと思われるが、非常に厳しい状況になっている。そのため、団体の自立とマネジメントについては助成金だけに頼らない財源の確保が大きな問題になってくる。そうした意味からは、スポーツエイドも含めて助成側からの助成条件についても考えなければならない。
質疑ののち最後に川西氏からNPOに関わらず、収益事業というビジネスマインド感覚の中で利益性を高めるということを考えないと、税金や公共のお金でだけで、そうした活動をサポートしていくという時代がなかなか見えてこない。それらも含めNPOの活動や運営の再構築が必要かもしれない。totoに関しては、ヨーロッパのように、スポーツくじイコールスポーツ寄付というような感覚で、自分達の財源を増やす努力をしてほしいと締めくくった。 (SSF)
|