〜まとめ〜
1. パートナーシップ大賞の目的と意味
1)NPO自身が自分たちの事業をよりダイナミックに、社会へのインパクトを与えられる事業を展開するために、企業と連携していきたい。
2)企業が単にNPOにお金を出すということではなく、企業自身も変わって欲しいと期待する。
2. 応募事業の分析とその特徴
1)複合事業のおもしろさ
分野別では福祉関係が一番多いが、それ以外の分野との複合的な事業が多くユニークな展開をしている。
2)大企業による複数の応募
大企業は並行して事業を進めているケースが多いが、全社的に統一された認識の上でNPOとの協働を位置づけているところは多くない。
3)中小企業はトップで動く
NPOと中小企業との協働はまだ数としては少ない。小規模企業の場合、トップ主導で従業員の意識が追いついていないケースも多い。
4)1対複数の事業
1対複数の事業がいくつかあったが、その場合、多くはその場合、複数の団体の中に温度差がある
5)実績がない
アイデアはとても素晴らしいが、まだ事業としては実績がないところがあった。その実績を積み重ねていけば、1、2年後には素晴らしい事業として実を結んでいくと期待できる。
3. 応募事業から見えたこと
1)協働事業の始まりときっかけ
アイデアレベルでNPOや企業の社員から始まって、「人」がダイレクトにつながっていったケースが多い。
2)組織があったから最大限伸ばせた
一方で、組織として社会貢献という部署があったから形になったものが多いのも事実。
3)NPOに期待する企業
NPOが先導的に事業を進めている事例が多く、企業からNPOにその専門性やノウハウを求めている。協働に新しい意味や質が加わっていることを示す。
4)協働の主導で異なる事業形態
事業を進めるにあたり、どちらが主導権をもっていたかにより質が異なる。お互い対等に力を発揮していかなければ協働事業として発展していかない。
4. 評価の視点
1)NPOと企業の対等性
NPOと企業がどれだけ対等の立場で関わっているかを重視。
2)必ずしも事業の大小ではない
事業規模は大きくても一方的なものは評価が低い。チャリティ的なものよりも協働の累計点がどれだけ発生しているかを評価した。
3)実績を重視
1次審査の書類選考ではアイデア、発想レベルを高く評価し2次選考に残りながら、実際の調査でまだ結果が出ていないことが判明し、最終的に受賞対象とならなかった事例がある。
4)魅力的表現
書類選考では、応募書類の書き方や添付書類でその事業が持っている広さや深さやおもしろさをアピールできたところが評価された。熱意が伝わるかどうかが重要。
5)互いに成長(変化)できたか
協働よって新しい気づきをもってそのNPO・企業自体が変わっていったのかどうか、その変わり方が抽象的ではなく、具体的に見えてきたかどうか、活動している人たちのイメージがこちらに伝わるかどうかも大きなポイント。特に企業がNPOからどのような影響を受けたか。
6)キラリと光る事業に注目
NPO・企業の規模、または事業規模に関わらず、新しさや協働にキラリと光るものを大事にした。
5. 評価の特徴〜ドラッカー財団による協働評価とPSCオリジナル評価
1)第一段階でドラッカー評価を実施したことの意味
企業とNPOの関係はこれまで圧倒的に「チャリティ型」が多かったが、「トランザクション型」や「インテグレーション型」に注目した。
2)「PSCパートナーシップ評価」を元に調査シートの作成
「PSCパートナーシップ評価」(2000年)を基本に、企業・NPOそれぞれが記入する自己申告シート、それをもとに取材調査を行った調査員によるさらに詳しい調査シートを作成。事業の初めから現在もしくは終了時まで、自らがどの位把握して進めているかを確認するため。その過程で、この評価項目が事業自体を評価するものなのか、協働のあり方を評価するものなのかを整理。
3)調査項目の斬新さ
調査項目に、相互に愉しめるかどうかをしっかり評価するため、「人の要素」を取り入れた。
4)現場で評価するから意味がある〜調査方法
調査票は、NPO・企業それぞれ独自に、目の前で評価を行ってもらった。結果だけでなく評価点を付ける際の反応も見た。それによって事業の振り返りを喚起した。
5)コンサルティングの可能性
評価を通じて気づきが生まれ、改善の方向性が見えてくる−それによって私たちと事業を実施している人たちとの関係が構築され、信頼関係が生まれることにより、コンサルティングの役割も果たす可能性が見えた。
6)評価の根拠
第一段階でチャリティーよりもインテグレーションを重視し、第二段階で「成長性があるのか」「社会的インパクトが与えられたか」という点についてを重視した。
6. パートナーシップ大賞の成果
1)協働のイメージの明確化
パートナーシップ大賞で最終選考に残った6事例を分析することによって協働のイメージがかなり明確になってきた。
2)評価シートによる事業の改善
最終的に受賞しなかった事業の担当者が、受賞6団体のプレゼンテーションを見て、何らかのヒントを感じてくれた。彼らが自らの課題を認識するきっかけとなることができた。
7. 今後の課題
1)ユニークな事例を評価する枠組みの必要性
インターミディアリー系のNPOが協働のシステムやプラットフォームを作るケースをどう評価していくか。
2)実績〜「1年以上」を条件とするか
実績評価は重要。これからは「1年以上続く」という条件を次回から設けることを検討。
3)チャリティの評価をどうするか
大きな寄付で大きな施設ができたことにより、その地域にとっての社会的インパクトは大きい(チャリティ型の成功)ケースを評価できる基準を考える必要がある。
4)「技術的事業」の評価に踏み込めるか
廃油のリサイクル、生態系の保全活動など、技術的に社会的なインパクトを与え得る事業を私たちがきちんと評価できるか。(専門性の欠如)
5)成長度の記入欄をもっと大きくして強調すべきか
協働事業で企業とNPOが成長した点を重視するなら、もっとアピールできるよう応募用紙の記入欄を大きくする。
6)書類審査でドラッカー評価を使うのはレベルが高すぎるか
7)応募段階で自己申告(自己評価)を取り入れるか
応募書類の段階で、自分たちの事業をどれだけ「客観的に」評価できているかを判断するためには、自己申告の内容を、確かめるチェック項目が必要。
8)事例集への掲載拒否にどう対処するか
一部の大きな企業と大きなNPOが事例集への掲載を躊躇。「自分たちの事業の評価が低い」と見られたと思っている可能性がある。今回の結論が100%ではなく、われわれの視点を明確にして、その視点から見た場合の結果であるという点を理解してもらう努力を今後も続ける。
9)評価プロセスに時間をかけても、第三者取材をするか
いわゆる地域の第三者がどう見ているかは重要。そうした声を聞くことも必要だが、物理的な制限が伴う。また、それが公平かどうか、見極めるのも難しい。
10)評価視点の改善をどう行うか
評価のあり方は、常に自分たち用のものに作り変えていく必要がある。ドラッカー評価を5つの観点から行ったが、果たして今後もこれでいいのかという検証をしていく必要がある。
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